第229話 王都を巡る


アンナの様子を見て、私達は安心して部屋へ戻ってきた。


今日は王都を見て回る予定だ。


エリアスが、置いていった私の装備類を渡してくれた。

着替えて、装備類を身に付ける。

なんだか凄く久しぶりな感じがする。


ディルクも着替えて、旅人のような服装になっていた。



「ディルク、今日は部屋でゆっくりしてた方が良いんじゃないかな?」


「もう大丈夫だよ。アシュリー。」


「そうだぜ。アシュレイは俺が面倒見るからよ、アンタは寝てた方が良いんじゃねぇか?」


「大丈夫と言っている!」


「リドディルク皇帝陛下、護衛も一人しか付けずにその様な軽装で、本当に大丈夫なんでしょうか……?」


「シルヴィオ陛下、エリアスはSランク冒険者だし、俺もそんなに弱くはない。心配は無用だ。」


「しかし……」


「街の本当の姿を見るのには、これくらいが調度いいのだ。何かあっても、それは自己責任とする。シルヴィオ陛下に責任は問わない。」


「あ、いや、その様な事を気にしていた訳では……」


「では行ってくる。」



そうやって三人で王城を出て街を巡る。


大きな建物がいっぱいあって、お店も高級な物が売ってる所が多くって、やっぱり王城の近くだからなんだなぁって思いながら、色んなお店を見て回る。


王城から離れて行くと、段々庶民的な雰囲気のお店や人達が多くなっていく。

少しずつ露店も増えてきた。

そこで串焼きを買って三人で食べながら歩いたり、露店で売られている装備につけるアクセサリーとかも見たり、お店の人と喋ったりして、街を探索するように色んな所を回って行った。


こうやってディルクと街を歩くのは初めてだし、三人でも初めてだし、ディルクとエリアスはなんだかんだで、街の様子について語り合って仲良さそうにしてるし、私も楽しんで王都を巡っていられた。


時々、女の子達に声をかけられる。

何故か握手を求められたりする。

なんか、皆私達を遠巻きに見て、ついてきていたりもする。

気配に気づいて振り向くと、キャァーって言って逃げていく。

女の子って、すごく不思議だ……


休憩もしながら、街外れの方へも足を延ばす。

路地裏辺りも見てみる。

しかし、ここにもスラムの様な感じは無く、清掃も行き届いている様だった。



「良い街だな……」


「うん。貧富の差があまりなさそうだ。」


「孤児院とかはねぇのか?」


「教会の横にあった筈だ。行ってみるか?」


「あぁ。この国の実情を知るなら、底辺の暮らしを見るのが分りやすいだろ?」


「……そうだな。」



ディルクは皇族だけど、旅をしたりしていたから、庶民の暮らしと言うのを知っているんだろう。

一国の主として、上層部の暮らしだけでなく、貧困に苦しむ人達の暮らしにも目を向けて行こうとしているんだろうな……


暫く歩いて、孤児院に着いた。


教会の横に隣接されている建物がそうで、小さいけれど庭もあった。

そこには畑があって、子供達が畑の手入れをしていた。

それはさせられている、と言った感じではなく、皆が楽しんで率先して行っている、と言った感じだった。



「ここも問題なさそうだ。子供が皆、元気に笑ってる。良かった!」


「本当だな!」


「………」


「どうしたんだ?ディルク?」


「……この近くに診療所があるのか……?」


「え?どうだろう?」


「ここの事一番知ってるの、ディルクじゃねぇのか?」


「そうだが……なんだ?これは……?」


「何か感じるのか?」



ディルクがおもむろに、何かを探す様に歩き出す。

私とエリアスもそれについて行く。


孤児院の裏手の方にある家の前でディルクが立ち止まった。



「ディルク……?」


「ここから……助けを求める様な感情が読み取れる……それだけじゃない……悲痛で……苦しみの感情がいくつも……」


「なんだ?!こんな普通の家なのに?!」


「訪ねてみよう……」



扉をノックしてみる。


反応はない。


暫く待って、もう一度ノックしてみる。


やはり反応はない。


けれど、ディルクは中に人がいると言う。


扉には鍵が掛かっていたが、それをディルクは難なく開ける。


中に入ると、そこは普通の家のようだった。


ディルクは躊躇なく歩いて行くので、それについて行く。


奥の部屋に入り、床の絨毯を退けると、そこには地下への階段があった。


警戒しながらゆっくり、その階段を降りていく。


薄暗く狭い通路を、周りを確認しながら歩いて行く。


少し開けた所が見えた途端、ディルクが立ち止まった。



「これは……」


「ディルク……どうした……の……」


「なんだ?なにが……」



そこには、手枷と首輪をつけられいる子供達がいた。


それに、同じように手枷と首輪をつけられた全裸の女の人が3人……


壁に両手両足を拘束された、傷だらけの男……



「なに……なんで……」


「ひでぇ……っ!」


「アシュリーっ!」



ディルクが私を庇う様に抱き寄せる。


と思ったら、すぐそばを火の矢が飛んで行った。


後ろからは人影が見えた。


どうやら私達は囲まれてしまった様だ。






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