テンプレ56 「再転移」

 イスズはジョニー号と合流すると、フォーランが転移させた場所まで戻る。


「おい。戻るときは前はどうしていたんだ?」


 イスズはクロネに向かって聞く。

 クロネはコクリと頷き、フォーランの魔法陣があった場所に触れる。


「……転移した者が触れると相手に分かる。これを合図に再転位してくれる」


 しかし、再び転移の魔法陣が光ることはなかった。


「にゃはは。だから、ボクちゃんたちの仲間が倒したから、ここは大人しく森を抜けて行こうよ? ね?」


 反応のない魔法陣、ルーの説明。

 イスズは腕を組んで考え込み、ぶつぶつと独り言を呟く。


「森の木を全部引っこ抜いてから地ならしすれば、もしくはアリを酷使して空気の壁で道を。クロネの魔法でトンネルでも……」


 と仲間たちからすると不穏としか思えない台詞が呪詛のように流れ出る。


 アリとクロネは冷や汗を浮かべる中、ヤマトだけは平然としていた。

 

「絶対一番最初のはヤマトにやらせる予定だよな!?」


 アリはクロネに耳打ちし、クロネもコクコクと頷いた。


「……勘が悪い方が幸せなのかも」


 全員が思い思いのことを考えていると、急に魔法陣が光り出した。


「ええっ! ウソ!!」


 ルーがわざとらしく驚いてみせる。


 そして、その魔法陣からは、


「呼ばれて飛び出て、フェデックくんです!!」


 金髪の美少年がピースサインをしながら現れた。


「あれ? イスズさん、また女の子増えてますね。ハーレムでも目指していましたっけ?」


 ガシッとフェデックの頭を掴むと、そのまま持ち上げる。


「好きでこんな状況なわけじゃねぇんだよ」


「まぁまぁ、いいじゃないですか華があって。それより、この転移の魔法陣ですけど、早くしないと村長の魔力が尽きてしまいますよ。せっかくボクが守ったんですから、ちゃんと使いましょ」


「ぐっ!」


 イスズは仕方なくフェデックを放すと全員でジョニー号へ乗り、魔物の村テラスへと戻った。


 アリとクロネが心の中でフェデックに感謝したのは言うまでもないことだった。



「いや~、まさかここからの案内になるとはね。エスパダはここから南西に500キロくらいで、リミットくんのいる都市に着くよ~。でもさ、今日はもう遅いしここで1泊してからでいいんじゃない?」


 時刻はまだ夕方であったが、普通に馬や徒歩での移動ならば安全の為、移動は明日へするのだが、ジョニー号を持つイスズには関係のない話だった。


「お前が時間を稼ぎたいのは分かった。確か勇者は数日動けないとかって話だったしな」


「あれれ~? そんなこと言ったっけ? でもさ、結局、今日は動けないんじゃないかな」


 ルーは小首を傾げおどけて見せる。


「こういうのが俺らの本当の姿だよな。なぁ! ジョニー号ッ!!」


 イスズはジョニー号と共に軽く100キロは走行し、ルーを驚かせた。

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