テンプレ33 「魔王ハーレム」
「さて、開けるとするか」
低い声と共にペタペタとした足音が近づく。
天板へと手がかけられ、ゆっくりと光が木箱の中へ差し込み始めた瞬間、イスズは動いた。
「どっせい!!」
天板を押しのけながら、拳を突き上げた。
勢い良く飛び上がった天板とイスズの拳は魔王へと襲い掛かる。
グニャ!
しかし、魔王へと届くかというところで、柔らかく湿った膜によって防がれる。
「むぅ!」
イスズはその独特な感触に眉根を寄せる。
「自動で防御する水の膜って感じか」
初撃を防がれ、その理由を推察する。
そして、それを行った人物にガンを飛ばしながら、姿を確認した。
「海坊主だッ!!」
珍しく驚きの声を上げるイスズの目の前には、上半身は一糸まとわぬ姿で隆々とした筋肉を余すことなく見せ付けている。下半身にはグリーンのコンバットパンツを履いており、傭兵を思わせる。
しかし、何よりイスズが印象的だったのは、その頭部。1本の毛もなく、光が反射するほどの滑らかさを誇る、いわゆるスキンヘッドだった。そして、無骨な相貌に似合ったサングラスをかけ、
「よく我が海坊主だとわかったな」
魔王は自身の種族を明かし、またそれを見破った男を油断なく見つめる。
「お前、その姿で何言ってんだ。誰でもわかるだろ。……もしかして海坊主を知らないのか? 転生前は学生か?」
イスズの意図するところがわからず、魔王は首をひねる。
「確かに前世は高校生だったが。それがどうした」
「いや、いい。気にするな。少しジェネレーションギャップに打ちのめされただけだ」
そんなことをイスズが話していると、魔王の背後から数名の女性が声をかける。
「ねぇ、テンペスト様。もしかして敵ですか?」
「どう見ても敵だろう! テンペスト様をお守りするぞ!!」
「あ、ちょっ、ちょっとみんな待ってよ。あたしも~」
声と共に姿を現したのは三者三様の美少女たちであった。
手には剣、弓、杖をそれぞれが持ち、さらに彼女たちはそれぞれが
「チッ、ハーレム魔王かよ」
「チクショォォガァァァァアアアッッ!!!」
木箱の横から発せられた声の主、魔杖アリエイトは動けないもどかしさからか、無駄に声を張り上げる。
「なんでオレは野郎ばっかりで、コイツには美少女が3人も!! しかも口ぶりからするに好感度MAXじゃねぇか!! クソーッ。羨ましい、イヤ、恨めしい、イヤイヤ、羨ましくて恨めしい!! やるぞ! イスズ。世間の厳しさってヤツを叩き込んで、二度と立てないようにしてやるぅぅッッ!!」
「うるさいッ! 黙れ!!」
イスズはアリを蹴り上げた。「うあ~っ」と奇声を上げるアリに構うことなくイスズは言う。
「魔王を倒すのは勇者の仕事だ。俺はトラック乗りらしく、そこまで送り届けるのが役目だッ!!」
落ちてきたアリをパシッと掴みながら、『元』勇者の名を叫ぶ。
「行けッ! ヤマトッ!!」
イスズの言葉と共に箱の中から1つの影が飛び出し、魔王へと剣を振るう。
「させないよ~」
「させるかッ!」
「ダメ~~!」
側近の美少女たちがそれぞれに妨害しようと武器を構える。
「させるかよぉ!」
アリを横なぎで振るい、側近の美少女たちの攻撃を止める、そしてアリは美少女たちを薙ぎ払う前に空気の壁を叩き付け、イスズの攻撃から美少女たちを守るが、空気の壁の衝撃で彼女たちは壁へと叩きつけられた。
しかし、弓矢だけはすでに放たれ、ヤマトへと襲いかかる。
だが、その矢がヤマトへと辿りつくことはなく、すんでの所で灰と化した。
「……邪魔させない」
クロネは木箱の中からゆっくりと立ち上がり、側近たちを睨みつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます