第69話 反省



食事が終わって、お茶の用意をする。


見ていた少女は


「慣れてるんですね。ずっと旅をされてるんですか?」


「そうだよ。」



お茶を差し出して答える。


少女はお茶を口にしてから聞いてきた。



「あの、貴方の名前を教えて下さい。」


「アシュレイと言う。」


「アシュレイ様……」


「えっ?!様とかいらないからっ!」


「でも、私の恩人ですから。」


「様はちょっと……ところで、君の名前は?」


「あ、失礼しました。私はマリリーズと申します。マリーとお呼びください。」


「では、私の事はアッシュで。」


「いえ!それは!……アシュレイ様と。」


「…………」



なかなか言い出したら聞かない子のようだ。



「今日はここで寝るとして、明日はどうするつもりでいる?」


「そうですね……村に帰ります。」


「近くに村があるのか?」


「まぁ、そうですね……実は、親とケンカして、村から出てきてしまったんです。」


「そうだったのか。何が原因で?」


「私の村は閉鎖的なんです。他との交流が一切無くって、自給自足の生活なんです。そんな生活をしてるのがイヤになってきて。だって、外の世界を見てみたいって思うじゃないですか!それを言うと、親はダメだって怒るし、村長にも怒られるし、じゃあもう良いやって思って、村を飛び出したんです。」


「閉鎖的……」



ナディアの事を思い出した。



彼女の村も、外部と関わりを持たずに生活をしていた。

もちろんそれには理由があるが、そう考えると、マリーはナディアと同じ部族なのかも知れない。



「村を出たのが初めてだったから、初めは凄く楽しかったんですけど、何も持たないで出てきちゃったから、お腹は空くし喉は乾くし、でも木の実とかで凌いでたんですけど、魔物にも追いかけられるし、逃げれたけど、で、極めつけはさっきの3人で、追いかけられて怖くなったから、もう、とりあえず帰ろっかなーって感じです。」



軽いな……



「そうだね。あまり旅を軽く見てはいけないよ。親御さんも心配されてるだろうし、帰った方が良いだろうね。」


「アシュレイ様がそう言うのなら!」


ニコニコ笑って言う。



しかし、大丈夫なんだろうか。


心配だ……



「ここから村までは近いのか?」


「えっと、多分2日はかからないと思います。」


「どっちの方に村はあるの?」


「ここから東の方ですかね……」


「おい、アッシュ。もしかして……」


「関わってしまったからね。心配だし……」


「本当にお人好しだな!まぁ、そんなところも好きなんだけどな!」



心配だからだけじゃなくて、銀髪の村が気になるのも事実だ。



「マリー、私が村まで送って行くよ。」


「えぇ!本当に良いんですか?!」


「よく今まで無事だった位だ。君が思うより、外の世界は危険なんだよ。しっかり準備をしてから旅をしないといけないんだ。このまま1人で帰す事はできない。」


マリーは下を向いてモジモジし始めた。


「ありがとうございます……アシュレイ様……」


「もう夜も遅いから、今日は眠るといい。」


「あ、あの、テントが1つって事は、一緒に寝るって事ですよ……ね?」


「……あ、そうか……」


私はもちろん気にしてなかったが、私の事を男と思っているなら、同じテントでは具合が悪いな。

ついさっき、3人の男達に襲われそうになってたくらいだ。

それは怖いと思うだろう。


「私は外で寝るよ。マリーはテントで眠るといい。」


「いえ!大丈夫です!アシュレイ様なら、私、大丈夫です!」


「火の番もしないといけないしね。気にせずにテントで寝ればいいから。」


「そうですか……本当に、私、アシュレイ様になら……」


「え?」


「あ、いえ、はい!では、そうさせて頂きます!」


マリーはテントへ行こうとする。


「あ、その前に」


と言って、マリーに向けて両手を出して、詠唱する。

そうしないと驚かせるから。


光魔法でマリーを浄化する。


マリーがそれでも驚いた顔をして


「何ですか!?これ?!なんか、さっぱりした感じがします!」


「うん、浄化して汚れを全て取り除いたから、キレイになったよ。私も後で浄化するし、キレイになると気持ちいいだろう?」


「あ、あの、やっぱり、私と……?!」


「それで眠ると疲れもとれやすいしね。じゃあまた明日。おやすみ。」


「え!あぁ、はい、おやすみなさい……」



マリーは少し残念気味にテントに入っていった。


なんだろう?


クルクル表情のよく変わる子だな。


焚き火の前にある切り株に腰をかける。


テントとは少し離れてるから、小声で喋ると聞こえないだろう。



「アッシュは分かってないなぁー。」


私の横に来て、レクスが言う。


「何が?」


「マリーさ。アッシュに惚れたんじゃないか?」


「それはないだろう。さっき会ったばかりだよ?」


「会った時間なんて関係無いぞ!俺とアッシュは、2回しか会ってなかったぞ!」


「……確かにそうか……」


「女心が分かってないな、アッシュは。」


「一応私も女なんだけど……」


「って言うか、人に疎いんだろうな。まぁ、仕方なかったんだろうけどさ。自分の事にも疎いのかもな!」


「私、何か変な事言っちゃったかな……?」


不安そうな顔をして、レクスを見る。


レクスが少しモジモジした感じで


「変じゃない!けど……そう言うところかな……」


「ん?どう言うところ?」


不思議そうに首を傾げてレクスに聞く。


「そう言うところだぞ!」


言ってレクスがどこかに消えた。




全く分からない……




まだまだ人付き合いがなってないんだろうな。




今日は色々反省することが多い……









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