第22話
ギレゴウル視点
「おい、雨音今から対人戦について教えるからよく見とけよ……。て、寝てんのかよ」
「おうおう、オッサン。可哀想だなぁ。せっかくカッコつけたのによぉ。ああ?」
たく、雨音のやつ目を離すとすぐ寝てんなあ。それに、ファギルスの奴も寝てるしよお。寝るのが好きなのかよお前らは。
それにしてもこいつら、なんでファギルスを狙ってやがるんだ?
「おい、お前ら。なんでファギルスを狙ってる。返答次第ではここで殺す」
「おうおう、なんで狙うかだって?それはそいつが魔族で俺様たちが勇者だからだよぉ。そいつが人類を滅ぼす魔王を誕生させるってゆう神託が出たんだよぉ。だから俺様たちはそいつを殺しに来たってわけよぉ。分かったかオッサン。ああ?」
なるほどな。いつ呼ばれたか知らねえが、今回の勇者は頭が弱いみたいだな。
「ああ、分かった分かった。お前がどんだけ頭が弱いかが、よーく分かった。そんで、誰から死にてえ?」
おいおい、少し殺気を放ったぐらいで怯えんなよ。馬車ん中で寝てる2人を見習えよ。
「おいおい、勇者様よ。さっきの威勢はどこいっちまったんだ。ほら、かかってこいよ。ああ、そうだ。先制攻撃はくれてやるよ」
お、顔が真っ赤だな。まだまだガキってこったな。
「おうおう、オッサン。そんなに余裕ぶっこいてていいのか?オッサンなんざ俺様の最強の一撃でぶっ殺せるんだぜ。ああ?」
「ふーん、ならやってみろよ。まあ、一撃どころか当たりすらしねえだろうけどな」
「おうおう、オッサン。じゃあ見せやるよ!俺様の力をよぉ!『乱斬紅龍剣』!」
ほお、なんか凄そうだけど(名前だけだがな)、前に戦った勇者の方がマシな技打てたんだけどな。今回の勇者はダメそうだな。まあ、勇者に会うのもこれで最後だろうけどな。あ、ファギルスの世界にも勇者いたんだっけな、最後じゃなかったな。
それにしてもこの技はないわ、余裕で避けれそうだし。まあ、避けたら馬車に当たるからここは剣で止めるか。
「よっと。あ?剣圧だけで消えちまったよ。ちっ、おい勇者様よ、もうちっと強めの技出してくれよ」
おー、おもしれえ顔してやがるな。よっぽど今の技に自信があったんだろうが、ありゃあ初級剣技の乱れ斬りだな。まあ、普通のよりかはちょっとばかし威力があったが微々たるもんだな。
「お、おうおう、オッサン。今なにしやがった。ああ?」
こいつのこの口調は口癖だったのかよ。たく、余裕があるからあんな言い方だと思ったんだがな。
「はあぁ、本当は敵に自分の手の内を明かさないんだがな。せっかくだ、今から死ぬお前達に教えてやるよ」
おっと、他の奴が逃げようとしてんな。とりあえず数人気絶させとくか、殺して他の奴も逃げちまったら面倒だからな。
「おい、逃げようとしてんじゃねえよっと」
よし、上手く気絶させられたな。それにしても今の見て顔青くすんなよ。たく、根性ねえなあ。これだから最近の若いやつはよお。
「お、おい!銀仁朗!こんなに強いなんて聞いてないぞ!どうゆう事だよ!?」
「おうおう、俺様も聞いてねえぞ!どうゆう事だよあの女神!あぁ!?」
おいおい、こいつとうとう女神にまで喧嘩売ろうとしてるぜ。こりゃダメだな。とりあえず、こいつは殺しとくか、うるせえし。情報はとりあえず気絶させたヤツらと、なんか慌ててるフード被ってるヤツにでも情報聞くか。素直に言えばいいんだけどなあ。
「あー、何か知らんが勇者様よお。あんまし女神に喧嘩売らないほうがいいぜ。あいつら短気な奴が多いからな。つっても、お前今から死ぬから意味無いけどなっと」
「おうおう、オッサン。俺様にはこの伝説の剣があるんだぜ。俺様が簡単に死ぬとでも思って……」
よし、うるさいヤツは死んだ。フード被ってる奴も今の見て失神した。いやー、フード被ってるヤツを気絶させるって事を省略出来たから良しとするか。
「うっ、うぅぅ……。あぁぁ、あれ?俺生きてる……。どうして……。はっ、お、おい!三島起きろ!土伊お前も起きろ!」
