第7話

「ガルムね、4、5日前にある依頼でパーティーメンバーを一人亡くしてるの。それからずっとあそこでお酒を飲んでるのよ。それで、さっきの男の子はガルムのファンの子でね。昼間からお酒を飲んでるガルムを最初は心配して通ってたんだけど、いつまでも落ち込んでいるガルムを見たくなかったのね。一昨日ぐらいからガルムに腑抜けだなんだって言ってたのよ。さっきまではずっと無視してたんだけど今日は結構お酒がはいっているからカッとなってさっきみたいなことになったのよ」




「そうだったんですか。はい、これ書き終わりました」




 私は書き終えた書類をお姉さんに渡した。




「ありがとうございます。アマネ ミサキさんですね。それでは、冒険者初級にさせるかどうかを決めますので場所を移動します」




「冒険者になるのって今の書類を書いて終わったらなれるんじゃないんですか?」




「昔はそうだったんですけど、力量が無いとすぐに死んじゃうのが冒険者ですから。それで、昔は結構死んじゃったらしくて。今では戦闘試験をして力量が一定以上あるようであれば冒険者初級にしても大丈夫と判断します」




 なるほどね、そうゆう仕組みになってるのか。説明書に書いてあるのは古かったと。




「それでは戦闘演習場に移動しますので、一応荷物は持ってきてくださいね」




 私はお姉さんの案内で戦闘演習場に向かった。
















 戦闘演習場につくとそこにはマスターと呼ばれていたおじいさんが立っていた。




「マスターなぜここにいるんですか。お仕事をしていて下さいと言いましたよね」




「いいではないか。久しぶりの新人が入るかもしれんのじゃぞ。その相手をワシがやりたいんじゃ。それにガルムのせいで集中が切れたんじゃ。文句ならガルムに言えい」




 このおじいさん多分お偉いさんだよね。こんな自由で大丈夫なの?




「はぁ、マスター今すぐ戻ってお仕事の続きをしてきてください。彼女の戦闘相手はオリエステルに頼んでありますので、邪魔をしないでください」




 いつの間にか私の戦闘相手が決まっていた。お姉さん恐るべし、仕事の早さ。




「いやじゃ。相手は一歩譲ってオリエステルにやらせるとしても、ワシはここに残って戦闘を見るんじゃ」




 おじいさんが駄々をこねていると、向かい側の扉が開いた。




「あらあら、どうしてギルドマスターがここにいるのかしら〜?」




「オリエステル来てくれてありがとう。マスターが戦闘を見たいって駄々こねて仕事に戻らないのよ」




 マスターってギルドマスターだったの!ここのギルドのお偉いさんじゃん!




「あの、ギルドマスターがここにいていいんですか?お仕事とかが溜まったりして……」




「アマネさん気にしなくていいのよ。仕事が溜まってるのはマスターだけだから」




 隣にいるお姉さんにそんなことを言うと笑顔で返された。目は笑ってないけど。




「そうじゃ!溜まった書類をここに持ってきて、書類を片付けながら戦闘を見るとゆうのはどうじゃ!」




「どうじゃ、じゃありません!お部屋に戻って書類を片付けますよ。それじゃあ、オリエステルあとはお願いね。行きますよマスター」




 ギルドマスターが襟首引っ張られてる。てか、暴れてるせいで襟首が喉を閉めてるし。どんどん顔色が青くなってる。あ、お姉さんが気づいた。次は頭に持ち替えてるし。行っちゃった。


 このギルドで1番偉いのあのお姉さんみたいだね。




「それじゃあ、ギルドマスターとネルヴァが行ったことだし、やりましょうか〜。あら、そういえばまだ名前聞いてなかったわね。貴女名前は?」




 おっと、そうだった。今は冒険者になれるかが、かかってるんだった。




「はい、雨音 美咲っていいます。よろしくお願いします」




「美咲ね。わかったわ。それじゃあ、始めましょうか〜」




「はい、お願いします。それで、武器とかはどうするんですか?」




「そうね〜、美咲は剣は使えるかしら?」




「はい、使えますけど剣でやるんですか?」




「いいえ、違うわよ〜。剣術でもそうだけど、基本は体が大事じゃない。だから体術での試験よ」




 なぜに体術?体術って私のなかで殴って、蹴って、絞め技するぐらいなんだけど。




「そんな難しそうな顔しなくていいのよ。体術なんて殴ったり、蹴ったりだけだもの。簡単に言ったらよ」




 だよねー。そんな難しく考えなくていいよね。まあ達人とかのレベルだと難しい技とかやるんだろうけど。


 まあ、オリエステルさんがどれくらい強いのかだけど、私の体力がまず減らないから持久戦になったら間違いなく勝てる自信がある。


 でもこの世界は魔法があるから、体力を一時的に増やしたり、体を強化したりする魔法があってもおかしくないんだよね。




「それと、身体強化の魔法は禁止よ。魔法が使えなくなったときどう動くかも見ないといけないからね〜。魔法が使えるからって調子に乗る子がたまに居るからね〜


 」




 なるほど。でも私素で身体強化出来るし、これって反則?いえいえ、不老不死の時点で反則です。世界的にだけどね。




「それじゃあ、やるわよ〜。どれくらい力があるのか知りたいから、先に美咲から攻撃してきてちょうだい」




 わお、私が朝スピリカさんに絡んだ男にしたことと同じだ。


 まあ、あれは実験のためにわざと来させたから、全く同じとは言えないかな。


「わかりました。それじゃ行きますよ!」




 まずは普通に挑んでみて少しづつ体を強化する。


 オリエステルさんに近づいた。


 まずは蹴り。




「はっ!」




 助走をつけて蹴るとオリエステルさんは、蹴りを腕でガードしたけどはじき飛ばされていた。


 他人ごとみたいに言ってるけど、まず私何も強化してないからね!


 まさか強化なしでここまでとは確実に化け物だね。でも、ファンタジー要素少ないけど一応ファンタジーだから探せばいそうかな。




「わ〜ビックリした〜。結構美咲って見た目によらずすごいのね。ほんとに身体強化の魔法使ってないのよね?」




「はい、使ってませんよ。これは昔からなんです。だから私は住んでいた村を出て冒険者になろうと思ったんです」




 まあ、嘘だけどね。村とか出てないし。てか、元から住んでないし。




「そうだったの。分かったわ。もう大丈夫よ。今ので試験は合格にしてあげるわ〜」




「え?今のだけですか?」




「ええ、そうよ。だってこの試験の目的は、魔法を使わず私とどれだけ戦えるかをみて、冒険者にするかしないかを決めるためだもの。でも、美咲は今の攻撃だけで合格よ。だってこのまま続けてたら私負けてたもの」




 えっとそれはつまり、どっちみち合格ってことなのかな?


 じゃあこれで最初の目的だった冒険者登録が終わりなの?


 うーん、嬉しいけどあっけなさ過ぎてあんまり喜べないかも。




「さて、美咲。受付まで行ってネルヴァに冒険者カードか冒険者リングを貰ったらはれて美咲も冒険者の仲間入りよ〜。おめでとう」




「はい、ありがとうございます。それじゃ私、受付に行ってきます」




「ええ、行ってらっしゃい」




 さて、それじゃ受付に行きますか。
















「行ったかしらね〜。はぁ、それにしても咄嗟に腕に防御魔法かけてよかったわ〜。防御魔法をかけてもズキズキするんだから、防御魔法なしだと腕の骨が粉々だったかもしれないわね〜。美咲が力の使い方を間違わなければ、この世界は平和ね〜」




 オリエステルは美咲が向かった方を見ながらそんなことを呟いた。
















 私は戦闘演習場を出てカウンターに向かうと、ネルヴァさんが私が来た時と同じように座って書類をまとめていた。




「ネルヴァさん、どうも」




「あら、美咲さん。試験の方はどうでした?」




「はい、合格を貰いました」




「あらそう。それなら、これからは冒険者の仲間入りね。おめでとう美咲さん。これからよろしくお願いしますね。それと、冒険者カードとリングはどっちがいいかしら?」




「ありがとうございます。えーと、じゃあリングの方でお願いします」




「リングね、分かったわ。それじゃ、指を出してくれるかしら?」




「はい。リングって時間かかるんですか?」




「いいえ、リングは自動調節の魔法陣が組み込んであるからすぐに渡せるわよ」




 やったー!ここにきて、やっと私のところにファンタジーっぽいものが手に入った!


 いや、無限のポーチがあったんだった。


 そして、差し出した指にネルヴァさんがリングを嵌めると自動的に指にフィットした。




「これで、美咲さんは正式にギルドの冒険者よ。もう一度、おめでとう美咲さん。それと、指輪は見えなくすることも出来るから便利よ」




 もうなんでもありじゃんこのリング。


 まあ、こうして私は最初の目的の冒険者になった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る