第27話 お見通し
その日、俺は早めに帰っていた。
頭の中では留奈の言っていたことが浮かんでいた。留奈は俺に対して何か言おうとしていた。そして、きっと今日会うことができればその話を聞くことが出来る。
俺はいつもより少し急いで駅に向かって、電車に乗り込んだ。
自分でもどうしてこんなに自分が急いでいるのかわからなかった。だけど、今は急がなければならない気がする……俺はそんな気がしていた。
いつもは正直、あまり気にしていないのだが、その日は妙に彼女に会うことを期待してしまっていた。
だが……なんとも拍子抜けな話であり、留奈はいつも乗ってくる駅で乗ってこなかった。別にそんなことはいつもはよくあることだというのに、なぜかその日は俺は少し落ち込んでしまった。
逆に俺が早すぎた……そんな気もしてきた。俺は少し気落ちしながらも、そのまま電車に揺られ続ける。このまま今日は誰にも会わないだろう……そう思っていた矢先のことであった。
「あれ? 昭彦?」
と、電車が止まって乗ってきたのは……里奈だった。いつのまにか里奈が乗ってくる駅までやってきていた。
「あ……あぁ、やぁ」
ちょうど空いていた俺の隣の席に、当然というが如く座る。
「今日早いね。何かあったの?」
「いや……というか、里奈の方こそ、部活は?」
「あぁ。試験近いからね、今日は早めに終わったの。っていうか、約束した通り、勉強ちゃんと教えてよね」
里奈は微笑みながら俺にそう言う。俺は苦笑いしながら小さく頷いた。
「……そういえば、留奈ちゃんとは今日、会った?」
いきなりそう言われて俺は何も言えなかった。里奈はなぜか俺に優しく微笑んでいる。俺は何も返事をしなかった。
「会ったんだね。フフッ。昭彦、嘘つけないタイプなんだね」
俺が返事をしなくても里奈は知っているようだった。俺はそれ以上は何も返事をせずに里奈のことを見ている。
「もしかして……何か話があるとか言われたんじゃない?」
「え……な、なんで?」
思わず俺がそう言うと里奈はニッコリと微笑んだ。思わず俺は里奈の誘導に乗ってしまったようだった。
「アハハ。すごいね、私、意外と占い師とか才能あるかもね?」
「……里奈は、何を知りたいの?」
「知りたい? そうね~。まぁ、留奈ちゃんが一体これから昭彦に対してどんな行動をしようとしているのかな、って気になってね」
「どんな、行動をする……とは?」
「いや、だからさ。里奈ちゃんが昭彦と何を話しているとか、どこに行こうとしているとか……そういうことを知りたいな、って」
「え……別にそういうことは話していないけど……」
「なんで? むしろ、話してあげるべきだと思うけど?」
「……どうして?」
俺がそんな質問をすると、里奈は目を大きく丸くして俺のことを見る。
「だって、留奈ちゃん。昭彦のこと、好きになってるでしょ?」
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