第18話

 うーん、結構奥の方に来たけど誰もいないよ。いい事なんだけどね。それにしても、村って言ってたけど村ってもっとこじんまりとした感じだと思うんだけど、普通にデカくない。いや、街に比べたら小さいよ。やっぱり発展してると村まですごいことになるのかな?


 はあ、ファンタジーって何だったんだろう?私自身ファンタジーだけど気にしない方向で。




 ん?今人影が見えたような。ちょっと行ってみようかな、もしかしたら住民かもしれないし。


 あれ?でも、肌の色がおかしかったような気がするけど気にしないでいいかな。


 よーし、とりあえず行ってみないとね。
















 あっれ〜?おかしいな、確かこっちに人影が見えたような気がするんだけど誰もいないや。ちょっと進んでみようかな。


 それにしても、こんなに静かだとなんか怪しくない?魔物の軍団がこの村?に近づいてるって言ってたけど、魔物の1匹もいないとおかしいよね?


 てか、全然いないし。さっきのは見間違いなのかな?とりあえずあの角まで行ったら入り口まで戻って街にでも帰ろうかな。




「クチャ、グチャ、バキッ」




 やっぱりさっきの魔物がいないってのは撤回しよう。どう考えても何かを食べる音がしてるんですけど。


 ちょっとだけ覗いて倒せそうだったら倒そうかな。


 さて、何がいるのやら。




 て、ゴブリンじゃん。でも、問題は食べてるものだよね。どうも、共食いしてるようにしか見えないんだけど。あと、人間、それも多分子どものだと思う衣服が落ちてるから食べられたんだろうな。可哀想に、私が早く来てたら助けてあげられたかもしれないのに……。




 はぁ、ダメだ。こんなこと考えても食べられた子どもは戻ってこない。それならいっそ倒した方が食べられた子も報われるかな。


 さて、さっさとゴブリン倒してギレゴウルさんのところに戻ろう。




「アト、モウスコシ、シンカ、デキル。ゲギャギャギャッ」




 え、今喋ったよね。ゴブリンって喋れたっけ?まえに倒したのは喋ってなかったからこいつが特別なの?それにシンカ、進化かな?もう少しって言ったし、ここで殺しておかないと結構ヤバいのかも。




 でも、私に殺せるのかな?どうしよう今になって怖くなってきた。最初の森は私を見たらみんな逃げちゃったし、スピリカさんのところでスピリカさんに絡んでた男は倒すだけで殺してないし、シーザ自己中も殺してない。あれ?そういえば私、この世界に来てから何も殺してないや。




 でも、殺さないとあのゴブリンはヤバいし……。覚悟決めないといけないよね。深呼吸、深呼吸。すぅぅ、ぐぇぇ。血なまぐさいぃ。まぁ頭の中はすっきりしたけど気持ち悪い。一気に殺ってここから離れればいい事だよね。




「なぁ、そんなところで何やってんだアンタ?」




「ふぇ?誰?」




「あ?俺か?俺はミノルだ。職業は勇者やってるよ、よろしくな。それで、アンタの名前は?」




 振り返ると私と同じぐらいの年齢の男子が立っていた。




「えっと、私は美咲。職業は冒険者。いま、そこの曲がり角の先にゴブリンを見つけたから殺るところだけ…ど…」




 ん?今職業おかしかったような気がするんですけど。勇者って言いましたこの人?勇者って、あの勇者?




「へぇ、そうなんだ。曲がり角にゴブリンねぇ。それにしてもアンタの名前、家の姉ちゃんと同じなんだな。珍しいこともあんだな」




「あの、勇者って、あの魔王倒したりする勇者?」




「そうだけど。てか、それ以外に勇者っているのか?」




 わお、生勇者だよ!生勇者!ありがとういるのかどうか知らないけどファンタジーの神様!


 やっとここにきて本当のファンタジーに巡り会えたよ!感動ものだよ!




「それにしても、ゴブリンぐらいさっさと殺ればいいのになんで隠れてるんだ?」




「それが、若干だけどそこにいるゴブリンが言葉を話すのを聞いたから警戒してたんだよ」




「なるほどな、言葉を喋るくらいだからレベルもそこら辺のゴブリンよりも高そうだな」




 レベルねぇ。他のゴブリンの強さが分からないけど、やっぱり喋るくらいだから戦闘とか他の種族とかを捕食してる数が多いんだろうね。


 それにしてもこの人いつまでここにいるんだろう。さっきからずっと私の方を見てるし、こうなんかあやふやだけど私の内側を覗き込もうとしてる感じがするんだよね。




「あの、ずっと私のこと見てますけどなんですか?すっごいムズムズするんですけど」




「え、あ、すまん。つい癖でよ。初対面の奴を【鑑定】しちまうんだ。悪気はなかったんだ。許してくれ」




「許してくれって言われてもね。うーん、じゃあこの話はゴブリン倒してからでいいかな?ちょっと聞きたいこともあるし」




「わかった、それでいい」




 よし、それじゃ一気に首を落とす。"せーの"で出よう。


 ふぅ、せーのっ!




「ていっ」




「ゲギャッ!」




 うん、うまく殺せた。でも、忌避感はやっぱりある。まあ、気にしなければそのうち忘れるような程度だけど。これがもし人だったら、多分今の私だったら殺せない。戦えはするだろうけど、命までは奪えない。かりに奪わないといけない時がきたら覚悟しとかないと私が死ぬ。そうゆうレベルで今の私はダメだと思う。




 それにしてもさっきから気になってたんだけど、この刀、刃についた血がどんどん吸われてるんだけど、どうゆうこと?私が大事なことを考えてたのに台無しだよ。もう。


 てか、この刀っていわゆる”妖刀”だよね。普通の刀とかは血吸わないし。ニューベルトさんもなんちゅうもんを女子高生に護身用として渡してるのよ。あ、私もう女子高生じゃないや。




 てか、刃についた血がもうないし。さっきから気のせいだと思いたいんだけど、もっと吸いたいみたいな感じが刀からするんだけど、私刀に乗っ取られたりとかしない?大丈夫だよね?とりあえずゴブリンの体に刺してみてヤバそうだったらニューベルトさんに即連絡しよう。文句言ってやる。




 はい、それではグサッといきましょう。えい。わぁお、意外と抵抗感なく刺さったよ。グサッじゃなかったよ。ヌルって感じだよ。うわあ、どんどん吸ってる。吸引力がすごいんだけど。どんどんゴブリンがミイラになっていくよ。それにしても音がエグいんだけど。ジュルジュルいってるよ。まあ、なにわともあれ乗っ取られたりする感じはないね。よかったよかった。




 よし、ジュルジュルいわなくなったし吸い終わったのかな。ゴブリンがすごい干からびてるよ。うん?ゴブリンの胸のあたりがなんか出っ張ってるんだけどこれなんだろう?とりあえず刀は抜いて鞘に入れとこう。


 て、うわっ、刀抜いたらゴブリンが粉々になっちゃったよ。まあ、いいか。




 さて、ゴブリンの胸のあたりには何があるのかなっと。うん?石?なんでゴブリンから石が出てくるの?あ、そうか。これ魔石だ!よくファンタジー系のラノベで出てくるやつだ。へぇ、ホントにあったんだ。まあ、とりあえず魔石は袋に入れといてミノルのところに戻って、入り口に行こう。もうこれ以上何もないと思うし。

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