第4話

 ふー、美味しかった。でも、ご飯を食べて満足感はあるのに満腹感がないって、結構不思議な感じがする。これもまた新鮮で面白いかも。




 そういえば、リュックから出したスライムだけど料理を見る?と興味があるみたいで、机の上でプルプル揺れてた。


 私も興味半分でスライムに料理(メニューはお肉を焼いたものと、クラムチャウダーとパン)特にお肉料理をあげると、すごい喜んで、またプルプルと揺れてて、それを見てるとめちゃくちゃ癒される。




 そうして、料理を食べ終えた私はスピリカちゃんが置いていったベルを押して少し待ってるところです。


 あと少ししたら、スピリカちゃんが来るだろうけど。




 そんなことを言ってたら足音が聞こえた。多分スピリカちゃんの足音かな。


 こう見えて向上心があるから、ご飯を食べてる間に色々不老不死になった体を調べてたんだー。


 まあ、そのおかげで色々分かったけどね。


 おっと、扉の前でとまった。そして、ノックの音。スピリカちゃんが来たようだ。




「美咲お姉さん、スピリカです。食器を片付けに来ました」




「はいはーい、今開けるねー」




 扉を開けると、可愛い笑顔でスピリカちゃんが立っていた。




「美咲お姉さん、失礼しますね」




「うん、どうぞどうぞ。ああ、それとご飯とても美味しかったよ。特にクラムチャウダーが美味しかったよ」




 私がクラムチャウダーを褒めるとスピリカちゃんは多分会ってから一番の笑顔で「クラムチャウダーはわたしの一番の得意料理なんです」と誇らしげに言った。




「スピリカちゃんはすごいね。ホテルのお手伝いをして、クラムチャウダーまで作れて。私なんて全然料理できないよ」




「そうなんですか?料理を作るのは簡単ですよ?それなら美咲お姉さんが暇な時にでも教えましょうか?」




 うぅ、なんていい子なんだ。もうお姉さん感動した。




「うん、お願いしていいかな。それにしてもスピリカちゃんはお手伝いして偉いね」




「お手伝いじゃないですよ。ちゃんとしたお仕事です。それも正社員ですよ」




 うん?えっと、確かこの世界の成人は15歳からで、正社員になるには成人にならないとなれないって説明書に書いてあったような……。


 てゆうか、説明書ってこんなに便利だったけ?ところどころ抜けてるけど。




「あれ?スピリカちゃんは13歳だから正社員にはなれないような気がするんだけど?」




「そうですね、本当は成人してからですね。でも、わたしハーフエルフなので108年前に成人してますよ」




 Why!えっと、今なんて言ったのかな?もう成人してるのスピリカちゃん!それも98年前に!じゃあスピリカ【ちゃん】じゃなくて【さん】になるわけか。会ったばっかなのに歳上の人になれなれしくしちゃった、どうしよう……。




「……すいません、なんか色々なれなれしくしちゃって……」




「ふふふ……。気にしなくていいですよ、美咲さん。わたしこのホテルに初めて来た人にはいつもこうやって驚かせているんですよ。だから、どっちかって言ったら私が謝らないといけませんね。驚かせてすいません」




 まさかの、スピリカさんの悪ふざけでした。まぁ、それでもなれなれしくしちゃったのは本当だし、これからは人を見た目で判断しちゃダメだね。気おつけよう。




「それでは、わたしはほかの仕事があるので失礼しますね」




 そう言うと、スピリカさんは食器を持って出ていった。


 さて、今の時刻は午後7時。今日は精神的に疲れたし、お風呂入って寝よーっと。着替えはこれしかないけど、説明書には汚れないから大丈夫って書いてたけどちょっと抵抗感はあるけど、仕方ない我慢しよう。そういえばスライムって、お風呂入れても大丈夫かな?流されたりしない?まあいっか。さーて、お風呂お風呂。
















