闇の底 其の参
そのあとは麓のコンビニエンスストアで少し休憩し、真斗にバイクで送ってもらい帰宅した。
時刻はすでに午前一時を過ぎている。予定よりもだいぶ遅くなってしまった。
「ちょっと出てくる」と言って出てきた手前、なんとなく後ろめたさを感じ、家主に気づかれないように玄関の戸をこれでもかというほどゆっくりと開けて入った。
戸を閉め切ると、シンと静まり返る闇が僕を迎えた。
軒先に設置された常夜灯の明かりが、すり硝子越しに玄関をぼんやりと照らしている。
僕は息を飲んだ。本当は、なるべく明かりはつけたくなかったが、暗闇に対する恐怖心が残っていて、たまらず電気のスイッチを押した。
「遅い」
「うわぁああっ!!?」
僕はその場で腰を抜かした。
「……っるせぇな。今何時だと思ってる」
そこには、家主である叔父がものすごく不機嫌そうに腕を組んで立っていた。
起きていることは分かっていたが、まさか玄関にいるとは思わなかった。
心臓が早鐘を打つのを必死になだめる。
「た、ただいま。叔父さん」
叔父は深いため息をつくと、呆れを含んだ声で「こんな時間までどこほっつき歩いてたんだ?」と聞いてきた。
普段あまり干渉してこない叔父がこんな風に聞いてくるのはめずらしい。一応、心配してくれているのだろうか。
「ちょっと友達の家に」
はぐらかすように笑ってみせる。
「ちょっと山奥の廃墟に」などとは到底言えず、僕はそそくさと叔父のわきをすり抜けて部屋へ向かおうとした。
「で、本当はどこに行ってたんだ?」
その場で硬直した。恐る恐る振り返ると、叔父が僕の靴をそろえながら、「靴が泥だらけだな。雨も降っていないのに、友達の家はぬかるんだ場所にあるのか?」
「…………」
叔父は軽く笑うと、無言で立ち尽くしている僕の横を通って居間へと向かう。
こうなったら逃げられないことは分かっているので、僕はしぶしぶ叔父の後に続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます