現代版:ちきり伊勢屋

無宿統帥

第1話

息子「凄いよお父さん、パンだよ、腹一杯パンが食えるなんて!

それにステーキまで出てきたよ!肉が食えるなんて思ってもいなかったよ!」

父「これもかれも伊勢屋さんが竜宮城を立ててな、貧乏な人に恵んでくれるってんだ。伊勢屋さんにゃ感謝しなきゃいけねえぞ」

これを隣で聞いていた伊勢屋の大旦那、高笑いを浮かべた。

大旦那「これが慈善事業ってもんだ。」

番頭「今まで高利貸しだなんだとやってらっしゃたのに、どうして突然、慈善事業なんざやる事にしたんです?」

大旦那「それがな、街で良く当たるっていう占いに行ったら易者がよ、『貴方はよほど人の恨みを買ってきたようだ。貴方の顔には死相が出ている、これまでの行為を改め、人に良くすればひょっとすると死を逃れられるかもしれん』

と、こう言うんだ。普段なら馬鹿にするところだが、なんせ街一番の易者だって言うじゃねえか、念には念をと思ったが、俺だって命は惜しいが折角ここまで大店にした金を慈善事業の為に手放すってのも...惜しいだろ?

番頭「はあ、」

大旦那「そこでな、俺は考えた。見てみろあいつらの食ってる物、アレは朝食で出たパンの食い残し、パンの耳だぜ、あいつらの食ってるステーキ、アレはとっくに賞味期限切れなんだよ。懐は痛まず慈善事業も施せる。一石二鳥ってのはこの事だな、ハハハハハ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

現代版:ちきり伊勢屋 無宿統帥 @tensyabi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