第26話

「すいません雨音さん、お待たせしました」




 あ、やっと戻ってきた。ニューベルトさんが叫んだときはビックリしたけど、叫んだ後は普通に色々な所に電話してるのがちょくちょく聞こえてたから電話をし終えて戻ってきたのかな。




「いえ、そんなに待ってないので大丈夫です。ところで原因って分かったりしてますか?」




「はい、原因に関してはそちらの世界の履歴を確認したので、すぐにわかりました」




 ん?世界の履歴?なんかすごい単語が出てきたけど、大体この世界で何が起きたかが分かるんだろうね。まあ、断言して間違ってたら恥ずかしいけどね。とりあえず聞いてみよう。




「あの、世界の履歴って何ですか?」




「はい、世界の履歴とは、各世界で起きた危険な行為、端的に言えば世界が滅びるような事が起きていないかを可視化したものが世界の履歴です。その世界独自の歴史は見れませんが」




「へー、そうなんですか。教えてくれてありがとうございます」




 まあ当たらずとも遠からずってところかな。




「それで履歴を見て、さっき叫んでたってことは今私のいる世界が滅びるような事が起きってるんですか?」




「はい、そうです。どこの誰だか知りませんが、次元の狭間を無理矢理開けましてね、アレ直すの大変なんですよ。なので今次元の狭間の管理をしてる部署が修復にあたってるのですが、如何せん元から人数が少なく、今回の開け方が雑過ぎて手間取っていまして…。治るのにそちらの時間で大体2日から3日ほどかかるので、治り次第電話しますね。それでは失礼します」




「はい、ありがとうございます」




 はあ、まさか本当に滅亡しかけてるとは……。さっきギレゴウルさんに言ったのがフラグだったとは。


 てか、次元の狭間とかなんか凄そうだけど無理矢理開けた犯人私知ってるじゃん。うーん、言った方がいいのかな?でもなあ……。うん、言わないでおこうかな。自分の世界を救おうとしてやった事だし悪気は無いよね。あったら即電話するけど。


 さてと、ギレゴウルさんたちの所に戻ろっと。デザートとかあったらいいな、あったらだけど。
















「ギレゴウルさん、戻りましたー!」




「遅かったな。用事は終わったのか?」




「はい、終わりました。それともう少ししたら時間がおかしいのも直りますよ」




「あ?なんでそんなことがわかるんだ?」




「それは秘密です。女の子は秘密がいっぱいなんですよ。それと気になってたんですけど、テーブルに置いてあるのってデザートですか?」




「ああ、これか。リンネルが作ってくれたんだ。なかなかに美味いんだこれが。見た目は黄色いが下の方にな黒いソースがあってだな黄色い所と一緒に食べるとまた美味いんだ」




「へぇー、そうなんですか。それは美味しそうですね」




 まあ、知ってるんだけどねそれ。プリンだよね、それ。黒いソースってカラメルソースだよね。いやー、まさか異世界に来てプリンが食べられるとは思わなかった。でも、プリンってギレゴウルさんが言わないってことはこの世界自体はプリンはないのかな?でも、世界は広いから探せばあるよね。




「それで、私の分は残ってるんですか?残ってなかったら泣きますよ?」




「安心しろ、リンネルが残してるからな」




「ホントですか!それでリンネルはどこに居るんですか?」




「リンネルだったら厨房で食器を洗ってるはずだから、貰ってこい」




「厨房ですね。了解です」
















「リンネル戻ったよー。あと、私の分のプリンちょうだーい」




「おお、無事用事は済んだようじゃな。それとプリンならもうないのじゃ」




「ん?ちょっと待って、今なんて言ったのかな?」




「ないのじゃ。儂が少し目を離した隙に無くなってしまったのじゃ。ほれ、これを見ても儂が嘘をついてるとでも言うのかの?」




 なん、だと!?もうすでに誰かに食べられただと……。はあ、私のプリン……、久しぶりに食べれると思ったのに残念……とか思うわけないじゃん。これは犯人を見つけて粛清しなければならないようだね、ふふふ、どうしてくれようかこの恨み。




「何を考えているのかは分からんが食べた犯人はギレゴウルじゃぞ」




「え、マジで。……よし、とりあえず死ぬ一歩手前までにしておこう」




「やめんか。はあ、こんなこともあろうかと思って1個残しておいて正解じゃったのう。ほれ、今出すから落ち着くのじゃ」




「大丈夫大丈夫。私は至って冷静です。死ぬ一歩手前までは流石にやらないよ。……食べた後に半殺しにはするけど」




 ん?なんかリンネルが隣でため息ついてるんだけど、疲れてるの?休んだ方がいいんじゃない?




「はあ、まあ良い。ほれ、これが食べたいんじゃろう?食べたかったらギレゴウルを半殺しにするのは辞めるんじゃ。良いかの?」




 あれ?半殺しにするって聞こえてた?心の中で思ってた事が口に出てたとは、次からは気をつけよう。うん、私なら出来る。だって殺ればできる子だもん!え、やるが違う?いえいえ、これであってるよ。とりあえず殺れば解決だもん。




「のう、美咲よ。本当にわかっておるのか?どう考えてもよからぬ事を考えていそうな顔なんじゃが、やはりこれはない方がいいのう」




「あ、ごめんなさいそれだけはどうか許してくださいお願いします」




 またため息ついた。まさかさっきのは疲れてるんじゃなくて私の半殺し発言に対してのため息だったのか!




 おふ、やばい、このままでは私は変な子扱いされる。まだいけるか?いや、いけない。


 まあ、わかってたけどね。もうすでに手遅れなのは最初から気づいてたし。てか、自分で自分を変な子だと思ってる時点でダメだと思うけどね。




「やはり美咲は変わってるのう。こんな短時間でどうやったらそんなに表情を変えられるんじゃ」




 はい、確定入りましたー。てか、そんなに表情に出てたのか。うん、こっちも出さないようにしよう。


 はあ、よくあるゲームとかなろう小説にあるようなステータスがあれば、称号とかに『頭が危ない子』とか『変な子』とか出てそう。


 まあ、あるかは確認してないんだけどね。後で確認してみよう。ああ、あとあれだ、影が薄いファギルスさんに次元の狭間が閉じる前に帰って貰わないと。帰る時にまた開けたりしたらニューベルトさん達が大変そうだし。


 まあ、それは後でいいとして今は久しぶりのプリンを堪能しますかね。待っててね、私のプリンちゃん。美味しく味わってあげるからね。
















 はあ、美味しかった。舌の上でとろけて、甘い味が口の中に広がってそのあとに来るカラメルソースの少しの苦味がまた甘い味を引き立てる。あぁ、生きてきた中で1番美味しいと思えたプリンだね。(今は生き返ったみたいな感じだけど)その次が妹が作ってくれたプリン。あれは私だけに授けられたプリンだよ。


 さて、そろそろファギルスさんに帰りの催促をしないとニューベルトさん達の仕事が増えちゃうし私の方の仕事の世界の管理が終わらないよ(管理って言ってもただ旅するだけなんだけど)。




「ファギルスさん、ちょっといいですか?まあ、ダメって言ってもファギルスさんには拒否権ないですけど」




「なんですかアマネさん。ここでは話せないことですか?」




「ええ、そうですね。ここではちょっと話せないですね」




「わかりました。とりあえず外に出ましょう。ギレゴウル、それでは少し出てきます」




「ああ、あんまり遅くなんじゃねえぞお前ら」
















 よし、ここら辺でいいかな。ファギルスさんは……うん、ついてきてるね。




「アマネそろそろいいでしょう。ギルドから結構離れましたよ。そろそろ話してくれてもいいんじゃないですか?」




「そうですね。それでは単刀直入に言いますね。もう少ししたら次元の狭間が閉じられます。その前にご自分の世界に戻った方がいいですよ」

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