第230話 闇夜の残党


「なんでここがバレたかねぇー?」



奥の方と後ろの方から、男達がゾロゾロとにじり寄って来た。



「なんだこれ?!ここで何してんだよ?!」


「あぁ?おめぇらに関係ねぇだろ?」


「こんな事っ!許せないっ!」


「……お前達がナルーラの街を爆破させたな?」


「えっ?」


「本当かよ?!ディルクっ!」


「なんだおめぇ?見てたのか?」


「女性を拐って来て……それを人質に、身内に犯行を起こさせた……か。卑劣なやり方だな……」


「なんで、んな事するんだよっ!」


「『闇夜の明星』の残党か……」


「まだいたのか?!」


「女子供を拐ったが……オークションにも出せなくなって……金にも困ったんだろう……そこの子供達を奴隷として売り出すつもりだったな。グリオルド国では奴隷制度は廃止しているぞ。」


「なんでおめぇはそんな事まで分かるんだ?……あぁ、そうだ。俺達は『闇夜の明星』だ。こいつ等は奴隷として売り捌くんだ。この国でも、一部の富豪は買ってくれんのさ。女は俺達のストレス解消として使わせて貰ってるけどな。ハハハっ!」


「なんて事を……っ!」


「なぜ街に爆弾を仕掛けさせた?」


「祭りだなんだって、皆バカみてぇにはしゃいでるだろ?俺達は自由に活動できなくなっちまって、楽しむなんてのはこの女達を抱く位なのによぉ!だから、目にもの見せてやっただけだ。ハハハハっ!……まぁ、思ったより被害は少なかったけどな。イライラするぜ!」


「てめぇ……っ!」


「そこに拘束されている男は……女性の身内か……」


「何でも分かるんだな。おめぇ、なんでだ?まぁ、いいか。そうだぜ。こいつ、泣きながらやめろって煩せぇんだよ。だから目の前でこいつの女ヤってよ。煩せぇから殴り殺してやったぜ。爆弾をよ、一人2発仕掛ける手はずだったんだぜ?それをこいつは良心の呵責に耐えられねぇって仕掛けなかったのさ。だから4発しか仕掛けられなかったんだぜ?腹も立つだろ?」


「……許せない……」


「あぁ?なんだって?」


「お前はっ!……絶対に許せないっ!」


「だからどうすんだよ?お前達も、ここで殺してやるぜ!」



言うなり、土の槍が飛んできた。

それを結界で防ぐ。


ディルクとエリアスが雷魔法で感電させて行くと、男達はバタバタと倒れていった。


しかし、奥にいる奴は倒れなかった。

強い結界を張れる男だった様だ。



「おめぇら……只者じゃねぇな……」


「お前は……『闇夜の明星』のボスの……弟か?」


「そんな事まで……っ!あぁ、そうだ。あの日は俺は別の取引に出ててよ……いつもの様にオークションが終わる頃に会場近くに行ったら……皆捕まっちまって……兄貴は殺されてたっ!」


「そうだな。」


「おめぇ、さっきからムカつくな……何でも知ってますって顔しやがって……っ!」


「お前の事なら何でも分かるぞ。」


「煩せぇ!!」


土の槍があちこちから飛んでくる。


地面から、壁から這い出てくる。


エリアスは魔法を無効化していく。


ディルクは水魔法で土を泥に変えていく。


私は急いで子供達の元まで行く。

しかし、強力な結界に阻まれる。

私では結界が破れない……!


ルキスを呼ぼうと思ったその時、男は子供を抱えて、首にナイフを突き付けた。

それから直ぐに、笑いながらそれを横にひく。


子供の首から、大量に血が吹き出した。



「なにをっ!!」



すぐに回復魔法をかけるも、結界に阻まれてしまう!

幼い子供にあんなことをするなんて……っ!

あり得ないっ!!



「テネブレ……!」



黒い粒が集まって、テネブレが私の元までやって来る。

私の様子を見たテネブレが、即座に私の中に入ってくる。


髪が…瞳が…様相が闇のものへと変わっていき、力がみなぎって来る……



「アシュリー……?」



手で結界を破り、すぐに回復魔法をかける。

子供は頬に赤みを取り戻した。

何とか間に合ったようだ。


土魔法の槍が私に集中して飛んでくるが、私に届く前に全て泥へと変わって落ちていく。

火の矢も飛んで来るが、それも届く前に消滅する。



「なんだ?!なんだよ!お前はぁぁっ!!」



恐怖に顔を歪ませた男は、ナイフを振り回す。


男の目をしっかり見つめると、男は固まった様に動かなくなった。


男の顔を左手で掴むと、みるみるうちに老化していく。

殺してしまう前に手を離すと、老人の様になった男は、その場で崩れ落ちた。



「意気がっていたのに、弱いじゃないか……」



男を見下ろして、つまらなさそうに呟く。



「アシュリー……その姿は……」


「ディルク!」



驚いた顔をして私を見詰めるディルクが凄く可愛く見えて、嬉しくなって私は微笑んでディルクの元まで行った。


ディルクの首に腕を絡ませて、それから口づけをする。



「やめろ!アシュレイっ!」



エリアスの声のする方を向くと、困った顔をしたエリアスがいた。

エリアスのその表情も可愛く思えて、思わず微笑んでしまう。

でもまたディルクに熱く口づけをする。



「くそっ!テネブレ!」



エリアスが呼ぶと、私からテネブレが出て行く。

黒い光の粒になって、テネブレが消えて行った。


気づくと、私はディルクの首に腕をまわしたままだった。

ディルクは茫然とした顔で私を見ていた。



「あ、ごめんっ!ディルクっ!」



すぐに腕を離して、ディルクから距離を取ろうとしたけど、ディルクが私の手首を掴んできた。



「アシュリー……今のは……」


「あ、その……テネブレの力を借りたんだ……そうしたら、いつもあんな感じになっちゃうんだ……」


「テネブレは、アシュレイが集めてる銀髪の村の宝の、黒の石なんだぜ。あの石は精霊だったんだ。」


「……そうだったのか……」



まだ驚いた顔をしたディルクに、恥ずかしい所を見られたエリアスに、私はどんな顔をして良いのか分からなくなってしまった……







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