第5話

 今日は17時までの短いシフトだった。長いシフトの相方を置いて、先に上がる。


 牛丼屋で限りなく夕食に近い昼食をとると、街はすっかり夕景に染まっていた。


 こんな日は、家までの道のりを遠回りしてみたくなる。これも些細ではあるが、いわゆる1つの「アドベンチャー」かもしれない。


 すると、住宅と小さい商店の立ち並んでいた街並みが、にわかに開けた。時折、今まではなかった乱雑で賑やかな音も聞こえる。


 そこは、パチンコ屋だった。客が出入りするたびに、ジャラジャラピカピカと音が漏れる。へぇー、と小さく声が出た。こんなところにパチンコ屋があるなんて知らなかった。


 だが僕はパチンコやスロットなど、賭け事にはまるで興味がない。自分には勝てる気がしないし、そもそもその類のギャンブルは続けていたら必ず負けが込むようにできている、という話を聞いたことがある。


 そんなわけで店の華美すぎる装飾や宣伝には全く惹かれない僕だったが、ある一点にだけ関心をそそられた。店のエントランスから、少し横へ。そこに、灰皿とベンチがあった。我が心のオアシス、喫煙所。


 磁石のように吸い寄せられて、ベンチに腰を下ろす。そしてポケットから取り出すホープ。大金を叩いて夢見る大きくても不確かな希望より、僕は片手にちょうどよく収まる確かな希望がいい。


 出入り口から漏れるノイズをオブラートで包むように、どこからともなく響く夕焼け小焼け。


 ああ、もう18時か。


 ホープの煙みたいなぼんやりとした思考の中で、僕は思った。


 この煙草を吸い終わったら、あとは真っ直ぐ帰ろう。

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