第40話 守る剣

3体の小さな飛竜に囲まれる、二人の研究員。


ドラゴンが周囲を取り巻くさま。

まるで陣を敷いているよう。


研究員達の体躯は、ケージに閉じ込められ鬱憤が溜まった魔物の前には非力すぎる。


飛竜の激しい羽ばたき。

風圧に、彼らはとっさに目をつぶった。



飛竜達が、それを見逃すはずがない。


3対の翼が、空を切った。



──────瞬間、


「危なっ…」


間の抜けた声。

飛竜と研究員たちの合間に話って入った。


続いて、何かをはじいて響く、石の音。


「あ、あの、大丈夫ですか…?」


また、柔らかい言葉。


研究員二人は、そっと目を開けた。


空色の髪がなびく背中。

石化した長剣を携えて、二人を守る聖戦士。

フェルナンド=フランシスカ────。


戦士の向こうに隔てられた3体の飛竜達。

新手の出現に、明らかに狼狽している。

この圧の弱そうな戦士を、恐れている。


「あの…研究員さん」

フェルナンドが、呼びかけた。


「は、はい…何でしょう」

「…あの子達、私がちゃんと捕まえますから…

そこで動かないでだけ、いてもらえたりします…?」

「えっ?あ、ああ…はい」


普通に会話しだしたこの戦士…。

「あっ、ありがとうございます…!

ちょっと待っててくださいね」

研究員の返事を聞いて、ふわっと笑った。


飛竜はというと、なぜかこの男を攻めあぐねている様子。

ただ、隙だらけに見えて実はそうではないということは、戦闘に疎い研究員達にも何となく感じ取れた。



フェルナンドが、口火を切った。


「こっちだ!!来い!!」


研究室一杯に通る声。

見事に挑発に乗る飛竜。


3体一斉に、激しい風圧をたて、向かってくる。


フェルナンドは、石化した剣を手元で回す。

使うのは、剣の刃でなく、腹。


踏み込んだ。


まず、先頭の1体。


勢いを乗せて斬り上げる。

刀身を飛竜の顎に当て、ひねって床に払い落とす。


さらに、並列して来る2体。


左側の1体を腹部側から逆手にすくい上げ、そのまま回し斬って右側の1体にぶつける。


仕上げだ。

フェルナンドは剣を両手で振りかぶる。

先に床に打ち付けられてのびている1体の上に、手元の2体をはたき込んだ。



研究室に、静寂が訪れる。


挑発からその間、わずか数秒。

ものの、一瞬で─────。




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