第30話

「おう、準備終わったぞ。て、お前待ってる間にどんだけ食ってんだよ!てか、その食料をどこに持ってたんだよ!」




 あ、うるさいのが戻ってきた。食料入れるだけなのになんでこんなに時間かかるかな?




「おい、その顔やめろ。無性に腹が立ってくっから」




「はあ、まあいいですよ。やめてあげます。それとこの食料は私のだから渡しませんよ!」




 うわ、めっちゃ残念そうにしてるんだけど。まあ、あげないんだけどね!私のだから!けど、ぶっちゃけ不老不死になったから食事とかはしなくてもいいんだよね。それでも私は食べるのよ、そこに食事があるのだから!


 それに食べないともったいないし、あと単純に羨ましいから食べるんだけどね。




「はあ、お前の食べ物なんざとらねえよ。とりあえずその食料をしまえ。こっちはお前待ちなんだからよ」




「は、はーいわかりました。すぐ片付けます」




 片付けようにも一つづつだと大変なんだよね、この量は。はあ、なんでこんなに出したんだろう。これじゃあリンネルじゃなくて私が腹ペコキャラだよ。


 それにしてもどうやって片付けようかな?うーん、こう一気に仕舞えたらいいんだけどね。このポーチの口に入る大きさしか無理だからなー、さてどうしたものか?……あ!ポーチの口を開けたままテーブルを持って流し込めばいいのか!で、流し込むのが難しいやつは自分で入れる!おお!私ってばあったまいい!天才と自負してもいいぐらいだね。




「おい、雨音!雨音!聞いてんのか?」




「はい、聞いてますよ。なんですか?」




「この数の食料をどうすんだって聞いてるんだ。お前のことだからなんか凄いの持ってんだろうが事前に言ってくれねえと俺の心臓がもたん。だから、出すなら出すで言ってくれ」




「はあ、わかりました。と言ってももう出てるんですけど」




「は?どれだよ?どこにも見当たらねえぞ」




 え?ギレゴウルさんの目は節穴なの?目の前にあるっていうのに。




「ギレゴウルさんの目の前にあるじゃないですか。これですよこれ」




「いやいやいや、こりゃただのポーチじゃねえか。こんなカバにこの量の食料が入るわけねえじゃねえか。からかうのもいい加減にしろ。たく、片付け終わるまであっちでファギルスとあとリンネルと話してるからな」




「えー、待ってくれないんですか?待っててもいいんですよ?」




 うわーお、めっちゃ嫌そうな顔なんですけど。そんなに嫌そうな顔しなくてもよくない、冗談なんだから。




「じゃあさっさと終わらせろよ。おいファギルス、リンネル、雨音が食料片付け終わるまで茶でもしようぜ。片付け終わるまで!」




「ちょ!片付け終わるまでを強調しないでくださいよ!わかりましたから、さっさと片付けますから2分ください!2分!」




「たく、わかったよ。2分だからな。2分経っても片付け終わってなかったら俺はあいつらと茶をしてる所をお前に見せ付けるからな」




 うわ、発想がゲスいんだけど。片付け途中の人に見せつけるとか頭おかしいんじゃないの?てか、ギレゴウルさんが優雅にお茶をしてる所を想像出来ないというか、したくない。


 だって考えても見てほしい。スキンヘッドで警察にあったら絶対に職質されそうな、そして筋肉がすごくて合う服がないのかスギちゃんみたいな服の着方をして背中に大剣を背負った男が優雅にお茶をしてる所を想像出来るだろうか。いや出来ない(反語)


 まあ、とゆう訳でさっさと終わらせる。そんな姿のギレゴウルさんを見なくていいように!




「えーと、スッテプ1!ポーチの口を開けられる所まで開ける!ステップ2!テーブルを持ち上げる!」




「いや、流石にそれは無理だろ」




「ふんぬっ、おっとと。ふう、セーフ。それでスッテプ3!テーブルを傾けてポーチの口に食べ物を正確に入れる!」




「あー、俺の目はイカれちまったのかねえ。確かあのテーブル、俺とあと他のやつ3人と4人がかりでアソコに設置したんだがな、ははは、まさかなあ」




 あ、なんかギレゴウルさんが遠い目をしてらっしゃるのですが持ち上げちゃまずかったかな?まあ、持ち上げられるんだから気にしてもしょうがないと思うけどそろそろ慣れて欲しい。私が何かするたびに驚いてたら疲れる気がするけど、でも当分合わないか。ギレゴウルさんは別の世界に行くわけだし、私が行くかどうかは分からないわけだしね。


 さて、大方入れられたかな。後は自分で持って入れますかね。


 ……よし、入れ終わった。時間は2分10秒!ギリギリアウトだったー。でも片付け終わったしこれで出発出来るからいいかな。




「ギレゴウルさん片付け終わりましたよー。戻って来てくださーい。出発しますよー」




 ……ダメだこりゃ。戻ってこないし、揺さぶってみようかな。




「ギレゴウルさん、戻って来てくださーい。片付け終わりましたよー。ギレゴウルさーん」




「お、おう。なんだ終わったのか。って、揺するのをやめろ!おい!マジでやめろ!てか、楽しんでんじゃねえよ!顔がニヤついてんぞ!やめ、やめろー!持ち上げるな!おま、どんだけ馬鹿力なんだよ!あ、スマン!嘘だ!だからやめろ!縦に振ろうとするな!何か言ってくれ!無言が1番怖いから!」




 はあ、なんか途中からイラってしたからやったけどそろそろ止めようかな。ギレゴウルさんがうるさいから。




「はい、止めましたよ。次からは女の子に馬鹿力とか言っちゃダメですよ?」




「お、おう。言わねえように意識しとくからそろそろ離してくれねえか?反省してるからよ。ほんとに次は言わねえからよう、な?」




「わかりました。離しますね。ちゃんと着地してくださいね」




「おっと。なあ、何も空中で離すことはねえんじゃねえか?ちゃんと地面に降ろしてくれても良かったんだぜ?」




「それはなんか嫌なので空中で手を離したんですけど」




「タチが悪いな!そんな嫌だったのか言われるのが?」




「当たり前じゃないですか!こんなか弱い女の子相手にそれを言っちゃうギレゴウルさんって絶対モテないですよ。ギレゴウルさんは独身そうですし」




「いや、独身じゃねえぞ?妻と息子と娘がいるぞ。どっちも27で成人して冒険者やってるが」




 な、なな、なんだってーーー!!!嘘でしょ?!こんなデリカシーにかける人に妻子がいるなんて!


 私は結婚もまだ出来ない歳で死んでしまったというのに……。てか、ギレゴウルさんに27歳の子供がいるってことはギレゴウルさんの年齢ってそれなりだよね?なんでこんな若々しいの?そういえばこの世界に来てからあんまり歳をとった人を見たことがないような?1人は例外でエルフだったけど……。




「あの、ギレゴウルさんってなんでそんなに若々しいんですか?エルフとか言ったら私は怒りますよ?」




「なんで怒られねえといけねえのか分からねえが、雨音が言う通り俺はエルフだ。だがちゃんとしたエルフじゃねえぞ?俺はハーフエルフなんだ」




「ハーフですか?人間とエルフのってことですか?」




「いや、違う。俺の親父が鬼人で母さんがエルフなんだ。人間とのハーフでこんな筋肉質なのが産まれるわけがねえだろ」




 わ、わーお、まさかそれは想像出来ないよ。鬼人ととエルフのハーフって想像の斜め上を行き過ぎでしょ。でも、そっか、この世界には鬼人がいるんだ。私の世界にも鬼はいたけど数が少なくてあんまり見た事なかったなー。ちょっとだけ楽しみができたかも。

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