第10話

「ねぇ、聞きたいんだけどなんでリンネルはこんなところにいたの?」




「いや、いたのではなくての、ここは儂の住処じゃぞ。逆にお主が迷い込んできたんじゃぞ」




 おっと、まさかの私が迷い込んだらしい。まあ、暗い森の中だからしょうがないよね。


 はぁ、調子乗って採取しなければよかった。今度からは気をつけよう。




「それで、お主はなぜこんな森の奥に来たのじゃ?それと、お主のことを聞かせてもらおうかの。何故か同族の匂いがしての不思議なのじゃ」




 同族の匂いって私ドラゴンじゃないし。まあ、説明するって言っちゃったし、しょうがないかな。あ、私の正体って言っていいのかな?リンネルは人じゃないし、うーん。そうだ、ニューベルトさんに電話すればいいんだ!いやー忘れてた。不老不死になってから度忘れが多くなったような気がするんだけど気のせいだよね?




「ねぇリンネル、ちょっと説明するのに準備が必要だから待ってて」




「準備かの?うむ、わかったのじゃ。して、どれくらい待てばよいかのー。ちと小腹が空いての、なにか食べてきてよいかの?」




「うん、大丈夫だよ。でも、食べたらここに戻ってきてね。ちゃんと説明するから」




「うむ、わかったのじゃ。それでは行ってくるぞ」




 そう言うとリンネルは何かを食べに行った。多分モンスターを食べに行ったのだろう。だってまだ視覚を強化しているからリンネルの胸元が紫色に光ってるんだもん。


 さて、ニューベルトさんに電話しないとね。


 さーて、今回は何回で出るかな。


 よし、かけよう。


 いーち、にー、さーん




『はい、もしもし。雨音さんどうかしましたか?』




「もしもし、ニューベルトさん。すいません、また聞きたいことがあるんですけどいいですか?」




『いいですよ。なんでも聞いてください』




「それじゃあ。現地のドラゴンに正体を聞かれたんですけど不老不死のことって言っていいんですか?」




『現地のドラゴンですか?確か雨音さんが今いる世界には確かドラゴンとか竜種はいないはずなんですが……。まあ、正体を教えるも教えないも雨音さんの自由ですよ。ですが、本当に信頼を置ける相手だけにしといたほうがいいですよ。人間は人知を超えたものに対しては警戒心が高いですからね。一応気をつけてくださいね。それで、質問はそれだけですか?』




「はい、それだけです。答えてくれてありがとうございます」




『いえ、もしもなにか聞きたいことが出来たら、いつでも電話してくださいね。それでは失礼します』




「はい、失礼します」




 よし、これでいろいろと説明出来るね。なんとなくだけどリンネルは大丈夫な気がするんだよね。まあ、ほんとになんとなくだけど。


 そういえば、リンネル戻ってきてない。小腹が空いたって言ってたけど、リンネルの小腹ってどんぐらいなんだろう?元がドラゴンだし、結構食べるのかな?見た目小さいけど。


 もう少し待ってみようかな。
















「すまんすまん、少し食べすぎてのう。ああ、安心せいお主の分も勿論持って帰ってきたぞ」




 いや、安心せいって。何も心配してないよ!


 てか何その肉!デカイんだけど!それにどこから出したの?




「あ、そういえば私名乗ってなかった」




「そうじゃのう。お主の名前はまだ聞いてなかったのう」




「うん、そうだね。私は雨音 美咲。リンネルよろしくね」




「うむ、美咲かの?ふむ、良い名前じゃのう。美しく咲くと書いて美咲かの?あっておるか?」




「うん、あって…る…よ。待ってなんで漢字を知ってるの!?」




「ふむ、やはりあっておったか」




「え、今カマかけたの?」




「そうじゃが?まあ、やはり同族じゃったか。匂いが懐かしかったのじゃよ」




 同族ってそうゆう意味だったの。


 うん?同族ってことはリンネルも死んでここに来たってこと?でも、リンネルはドラゴンだよね?