 はー、スッキリした。まさかお風呂が露天風呂だったとは驚いた。


 異世界に来てまで露天風呂に入るとは思わなかったよ。それに、スライムなんか色が青から透明に近い白になっちゃって驚いたよ。


 今日は驚き過ぎたから、もう寝よう。スライムは枕にしようかな。大丈夫!スライムは優しいからね、枕にしても怒らないよ。


 それじゃあおやすみ、スライム。
















 うーん、もう朝かー。起きたくない。スライム枕が素晴らしすぎて起きたくない。でも、起きねば。


 今日は冒険者ギルドに行って、登録しないといけないんだから、こんな所で怠けてたらいかんのじゃー。よし、起きた。


確か食堂って9時から開いてるってスピリカさんが言ってたよね。


今の時間はもうすぐ9時だから、今から行けばいいかな。


食べたらすぐにギルドに行きたいから、リュックの中にスライムを入れて行こう。


うん、準備も終わったし食堂に行こうっと。
















食堂に到着したけど、結構人いるなー。座れるところあるかなー?


お、開いてるところ見っけ。近くにスピリカさんもいる


あっ、こっちに気がついた。手振ってみようかな。いや、行けばいいのか、どっちみちあそこの席に座るんだし。




「おはようございます、美咲さん。朝は何にしますか?」




席に座るとスピリカさんが近くに来た。




「おはようございます。スピリカさん。うーん、そうですね……。スピリカさんのオススメでお願いします」




スピリカさんにオススメを頼むと、スピリカさんは厨房に向かっていった。スピリカさんが、朝食を持ってくるのを待っている間、不老不死になった体の感覚を再確認しよう。昨日は感覚を強化してみた。まずはそれのおさらい。


まず聴覚から。聴覚は耳が良くなる他に、普通は聞こえないような声が聞くことが出来る。例えば、昨日はスライムの声が聞こえた。今もスライムが食事をねだってる。




《ご主人様、ご飯下さい!お腹が空きました!》




うん、やっぱりご主人様って言われるのは慣れないなあ。昨日初めて聴覚を強化して声を聞いた時はビックリした。


まさか、スライムからご主人様って呼ばれているとは思わなかったからね。




「ごめんね、今は上げられないから少し待ってね」




私はスライムに小声でそう言うと、




《分かりました、ご飯は少しまちますね。だから、お肉をお願いしますね、ご主人様》




うん、物分りのいい子は私好きです。


おっと、スピリカさんが朝食を持って来た。




「お待たせしました、美咲さん。わたしのオススメの朝食セットです。わたしは他の方の注文を取っているので食べ終えたら食器はそのままでいいので、お会計に行って下さいね。レジはあっちにあるので。それでは、失礼しますね」




スピリカさんは朝食を置いてそう言うと、他の人の注文を取りに行った。


スピリカさんオススメの朝食セット。うん、パンとサラダはいいんだよ。いいんだけど、クラムチャウダーって。視覚を強化して近くの人の朝食を見ると、パンとサラダとあれはコンスープかな。他の人の朝食も見てみるとクラムチャウダーはない。このクラムチャウダーは私だけみたいです。




朝からクラムチャウダーとはこれいかに……。まあ、いいんだけど。


さて、時間はまだあるけど暖かいうちに食べますか。


それでは、いただきます。
















はあ美味しかった、ごちそうさまでした。確か、食器はこのままでいいんだよね。


さーて、お会計してギルドに行こう。レジはあっちだったよね。


少し並んでるけどいいかな。どうせすぐに順番がまわってくるでしょ。
















全然進まない。先頭は何やってんだかね。




「いい加減にしてください!!」




はて、今の声はスピリカさんの声だよね。どうしたんだろう?




「いい加減にしてください。お会計は済みましたよね。早く列からどいて下さい。他のお客様に迷惑です」




「だからよー。お前さんが俺たちと一緒に来ればいいだけの話じゃねえかよ。簡単な話だろ」




「今はお仕事中です!邪魔しないでください」




スピリカさんが絡まれてる!?助けなくちゃ!えっと、とりあえずあの絡んでる奴を倒せばいいかな。




「だから来いって言ってんだろうが!!」




やばい実力行使に出た!?どうしよう!?そうだ、スライムを投げればスピリカさんからは手を離すはず。スライムをリュックから出して、大きく振りかぶって投げた。




「うお!?なんだこりゃ!?」




よし、とりあえず当たった。今のうちにスピリカさんを助けよう!

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