「うっ、あぁぁ……。あれ?生きてる。なんで?さっきオッサンに殺されたような……。て、なんで俺ら縛られてんだよ!」
「うぅぅん、あと、5分だけ〜……」
「おお!起きたか三島!あと、お前は寝るな土伊!ほら起きろ!」
お、やっと起きたか。……1人まだ寝てるが。まあ、いいか。
「よお、お前ら。やっとお目覚めか。随分と起きるのが遅せぇじゃねぇか」
「お、お前はさっきの!おい、早く俺らを解放しろ!」
おいおい、起きて早速こんなことが言えるとはなぁ。自分が縛られてるのに俺に命令するとか、勇気があるのかただの馬鹿なのか、まあ、後者だろうがな。
「おいおい、そんなに大声出すなよ。あと、自分の今の状態分かってんのか?お前は今ロープで縛られてんだぞ」
「そ、そんことわっかてる!だから早くこのロープをほどけ!そうしないとこの国の王にお前のことを言って処刑させるぞ!」
おー、怖い怖い。うちの国の王様ってか、皇帝様は勇者には毎度頭が低いからな。勇者が皇帝に俺のことを処刑しろなんて言ったら、絶対処刑しようとするだろうな。まあ、その前にこっちの世界にはもういないんだけどな。
「まあまあ、落ち着けって。何もお前らをとって食おうてとしてるわけじゃねえんだ。ただお前らの、勇者の情報が欲しいんだ。素直に言えばすぐ解放してやるからよ」
「そ、そんなこと信用出来るわけないじゃないか!?お前は銀仁朗を、人を殺したんだぞ!?そんな奴の言ったことを信用出来るわけないだろ!?」
あー、ホントうるせえな。たくっ、こいつに聞くんじゃなかったぜ。とりあえずこいつうるさいし、口塞いどくか。
「お、おい!何をする!や、やめろ!やめっ、うっ、ううぅぅううっ!」
よしとりあえずコレでよしっと。さてこいつらはちゃんと話すかなっと。
「おい、そっちのメガネかけてる奴。お前はどうすんだ。情報を話すのか話さないのか」
「……話したらこの拘束をといてくれるのか?」
「ああ、とくから心配すんな。まあ、話せばだがな」
「わかった、話すよ。それで一体どんなことを話せばいいんだ?」
お、こいつは今の自分の状態が分かってるみたいだな。若いのにもちゃんとした奴がいるもんだな。逃げようとしたけどな。
「それじゃあまず、勇者の人数からだなそれから───」
「なるほどな。人数は100人ぐらいか……。今回は結構多いな。……それに、アレを手に入れた勇者がいるのか。そいつがまともな奴だといいんだがな。まともじゃないとこの世界滅ぶかもしんないしな……」
「なあ、何1人でブツブツ言ってるか分からないけどこの拘束早くといてくれないか?」
「あ、すまんすまん。今とくから待ってろ。ああそれと、といたからって襲ってくんなよ。めんどくさいから」
「わかった。それと俺たちの武器は返してもらえるのか?」
「ああ、返してやるよ。俺はいらないからな。それとあの死体どうすんだ?持ってくのか?」
「取れる物だけとって燃やす」
「はああ、冷めてんのなお前。まあ、それで正解なんだがな。もし物だけ取って放置したらアンデットになってたからな」
よし、とけた。それにしても口塞いだ方はさっきから静かだな。……寝てやがる。なんなんだ。最近は暇だったらすぐに寝るのが流行ってんのか。たく、もう1人は最初から寝てるしよ。まともなのは俺と話してたこいつだけかよ。
「はぁ、とりあえず拘束はといたからな。武器はあそこに置いたから勝手に取ってけよ。それじゃあ俺は行くからな。まあ、なんだ。お前も頑張れよ」
「なんでそんなに同情するような目をしてるのか分からないが、わかった。これからはアンタみたいなヤツには関わらないよう心がけるとするよ」
「おう、それと街とかに迷惑かけんじゃねえぞ」
さて、雨音たちのところに戻るか。どうせアイツらまだ寝てるだろうし、まずは起こすところからだア・レ・な。
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