「ねぇ、リンネルはどこの世界から来たの?」




「ふむ、どこの世界と聞かれてものう?日本の大正時代といえば分かるかのう?」




「大正時代って、結構昔だね。私はリンネルの時代よりもっとあとの時代からだよ」




「ほう、なるほどのう。もしかしたら儂の子孫かもしれないとゆうことじゃな?」




 そうゆうことなのかな?でも、大正時代とか確か100年くらい前だし、今となってはわからない事だけどね。




「元の世界に行けたら調べられるんだけどね。それにしても、なんでリンネルは人じゃなくて竜種になったの?」




 そうそれが今私が一番気になることなんだよね。だって、人と竜種って多分だけど、食べ物とか違うわけじゃん。私だったら耐えられないと思う。




「それはの、ただの好奇心じゃよ。ただそうなりたいと思っただけじゃ。理由なんての何となくていいんじゃ。儂が楽しめればそれで良いのじゃ。その結果、儂は今とても楽しいのじゃ」




 なんてゆうか、リンネルって自由だなぁ。そうゆう私も、不老不死になりたくてなったからなったんだしね。


 でも、不老不死になったから楽しいかなんてなったばかりの私には全然わからない。リンネルはドラゴンになってかなり経つと思うけど生きている中で多分楽しさを見つけたのかな。


 私もそうゆう生き方をしてみたくなったかも。だから、まずはリンネルに私が何になったかを教えよう。




「リンネル、私はね不老不死にさせてもらったんだ。最初はただなりたいだけだった。でもね今は違うんだ。リンネルの話を聞いてからね、私もいっぱい生きてリンネルみたいに楽しみながら生きたいなって思ったの」




 リンネルは最初、私が不老不死だと言うと驚いたけど、最後まで私の話を聞いてくれた。




「ふむ、美咲は不老不死になったのじゃな。不老不死とはのう。なんとも残酷な道を選んだのう」




「残酷?不老不死が?」




 なんで不老不死が残酷なんだろう?




「それはの、不老不死には最後に絶望が待っているからじゃ。考えてみい、美咲は不老不死じゃが周りはどうじゃ?不老不死はおるか?いないじゃろう。不老不死は死なんが周りのものは次々と死んでいくんじゃ。美咲はそれに耐えきれるかの?」




 周りが死んで自分だけが生き残る。それは、私が考えないようにしていた事だった。


 最初はほんとに考えていなかった。だけど街に来てスピリカさんと知り合いになった。スピリカさんと知り合いになったその日の夜、私は不気味な夢を見た。それは私の背後に幾重にも積み重なった人の山だったような気がする。




 その積み重なった中にスピリカさんを見つけると、一瞬にして人の山が燃えた。私はそれをただ呆然と見ていた気がする。なんでそんな夢を見たか今わかった。多分知らずのうちに心配だったんだろうね。でも、今はもう覚悟とゆうか決意を固めた。だって私は私なりに今の人生を楽しもうと思ってるんだもん。




「大丈夫だよ、リンネル。私はちゃんと決めてるからね」




「うむ、いい顔になったの。美咲は気づいていなかったかもしれんが、悲しそうな顔をしていたんじゃぞ」




 そうだったんだ。気づかないうちに顔に出ていたなんてちょっと恥ずかしいかな。




「ねぇ、リンネル。もしよかったらなんだけど私が今いる街に一緒に来ない?」




「街にかの?はて、またどうしてじゃ?」




「うん、それは私がリンネルともっと一緒にいたいからかな。リンネルと一緒にいると安心するから。理由なんてそんな感じだよ」




「ふむ、少し考えさせてくれんかのう?儂にも心の整理が必要だからのう」




「うん、わかった。私はもう寝るから、明日リンネルの言いたいタイミングで言ってね。それじゃ、おやすみ。リンネル」




「うむ、わかったのじゃ。おやすみじゃ、美咲」




 そうして私は街で買った野宿用のテントを広げてその中で寝た。

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