第39話 元に戻せる

「元に戻す…?石化した剣を?!」


フェルナンドは思わず飛び退いた。


「そんなこと…生き物じゃないから、蘇生かからないよ?

ど、どうやって…」


「フェリィが持ってきてくれたまだらの花、あるでしょ?

そこから抽出した魔力を凝縮して、石化解除効果のある薬剤を作れたんだ」


アメリアが、茶色の薬瓶を取り出す。


「まだ風化しにくい金属質のものしか石化解除できないから、実用にはこれから精度を上げていく必要があるけどね」


彼は、優しく笑った。


「花も1輪しかないから、薬剤はホントに1回分しか手元にないけど───

功労者のフェリィにあげるべきだって皆言うし、オレもそう思う」


…すごい。

「もうこの剣は、…使えないと、思ってた…」

声が湿り、震える。


「泣くのか?

ったくお前は…相当ショックだったんだな」

バティスタがフェルナンドの頭をぐしゃぐしゃかき回した。

「いつまでたっても甘いんだから」


こういうとき、バティスタは無条件で甘えさせてくれる…。

隆々とした腕が、フェルナンドを柔らかく包み込んだ。

アメリアも、それをそっと見守ってくれる。



静かな、間。


研究室には、ケージに飼われている小型の飛竜達の生活音だけが残る。



─────その静寂は、


「あっ…

ダメ!!」


瞬間、破られた。

研究員の声によって。



蝶番がぶつかる音。

翼の羽ばたきがいくつも重なって────。


フェルナンドは、バティスタの腕をほどいて振り返った。


小さな飛竜が3体、ケージを抜け出して飛び回っている…!


小型とはいえ、ドラゴン。

2名の研究員など、彼らにとっては獲物に等しかった。

牙をむいて、囲っていく。


その殺気。

紛れもなく、竜のそれ─────。



フェルナンドは、石化した剣を腰から抜いた。


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