第187話 残余
エルニカの街の近くの森で、今夜は野宿をすることにした。
私達は何だか2人して、エルニカの街に入る事が出来なかったんだ……
それでも今夜はその近くにいたくて、ここで野宿することにしたんだ。
焚き火をエリアスと囲みながら、ただ寄り添うようにして火を見詰めていた……
何かを考えていた訳でもないのに、気がつくと涙が溢れだしていた。
「アシュレイ……」
エリアスが私の肩を引き寄せる。
「ごめ……エリアス……」
「今回の事は……アシュレイのせいじゃねぇ。俺がアシュレイを巻き込んじまったんだ…悪かった……。」
「違う……エリアスは……悪くない……」
「そうだ……俺達は悪くない……この国が悪かったんだ……でも、アシュレイのお陰で、この先酷い扱いを受ける奴がいなくなるんだ……アシュレイはこの国を救ったんだ。」
私は首を左右に振る。
「ごめんな?アシュレイを傷付ける事になっちまって……」
エリアスの言葉に、また言葉が出なくて、首を左右に振ることしかできない……
こんなこと……エリアスを困らせるだけなのに……
エリアスも傷付いてる筈なのに……
「俺……アイツみたいに心の傷とか取ってやれねぇから……すまねぇ……俺、アシュレイに何にもしてやれねぇ……」
「……ううん……こうして、同じ気持ちでいてくれるだけで……それだけで良い……」
「アシュレイ……」
「……助けられなかった……」
「……助けてあげたかったな……」
「私……まだまだだな……」
「俺もまだまだだ……」
「もっと頑張らないといけないな……」
「俺もAランクだって意気がってたらいけねぇな……」
「エリアスが私を庇って……胸に矢が刺さった……」
「すぐにアシュレイが回復させてくれたけどな。」
「でも、痛かった筈っ……エリアスに矢が刺さったのを見たとき……凄く怖かった……レクスみたいになってしまうんじゃないかって……っ!」
「俺はならねぇよ。アシュレイを一人置いて何処にも行かねぇ……アシュレイが俺を必要としなくなるまで、俺はずっとそばにいる。約束する。」
「…エリアス……」
「アシュレイの剣、折れちまったな…明日にでも買いに行くか?」
「折れた剣は水に飲まれて教徒と地中に埋まったから……エリアス、見繕ってくれる?」
「あぁ、勿論だ。」
「……ヴェパルって……凄い精霊だった……」
「そうなんだ……アイツ呼ぶと楽勝なんだけど、いつもやり過ぎんだよ……滅多な事じゃ呼べねぇんだ。無駄に死人が増えたし、地中に教徒の奴ら埋めちまったし……」
「あれにはビックリした……」
「アシュレイは、できれば改心させたかったんだろ?すまなかったな……」
「ううん……あの時は仕方ない……そんな事を戦っている時に一瞬考えてしまったから、エリアスが邪神のオーラに……」
「それを助けてくれたのはアシュレイだろ?闇の精霊……テネブレだっけか?アシュレイと重なって、すげぇ事になってたな。」
「テネブレとは初めて重なったけど……まさかあんな風になるなんて……」
「アシュレイの容貌が変わっちまってた……すげぇ……色っぽかった……」
「え?」
「あ、いや、あ、すげぇ強かったっ!」
「そんなに変わってた……?」
「あぁ。一瞬アシュレイとは思えねぇ感じだった。」
「ルキスと重なる時とは全然違ったんだ……ルキスの時は、力を借りてるって感じだったんだけど、テネブレと重なった時は、自分の中にテネブレが入ってきて、それが凄く気持ちよくて……一つになったって感じだったかな……」
「……なんか……やらしいな……」
「ん?なに?」
「何でもねぇっ!」
「あの感覚……」
「ん?どうした?」
「ううん、何でもない……」
「白の石、女神様と一緒に封印されてたんだな。」
「封印を解いた時に、石があるのが解ったんだ。」
「それだけでも、この国にきた意味があったな。」
「そう……だけど……」
「お互い、もうあんまり気にしないでいようぜ?次は上手くやれる様に、また頑張るしかねぇよ。」
「うん……エリアス……」
「白い石も手に入れて、後は黒い石だっけか?それを見つけたら良いんだな?」
「……うん……」
「まぁ、また探しゃあいいか。少しゆっくりするのも良いしな。」
「……うん……」
「それにしても、白の石の効果ってどんなんだろうな?またアシュレイは強くなんだろうな。俺も負けねぇ様に、もっと強くなんねぇとな。」
「……」
「……アシュレイ…?」
「……」
「寝ちまったのかよ……ったく、可愛い顔して寝てんじゃねぇよ……無防備にも程があんだろ?こんなんじゃ、俺に襲われても文句言えねぇぞ?……俺がどんだけアシュレイを好きか分かってねぇだろ……?」
エリアスの声が遠くに聞こえる様な感じで心地よくて……
エリアスの体温を感じながら、何処かに運ばれてる様で……心地よく体が揺れている感じがして……
私は安心した様に眠りに落ちていった……
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