第15話
ホテルを出た私とリンネルは寄り道をせずに門へ向かった。門につくと、いつもと違う門番さんがいた。
「おはようございます、朝から早いですね。お急ぎですか?」
「はい、昨日受けた依頼が朝方にしか出ない魔物の討伐なんですよ」
「なるほど、そうでしたか。身分証を見せていただいてもよろしいですか?はい、ありがとうございます。それではお気をつけて」
私とリンネルは身分証を見せて急いで門から出ていった。
街から結構離れてふと思った。
そんなに急ぐことじゃなくない?だってスピリカさんとホテルに迷惑をかけたくないなら他のところに泊まればよかったじゃん。
でも、丁度いいかな。私がここに来させられたのって、この世界の管理と変わったことがないかを調べるためだし。
まあ、変わったこともないし少し忘れてたけど。
「のう美咲よ、少しお腹が減らんか?」
「いや全然。私不老不死になってからお腹空かないし。てか、食べなくてもいいし」
「な、なんじゃと!それは初耳なのじゃ。でも美咲よ、お主普通に飲食してたではないか」
ありゃ、言ってなかったっけ。うん、言ってないね。
「食べなくてもいいっていっても、食べたいし飲みたいじゃん。まあ、飲食は娯楽って言うけど今の私にとっては本当に娯楽なんだけどね」
「なるほどのう、便利な体じゃのう。儂も絶望がどうとか言ったが不老不死にすればよかったのう」
「そしたらここじゃないところに送られてたと思うよ。私はこの世界の管理を任されて送られてた来たんだよ。そのおかげでリンネルに会えたんだから私は不老不死になってよかったて思うよ」
「嬉しいことを言ってくれるのうぅ。まあ、なんじゃ儂も美咲に会えてよかったと思っておるぞ」
うわぁ、真正面からこう言われると恥ずかしいな。私も同じことを言ったて思うと、もっと恥ずかしいよ。
「なんじゃ、美咲から言っておいて赤くなるとは。儂も恥ずかしくなってきたのじゃ」
二人して赤くなってると、他の人に見られたら変な風に見られるよね。
「そ、そうじゃ、美咲よここらで休憩でもせんか?」
「うん、そうだね。ちょっと疲れてきたね。精神的に」
リンネル、ナイス!ちょっと頭冷やしたかったから言ってくれてよかったよ。
「近くにちょうど森があるしあそこで休もう」
「そうじゃの、ちょうど日陰になっとるしあそこでいいじゃろ」
まだ、顔が熱を持ってるけど休めばちょっとは冷めるよね?
近くの森で頭と顔を冷やした私とリンネルは、昼食を食べてまた次の街へ歩き出した。
森で休んでる時はお互い気まづくて話をせずに黙々と昼食をとっていたけど、いつの間にか普通に話していた。これからどうするのかとか、次の街ではリンネルの服を買おうとか、まあ、そんな感じの当たり障りのない普通の会話をした。
それからは、ずっと歩きっぱなしで精神的に疲れた。まあ、余裕で世界1周とか出来るけどね。
そしてついに、次の街の門が見えてきたよ。現在の時刻は午後6時前。ギリギリ間に合った。
「リンネル、やっと着いたね。あの街から結構歩いたし宿をとったらさっさと休もうか」
「そうじゃの。もう、今日は歩きたくないのう。儂はふかふかのベッドで寝たいのじゃ」
「ふかふかのベッドかあ。うん、いいかも。それで、夕食はどうする?」
「そうじゃのう。儂はいらないのじゃ。疲れすぎて今は眠くてのう、早く寝たいのじゃ」
「そうだね。私もそう言われるとなんだか眠くなって来ちゃった」
そう話しながら門まで近づくとそこには誰もいなかった。
「なんじゃ、誰もおらんぞ。どうゆうことじゃ?」
「なんでだろう、門番さんもいないし門が閉まって…る…し」
今何時!6時すぎてるし!そりゃ誰もいないし門が閉まってるわけだよ。
「ごめんリンネル、もう門が閉まる時間すぎてたよ」
「ふむ、ではここらで野宿とゆうことかの。儂は森でなにか狩ってくるとしようかの。美咲は火とテントの準備を頼むのじゃ」
「うん、わかった。あ、お願いなんだけど食べ物以外にも取れたら取ってきて欲しいんだけどいい?」
「よいぞ。そうじゃな、美咲よそのポーチを貸してはくれんかの。そのポーチを持っていけばいっぱい持ってこれるでの。よいかの?」
「うん、いいよ。テントだけ取り出すからちょっと待って。よいしょっと。はい」
「うむ、いっぱい取ってくるでの。行ってくるのじゃ」
「行ってらっしゃい」
行ってらっしゃいって言うの久しぶりだなあ。死んでこっちの世界に来る前も全然言わなかったし何年ぶりくらいかな?
まあ、なにはともあれ火とテントの準備しますか。
ふぅ火もついたしテントも準備したしあとは、リンネルを待つだけかな。
それにしても、この世界に来てそんなに経ってないのに結構濃い日々を過ごしてる気がする。
てか、まだ3日しか経ってないんだよね。なのに、あの街からそうそうに出て次の街に来てるし(まだ入ってないけど)もう、結構この世界にいるみたいに錯覚しちゃうよ。
ふあぁ、眠くなってきちゃった。リンネルが帰ってくるまで寝てよう。
うぅーーーん、よく寝た。うん?なんかいい匂いがする。
「おお、起きたのかの。今起こそうと思っていたのじゃが、起きたのならよいじゃろう。ほれ、夕食がちょうど今出来たのじゃ。冷めぬうちにお食べ」
リンネルが帰ってきてて、夕食が出来てるってことは私結構寝てた!
「ごめんリンネル、私結構寝てたよね。食べ終わったら私が食器とか片付けるからゆっくりしてていいよ」
「ふむ、美咲よ、なにか辛いことがあったらなんでも儂に相談するんじゃぞ」
なにその優しい目?私何かやらかした?いや、今寝過ごしたけど。それだけだよね?
「辛いこととかないから大丈夫だよ。そんな心配しなくていいよ?」
「美咲よ、気づいておらんのか。お主今、涙を流しておるんじゃぞ?それを心配するなとは酷なことを言う」
え、今私泣いてるの?
私は指を目元に伸ばすと、指に湿った感触がした。
あれ?なんで私泣いてるんだろ?辛いことなんて何にもないのに?
「ほれ、美咲よ。こっちへおいで。いくらでもお泣き。美咲が落ち着くまで儂のそばにいなさい」
そう言ってリンネルは私を抱き寄せた。
「くっ……うっ……うぅっ……」
「もういいんじゃよ。何も堪えなくていいんじゃぞ。泣きない時は精いっぱいお泣き」
リンネルのその一言で私の中の何かが崩れ去った。そして私はこの世界に来て初めて心の底から泣いた。
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