第29話

 戻って来たギレゴウルさんと私の喧嘩?を止めたリンネルの提案で、一旦落ち着いて話し合いをすることになった。




「それで、本当にファギルスさんのいた世界に行くんですか?本当の本当に行くんですか?」




「ああ、行く。誰がなんと言おうとな。それがたとえ雨音、お前だとしてもそれは変わらない」




 はあ、これはかなり決意が固いようだしもう、説得は無理かな無駄に終わりそうだし。




「……はあ、わかりました。もう何も言いません。では、今から少し私は仕事をするのでその間、何を聞いても見ても黙っててください。お願いしますね」




「おお、わかった。約束する。とゆうことで、リンネル何か食いもん持ってきてくれねえか。多分長くなりそうだしよ。あと、ファギルスの分もな」




 いや、ギレゴウルさんや。物分り良すぎやしませんかね。あと、ちゃっかりとリンネルに食べ物頼んでるし、ファギルスさんの分も。


 まあ、こっちとしてはありがたいんだけどね。


 さて、ギレゴウルさん達のことはいいとして、問題はニューベルトさんにどうやってギレゴウルさんの事を説明するかだけど、どうしようかな?……うん、考えても仕方ないしいっかな。こうゆうのの処理するの私じゃないし、ニューベルトさん達だし。私関係ないし!まあ、少しは罪悪感あるよ。色々と押し付けてるわけだし。はあ、……よし、気を取り直してニューベルトさんに電話しよう!


 それ、ポチッとな。




 てれれ〜れれ、てれれれれれ〜。てれれ〜れれ、てれれれれれ〜。てれれ〜れれ、てれれれれれ〜




 ねえ、なんで着信音また変わってるのかな!なに!かける度に変わるの!次はラー〇ンのチャル〇ラだし!そのうちドラ〇もんとか、ファミリ〇マ〇トとか、キューピーな3分のクッキングの音楽とか流れそうで怖いんだけど!ホントに!ニューベルトさんが出たら文句言ってやろ!




「はい、ニューベルトです。次はどんな問題を持ち込んで来たんですか?」




「いや、第一声がそれってどんだけ私問題児なんですか!まあ、問題持ち込見に来たわけですけど、ですけど!ニューベルトさんの着信音も問題じゃないですか!そのうちお偉いさんが怒鳴りに来ますよ!」




「着信音ですか?……ああ、アレは自分で弄ったんじゃなくて同僚が弄ったんですよ。あと、お偉いさんが怒鳴りに来る時は死んだ時ですね。ここ、一応死後の世界的な所なんで」




「はあ、そうでしたね。私が死んでそっちに行ったのがいい証拠ですよ。て、そうじゃないですよ!ニューベルトさんが言う問題ですよ。その問題が問題で問題なんですよ」




「問題が問題で問題なんですか?それは大変ですね。で、どんな問題ですか?」




「えっと、担当してる世界の住人が、今回次元の狭間を開けた世界の住人の世界に行くらしいんですけど、どうすればいいですか?」




「はぁ、本当に問題を持ち込んできましたね。まあ、行くのは別にいいんですよ。ただ、その住人がいた記憶を他の人から消さないといけないというとても大変な仕事が増えるぐらいですかね、ふふふ」




 やば、ニューベルトさんが壊れかけてる。まあ、やったの私だけど。そうかあ、他の人からギレゴウルさんの記憶を消さないといけないのか。……へ?ギレゴウルさんのいた記憶を消す?それって戻ってくるような事があれば、ギレゴウルさんのことを覚えてる人がいないってこと?




「あの、ちょっと待ってもらってもいいですか?本人に確認してくるので」




「分かりました。出来るだけ早くして下さいね。こちらもそれなりの準備をしなくちゃいけないので」




 あれれ?おかしいぞ〜?そこはもっとこう、「自分のことを忘れられるのは辛いですもんね」的な感傷に浸る感じじゃないですかねー?ちょっと薄情すぎやしませんか?まあ、いいや。とりあえず本人に聞くとしますか。




「という事だそうですがギレゴウルさんどうですか?」




「何が、という事だ。全くこっちに事情が伝わってねえんだよ。いや、一つだけ伝わったぞ、お前がとんでもなく問題児だってことがな。それで本題だが俺の事で今問題が生じてるってことだろ」




 うわー、ちゃんと話が進むけど、私は問題児扱いなんですね。はははは……はあ。




「そうですね。まあ、ギレゴウルさんがファギルスさんの世界に行くのはいいらしいんですけど、こっちの世界にいる人たちからギレゴウルさんのいた記憶を消さないといけないらしくて、それで、もしギレゴウルさんがこっちに戻ってきたら誰もギレゴウルさんのことを覚えてないので、ギレゴウルさんはそれでいいのかなって……」




「なんだ、そんなことを気にしてたのか雨音は」




「そ、そんなことってなんですか、そんなことって!」




 なんで自分がいた記憶を消されるっていうのにそんなことで済ませられるの?


 私だったら絶対に嫌だ。お父さんとお母さんが死んでその上に私も死んじゃって、弟と妹をあっちに残してきちゃったのにそんな大切な2人に忘れられるなんて嫌だ。




「ギレゴウルさんには大切な人とか大切にしたい人とかはいないんですか!なんでそんなに平然としてるんですか!」




「なあ、雨音。俺だってな、そんなことって言ったがな大切な奴や大切にしたい奴はいるんだよ。そんな奴らに忘れられるのは俺だって嫌さ。だがな、そこに困ってる奴がいたら助けたいんだよ俺は。だからな、たとえ大切な奴らに俺の事が忘れられても、もう一度楽しい思い出を作ればいいじゃねえか」




 なんでこの人はこんなにもかっこいいこと言えるのよ。これじゃあこっちが悪者みたいじゃん。




「分かりました。上司のほうには大丈夫だと言っておきます」




「おう、悪いな。それにしても上司がいるとか、俺のことをこの世界の住人だとか言ってるけどよ、雨音、お前は何者なんだ?」




「私ですか?私は……なんて言えばいいんでしょうね」




「なんて言えばって、こっちが聞いてんだがなあ」




「だってしょうがないじゃないですか。えーと、しいて言えば世界の管理者ですかね?」




「世界の管理者だ?なんだそりゃ?」




 ですよねー。てか、これ以外にいいの無かったんだからよくない。むぅ、とりあえずニューベルトさんにギレゴウルさんは大丈夫だって言ってたって言わないと。




「あー、もしもし。ニューベルトさん。本人の許可がおりたのでやっちゃってください」




「分かりました。それじゃ、そちらの住人の方と他所の方が次元の狭間を通ったら、また掛け直してください。それでは」




「はい、分かりました。……ということなので次元の狭間に今から行きます。準備した荷物を持ってください。はい、そこの若干っていうか、かなり空気になりかけてるファギルスさんも荷物を持ってください。リンネルは荷物をまとめなくていいから。てか、その袋はどこから取り出したの?はい、それじゃ準備が出来ましたね。それじゃしゅっぱーつ」




「いや、出発じゃねえから!まだだから!食料入れてねえし!」




「えー、それじゃあ早く入れちゃってくださいよ。もう時間ないんですから」




「わーったよ、早くするから落ち着け、とりあえず」




 はあ、やれやれいつになったら出発出来ることやら。あっそうだ、そろそろスマホの充電が30%になるんだった。いやー、結構長持ちだから忘れてたけど充電しないとだよね〜。うん、とりあえず2人が次元の狭間越えた報告したついでに聞けばいいかな。うん、そうしよう。


 さて、私は待ってる間になにか食べようかな。なんかキャラでもないことしちゃったし、叫ぶのはないよね。うんうん。あー、早く準備終わらないかなー。

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