第70話 魔法の練習
翌朝、朝食の用意をしていると、マリーがテントから出てきた。
「おはようございます。」
「おはよう。よく眠れた?」
「あまり寝付けなくて、なんか色々考えちゃって、でも気づいたら寝てました……」
「まぁ、こんなテントじゃ寝つきも悪いのは仕方ないな。」
「あ、いえ、そう言う事じゃなくて……」
「あ、そこのボウルに水を貯めておいたから、顔を洗うといい。そこに置いてある布を使って顔を拭いて。」
「あ、ありがとうございます。」
マリーが顔を洗っている間に、野草とトムトとハムをパンに挟んだ物と、キノコと野草と牛鴨の肉をバターで炒めて小麦粉を入れ、牛鴨のミルクを入れてよく混ぜて、塩と香味で味を整えて作ったスープを用意する。
焚き火の所まで顔を洗ったマリーがやってきた。
「はい、どうぞ。」
マリーに朝食を渡す。
「スゴイ……」
「え?何が?」
「もう、完璧ですよね。アシュレイ様。」
「な、何が完璧?!」
「女子力高いです。完全に私、負けてます。」
「何の事だ?!」
「もっと私、頑張ります!」
何か1人で燃えているマリー。
また私は何か間違ったのだろうか……?
そうして、3人で朝食をとった。
マリーは、私の作った朝食も、凄く美味しいと言ってくれていた。
良かった。
レクスも、旨い!って言ってくれてた。
レクスは、朝には昨日の変な感じじゃなくなってて、いつものレクスに戻っていたので安心した。
全く、人付き合いとは難しいものなんだな……。
朝食が済んでから、テント等を片付け、早速東に出発した。
マリーに案内されながら進んでいく。
道中、魔物に出くわすと、私が剣で対応する。
それを見たマリーは、何故か顔を赤らめて私を見ていた。
魔物が殺されるところを見るのが怖かったのだろうか。
盗賊の類いにも出合う。
昨日と同じ様にして倒す。
その時はマリーの前だから魔法の詠唱は欠かさないように心掛ける。
盗賊の持ち物は倒した者の物となるので、持ち物を探って必要そうな物は持っていく。
そんな事が数回あった。
「この辺りはやけに盗賊が多いな。」
「本当だな!こんなに盗賊と出くわす事って、あんまりないよな!」
「そうなんですか?私がこの辺りにいた時もそうでしたが、これが普通じゃないんですか?」
「そんなに盗賊に合うなんて事はないな。よく逃げられたものだ。」
「私、実は魔法が得意なんです!で、土魔法で大きな壁を作って逃げてたんです。でも、昨日の3人の時は、もう魔力が無くなっちゃって……」
「そうだったんだな。」
「あの、私も魔物とか、盗賊とかと戦うときに魔法で手伝った方が良いですか?」
「今のところは問題なく倒せているから、それは大丈夫なんだが。」
「良かった!私、魔法の練習はいっぱいしてたんですけど、実践したことがなくて、魔法をあてるのが怖くって……」
「そうか……でも、少しずつ慣れた方が良いかもしれない。次魔物に出合ったら、魔法を使ってみるか?」
「えっ!でも……」
「無理にとは言わないけど、倒した後に魔法を使ってみるとかはどうだろう?」
「……はい。それなら。やってみます!」
「分かった。」
そう言って微笑む。
マリーは緊張しつつも、私に笑顔で答える。
それから少しして、魔物にあった。
アウルベアーだ。
私が雷魔法で感電させた。
レクスの前で、氷の矢は出したくなかったからだ。
心臓あたりを感電させたので、素材と食材としては問題なく使えるだろう。
ただ、この使い方はコントロールが結構難しいので、今までは氷の矢にしていたのだ。
マリーの方を見る。
緊張した顔で、私に頷く。
マリーが詠唱し始めた。
大きな魔方陣が組み立てられ、それが発動した。
ドッガァァァァァァーンッッッ!!!
大きな音がして、一瞬のうちに辺りは半径5m程の大きなクレーターが出来ていた。
アウルベアーの姿はどこにもなく、周りに木も全く無くなっていた。
恐らく、粉々になって吹き飛んだんだろう。
魔法が発動するときに、威力が強そうだった為、私は咄嗟に自分達に結界を張ったので、こちら側は無傷だったが。
レクスと茫然として見ていると
「やりました!ちゃんと魔法があてれましたよ!」
マリーは嬉しそうに私の方へ振り向く。
「マリー……」
「はい!」
「やり過ぎだ。」
「えぇっ?!」
それからマリーに、魔法の制御についての話や、倒し方等の話を説いて聞かせた。
マリーは難しそうな顔をしながら聞いていた。
しかし……
やはり、マリーはナディアと同じ、銀髪の部族なんだろうな。
魔法の威力が、普通の者とは桁違いだ。
そう感じつつも、村に着くのが楽しみになってきていたのだった。
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