第14話 池ポチャ

完全に、しくじった。


これは誰が悪いわけでもない。

フェルナンドは何とか起点を作り、ジェスターが補助した。

モナモナは砲台になり、クラリッサは巨大な氷柱の魔法を成功させた。


これ以上、何ができた…?


あの魔法でも肉を穿てないのなら、もう4人にケルベロスの体を貫く策はない。



魔犬は、残った3本の脚で空を蹴り、地表の人間達に狙いを定める。

ターゲットは…フェルナンド。


まずい、逃げなければ。

しかし、剣が─────。


フェルナンドの長剣は、ケルベロスの足を地面にはりつけるのに使ってしまった。

そして、それがどうやら抜けなくなったっぽい、ということを彼は察していた。


この剣は手放したくない。

というかそれ以前に…剣を失った自分なんて、戦いにおいてはほぼ無価値だ。


フェルナンドは、もう一度、剣を抜こうと試みる。

だが、やはり一切手応えがない。


ジェスターが、フェルナンドの危機を察して駆け寄ってくる。


瞬間、フェルナンドは考えた。

今ここで自分とジェスターがやられたら、決して逃げ足が速くないクラリッサとモナモナは100パーセント助からない。

何より、軽業師ジェスターは、蘇生技を持つ。

彼には生きていてもらわなければ。


「大丈夫だ、ジェスター!

クラリッサとモナモナを頼みたい!」


ジェスターは、察したようだった。

彼は向きを変え、退いたクラリッサとモナモナがいる、泉の脇へ飛んでいく。



フェルナンドは、空を仰ぎ見た。


ケルベロスが、落下の勢いで、フェルナンドの体を踏みつける。

次いで、前脚で彼を蹴って弾き飛ばした。


地面ごとえぐられ、ケルベロスの足が刺さった剣を抱いて吹っ飛ぶフェルナンド。


彼の体は─────運悪く、赤い泉に落ちる。

粘度の高い水に、ずぶずぶと飲み込まれていった。

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