第183話 首都 アルゲノア


マルティノア教国 首都 アルゲノア


この国一番の大都会で、一際大きな教会が中心部にある。


周りにはいくつも支部があり、教徒の数も多い。


アフラテス神とは、光を司る神である。


この世に闇しか無い、何もない所に一筋の光を与え、その光が広がって行くと、そこから様々な生き物が生まれだしたとされ、正に生命を生み出した、この世を創りだした創造神として崇められているのだ。


そんな由緒正しく思われるアフラテス教が、ここ30年程前から様相が異なってきていた。

それは、今の教皇が即位してからの変化だった。


過重なお布施を強要、信者の強制勧誘、過度な上下関係に、許されざる脱退。


自分達、アフラテス教徒が絶対的存在であり、その他の宗教や、無宗教の者は人では無いとまで言い出す、排他的思考となっていた。


そんな事から、この国に住む者達は、殆どの者がアフラテス教の信者である。

が、そうでない者がいるのも事実だ。

勿論、入会するのは強制ではないが、この国で違う宗教や無宗教の者は、差別の対象となってしまうのだ。




エリアスと首都アルゲニアの門の前までやって来た。


高さが8m程ある、しっかりとした石畳で作られてあって、入るのにも規制が厳しそうな印象を受ける。

アクシタス国の街よりも人の行き来が少なく、門までは割とすぐにたどり着けた。


しかし、ここまで何回もこの国の、アフラテス教の使徒からの襲撃を受けており、私達はいつどうなるのか、と、警戒を怠らなかった。


そんな警戒をよそに、ギルドカードを見せても何も言われる事なく、すんなりと門を潜る事が出来た。


それから、様子を見ながら、街の中心部まで進んで行く。


しかし、これだけ大きな街なのに、行き交う人々が見当たらない。

着いたのは昼頃なのに、普通であれば、昼食等で賑わう時間帯であるにも拘わらず、誰一人として街の中にはいないのだ。


この異様な雰囲気の中、エリアスと私は周りを確認しつつ、少しずつ少しずつ、歩を進めて行く。



こんな大きな街で……


誰一人として外出させない様にして……


二人を誘き出す為だけに、街中の人々が言うことを聞くこの国……


普通ではあり得ない……



そんな事を感じながら、しっかり目と耳を凝らすと、私達を監視している様な視線を感じた。



「エリアス……色んな所から私達は監視されている……いつ攻撃されてもおかしくない……」


「あぁ、あっちこっちから殺気が感じられるぜ……俺達がここに来ることは想定済みなんだな……」



自分達に結界を張る。


中心部にある、教会近くまで来た時に……


見えてきた……



「……エリアス……あれ……」


「…どうした?アシュレイ?」


「…………っ!」


「……アシュレイ…?」



不意にエリアスの肘を掴んでしまう……


この国はやっぱり異常だ……


なぜこんな事が出来るのか……っ!


エリアスの肘を掴んだ手が震えてるのを見て、エリアスが私の手の上に自分の手を置いた。



「アシュレイ……何が見えている……?」


「……人の……首が……いくつも……晒されている……」


「………っ!」


「棒に……刺されて……まだっ…小さな子達のが……何人も……っ!」


「分かった!アシュレイ、もういい……!」



エリアスが私の肩を、支える様に手を回す。



あの子達が一体何をしたんだ?!


何があってあんな事をするんだ?!


あんな小さな子達を!


善悪の分からない子供の首を……っ!


あんな風に晒す意味がどこにあるんだ?!


助けられなかった……っ!


助けてあげる事が出来なかった……っ!





少しずつ近づいて分かった……





晒されていたのは





エルニカの街の孤児院にいた子供達だった……






「……エリアス……」


「どうした……?」


「エルニカの街の……あの子達だ………」


「なんだって?!」



涙が溢れて体が震える……!


私達が……!


あの子達を救ったから!


見せしめにっ!


あんな風に殺されるなんて……っ!!



「アシュレイ……落ち着いて呼吸しろ……アシュレイのせいじゃねぇ……勿論、俺のせいでもねぇ……この国が……っ!全部ここにいる奴等が悪いんだ!」


「エリアス……っ!」



気づくと私達は囲まれていた。




この教徒の……




この教皇の事を……




私達は絶対に許せないっ!!







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