テンプレ35 「VS獣人美少女」

 まず最初に飛び出したのは獣人の少女、アイだった。

 目にも止まらぬ速さでイスズの背後を取ると、手に持つショートソードで斬りつける。


 ガキッ!


 イスズは視線を向けることなく、アリを剣の軌道上に置き、防御した。


「にゃあ、同じ獣人ならこれくらい防いで当然ねぇ」


「同じ獣人?」


 そこでイスズは自身が未だにネコミミをつけているのを思い出した。


「ああ、忘れていたな」


 イスズはネコミミを取ると木箱へと向かって投げた。

 カランと音をたててネコミミは木箱の中へと入る。


「お前、人間だったのぉ!」


 アイは驚きの声を上げたがすぐに不敵な笑みを浮かべる。


「人間ならこのスピードは無理だよねぇ?」


 パキッ。


 石造りの床を割る勢いで踏み込んだ獣人少女は一切見えなくなった。

 タッ! という地面を蹴る音が時おり聞こえはするが一切姿を視認することは叶わず、イスズは右へ左へと顔を動かしていた。


「すごい速さだな。こんな戦いよりスポーツをした方がよっぽど有益だと思うんだが」


 イスズは腕組みし勝手に納得したようにウンウンと頷く。


「野球なんていいよな。盗塁王になれるぞ」


 その刹那。イスズの左脇あたりに姿を現した獣人少女は力の限りショートソードを突き立てたはずだった。


「なっ!? 避けた!!」


 イスズは寸でのところで避けており、アイの動揺している隙をついて頭を掴んだ。


「毎日毎日何十キロものスピードで走るトラックを運転してるんだ。お前くらいのスピードを見切るくらい、道に飛び出してきた猫を避けるより簡単だッ!!」


 イスズは掴む手にさらに力を込め、言葉を続ける。


「お前に1つ言いたいことがある。お前、攻撃が効かない装備だからって油断してるだろ」


 事実図星だったアイはビクッと肩を震わせる。


「図星か。そんなお前に、俺のいた世界の標語を送ろう」


 イスズは少女ごと腕を振り上げ叫んだ。


「油断一秒怪我一生だ! バカヤローッ!!」


 腕を思いっきり振り下ろすと獣人少女アイの体は石造りの床をぶち破りめり込む。

 体全てが床へとめり込み、まるで生首のように顔だけは部屋の中に残されていた。


「なぁ~っ!! 服の効果で痛みはないけど、動けないよぉ!!」


 イスズは涙を浮かべる獣人少女を無視し、クロネの状況を確認する。

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