第47話 洗濯物

「 洗濯物 」


洗濯物に

皺がよっている


気温三十五度の

只中で

皺を

伸ばしていく


皺を

伸ばさなければ

洋服には戻れない


それは今

盛んに啼いている蝉が

羽化する行為よりは粗っぽく

水嵩を増した河が怒涛となって

滝壺に落ちる行為よりは柔かい

(水分を含んでいる状況としては同様なのだ

 が)


いずれにしても

この気温の只中で

洗濯物の皺を伸ばす行為はそれなりの労働だ


百年後も

皺を伸ばす行為は継承されているだろうか


(地球の気温は予想を越えることになってい

 る)


けれど

そんなことより

平和に生きている今の国の状況が

想像を越えるようなことになっていないかと

(皺を伸ばしながら)考えることの方が

気温三十五度には現実的な気がする

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