テンプレ34 「イスズ一行VS魔王の側近」
イスズの目の前には3人の美少女が壁へと叩きつけられた状態で並んでいた。
右から、ネコミミを生やした獣人の美少女で、豹のように黒の斑点が見える。快活そうな顔つきにビキニのような服装から覗く肌もスポーツ少女を思わせるスレンダーなものだった。
真ん中は、小さな角を生えた鬼人。黒髪ストレート。日本を思わせる和装をしているが、へそは出ているし、裾の丈も短く生足がほとんど全て見えている。吊り上った目元や口調からキツイ性格を連想させる女教師タイプの美少女だ。
一番左はおっとりとした顔つきで、ピンク色の髪をポニーテールにしている。一見人間のように見えるが、その足には魚の鱗が幾重にも存在し、足を閉じた様は人魚そのものだった。また服装も貝殻の胸当てにスリットが入ったヒラヒラとして下が透けそうなほど薄いスカートだった。
「いててっ! いきなりヒドイなぁ。もぉ!!」
獣人の少女がケガひとつなく、壁から抜け出す。
「無粋な上、野蛮だな」
「ふえぇ~。びっくりした~」
残りの2人も無傷で立ちはだかる。
「おいおい、無傷とかありえねぇだろ」
狼狽するアリをよそに、その様子を見ていたクロネはフードの下、露骨に顔をしかめた。
「……魔法が付与された服」
「ああ、さっきの研究成果ってやつか。アリ、お前効果がわかるような口ぶりだったよな?」
「お、おおっ! ちょっと待ってろ。むむむっ」
アリがその目で効果を見ると美少女たちの名前と付与されている魔法効果が顕わになる。
ネコミミ獣人『アイ』付与効果:速度アップ。物理攻撃無効。攻撃魔法無効。
黒髪鬼人『ヒトミ』付与効果:攻撃力アップ。物理攻撃無効。攻撃魔法無効。
おっとり人魚『ルイ』付与効果:魔力アップ。物理攻撃無効。攻撃魔法無効。
「って全員に物理も魔法も効かねぇじゃねぇかッ!!」
しかし、アリの言葉を聞いてもイスズとクロネは動揺の色すら見せなかった。
「ふん。そうか。じゃあ、女とか関係なく思いっきりぶん殴れるわけだ」
「……問題なし」
「お前ら本気で言ってんの?」
呆れたようなアリに、熱烈な視線を送る者がいた。
「あの~。杖から声が聞こえるんですけど~。もしかして魔杖アリエイトです?」
人魚の美少女、ルイが顎に指を当てて、可愛らしく小首を傾げる。
「そうだが、それがどうした?」
「ああ、やっぱり!! テンペスト様が欲しがってた子ね~。えっと、確か~、持つ者が望む魔法を使える伝説の杖よね~」
「お前、そんな能力があるのか?」
「いや、オレも初耳なんだけど……」
アリは困ったようにイスズと顔を見合わせた。
「おい。変態人魚。その情報ガセだぞ。裏はとったのか?」
「へ、変態!?」
おっとりとした人魚は流石に怒ったのか、頬を膨らませる。
「変態じゃないです~。それにテンペスト様が言っていたから本当ですもん~」
「おい。変態。そのあざとい仕草は止めろ! 確かにあの魔王は喜びそうだが、俺らには意味ないぞ」
「あざとくない~~」
イスズとルイは相当相性が悪いのかいつまで経っても会話は進まず、面倒臭くなったイスズは強引に話を打ち切った。
「もういい!! とにかく、ノルマは1人1体だ。いいなッ!」
「えっ!? オレも数に入ってんの!? 杖なのにッ!?」
イスズ一行対魔王側近の戦いの火蓋が切って落とされた。
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