テンプレ37 「VS人魚美少女」
「あとはお前の相手だけだ。どうにかして来い!」
アリを人魚の美少女ルイに向かって投げつける。任せるとは言うものの、その速度は物理攻撃無効があっても壁にめり込むのは確実という程。
完全にこれで決めに来ていた。
「うおぉぉぉぉ!!」
バシンッ!!
アリは空気の壁に弾かれ、人魚美少女に当たることはなかった。
イスズは不機嫌な表情で、弾かれたアリを拾いあげる
「てめー、どういうつもりだ?」
ドスの聞いた声でアリに語りかけると、
「いやいや、お前こそどういうつもりだよ! オレに可愛い女の子を殴れる訳ないだろッ!!」
イスズはアリを握るとルイに向かって思いっきり振るったが、再びアリが作り出す空気の壁に阻まれる。
「おいっ!」
イスズの声は聞くものを恐怖のどん底に叩き落すような冷酷なものだったが、アリも負けじに声を張り上げる。
「ッ!! これだけは絶対にゆずらねぇぞ!!」
強い覚悟を持つアリの瞳を見つめたイスズは、舌打ちをする。
「なら、お前のやり方でなんとかしろよ。まぁ、ヤマトの邪魔にならなけりゃいいだけだ。殴らなくてもやりようはあるだろ」
「おうよっ!!」
アリはその言葉に明るい調子で応える。
アリはイスズに触れつつ、人間の形態を取る。
「ふぅ、戦うにはこっちの姿の方が都合がいいからな。イスズちょっと我慢してくれよ」
アリはクール系イケメンな姿で、イスズという荒々しいトラック乗りのおっさんの手を握る。
「さてと、マーメイドちゃん。オレが優しく無力化してやるよ」
アリはイスズと手を繋ぎながら決め顔で言った。
「やばいよ。これ~」
その言葉を受けた人魚美少女のルイはまるで恋する乙女のような熱い視線をアリへと向けていた。
「え~、ちょっと、そんな~」
ルイはアリの姿をその目に焼き付けるようにガン見する。
「お、おい、イスズ。これってもしかして、オレに惚れちゃった的な展開じゃ」
アリは興奮のあまり、イスズにぐいっと近づいて質問する。
「キャッ!」
赤面した人魚美少女から小さな悲鳴が漏れる。
「いや、お前にそんな未来が訪れる訳ないだろ。どう考えても勘違いだ」
「勘違いかはともかく、そういう未来くらいあってもいいだろ!!」
そんな二人のやりとりをルイは眺め、「尊い」と呟く。
「ハァハァ、そんな、殿方二人のそんな姿見せられたら~、も、もうムリ~。あたしには戦えない~」
「って、あれ? マーメイドちゃんがいないんだが……」
イスズとアリがやり合っている間に、人魚美少女はよろよろと後退し、扉の前まで行くと、魔法の力か人魚としての特性で室外にのみ響き渡る大声を張り上げた。
「誰か助けて~~~~~~ッ!!!!!!!!」
イスズとアリは顔を見合わせ、「「ハァッ!?」」と同時に叫んだ。
※
数秒後なんとか冷静を取り戻したイスズは、深いため息をついてから、誰に言うでもなく叫んだ。
「おい! 諦めてんじゃねぇ!!」
驚きから立ち直ったとたん、苛立ちが勝り、地面に転がる石片に八つ当たりで蹴り飛ばす。石片は壁に当たり反射し、意図しない方向へ飛んでいく。
「クソッ! チクショー。やられたな。よくよく考えれば助けを呼ぶのは結構いい手かもしれん。強くはなくても大勢詰め掛ければ多勢に無勢、さらにクロネの意向で手加減しながら戦わないといけない訳だ」
「う~ん、確かにキツイかもしれねぇな。でも、オレは野郎なら容赦なく攻撃するし、他はイスズとクロネでなんとかなるんじゃないか?」
アリの楽観的な意見に、「どうだかな?」と渋面で呟いてみせた。
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