11章16節

 アイラシェールは、胸の前で手を組み、祈りを捧げていた。

 心を満たすのは恐怖。心を満たすのは期待。

 恐い。心の半分が叫ぶ。

 会いたい。心のもう半分が叫ぶ。

 もうじき現れる己の運命の前におののき、アイラシェールはきつく目を閉じた。

 カイルワーンは、扉の前で立ちすくんでいた。

 この扉の向こうにアイラシェールがいる。この二年半、求め続け、追いかけ続けた彼女がいる。

 間に合っただろうか。もう彼女は『拝謁の露台』から身を投げてしまっただろうか。

 彼女は僕のことを見て、どう思うだろうか。驚くだろうか。喜んでくれるだろうか。それとも罵るだろうか。裏切り者となじるだろうか。

 判らない。それでも。

 この扉を開ける。開けて、向かい合うしかない。

 己の、この運命と。

 逃げることは、できない。




 そして軋む音をたてて、扉はいっぱいに開かれた――。

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