テンプレ36 「VS鬼人美少女」
クロネは弓を番えた鬼人を相手にしつつ、おっとりとした人魚にも牽制を入れていた。
人魚は鬼人美少女のヒトミに身体能力を上げる魔法をかける。
それを見たクロネは即座に、「ヒートアップ付与」と声を出す。
「そちらも身体強化の付与魔法かっ!」
魔法の効果もあり、間断なく矢が発射される中、クロネは優々と矢を焼き尽くし歯牙にもかけない。
「今日の私は調子が良い! ここまでの速射は初だ。これならいつまでも耐えられんだろうっ!!」
凄まじい錬度の攻撃ではあるが、クロネも負けておらず、一瞬でも隙が生まれれば火球を鬼人美少女へと打ち出す。
体が包まれそうなほど大きな火球に、避けながら矢を放つ。
「……避けた? 武器は燃える?」
考察するように独り言を呟きながら、さらに火球を放つ。
そんな攻防がしばらく続く中、唐突にクロネは軽くため息をついた。
「……話にならない。その装備にも関わらず弱すぎ」
挑発的なセリフを述べながら、攻撃の手を緩めず、ひたすら火球を放つ。
「ハァ、ハァ、戯言をっ!!」
常に動き回っていた鬼人少女のヒトミは息が上がり始め、額には汗が光る。
それを合図と言わんばかりにクロネは攻撃を止めた。
「ッ!? なんのつもりだ!!」
ヒトミが声をあげると、グンッとまるで自分の体ではないような虚脱感に襲われた。
片膝をついて耐えていられたのも数秒で、すぐに地面へと倒れ込む。
ハァハァと息は荒く、目の焦点も定まっていない。
「な、なぜ……」
その質問にクロネは簡潔に答えた。
「……活動限界」
「そんなバカな。私はいつもならまだまだ戦えている」
「……ヒートアップ付与。火球の熱と回避運動」
そこで、鬼人少女は自分が重大な勘違いをしていたことに気づいた。
「も、もしかして、ヒートアップで身体能力を向上させたのは、私の方!?」
攻撃魔法なら無効化されるが、仲間からの補助も想定しているため付与魔法や回復魔法までは無効化されない装備になっていた。
クロネはその穴をつき、相手にあえて身体能力あげる魔法を使い、暑さの中動き回らせることでオーバーワーク状態にさせたのだった。
「……魔法を無効化する相手への勝ち方なんて100は思いつく。今は一番魔力を使わない勝ち方。慢心が敗因」
そう告げられた鬼人美少女のヒトミは敗北を認めると同時に意識を手放した。
「ふむ。クロネも問題なく勝ったな。あとはアリ、お前のノルマだけだな」
イスズはアリを正面に構えながら、人魚の少女を見据えた。
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