目が覚めたら。
夢を見ていた――――ような気がする。
気がする、というのはそれが現実かどうか区別がつかなかったからで、しかもその正体を予想することもできなかったからだ。
だが、しばらくすると思い出した。
あれは確か、俺が死んだあと。
――――この世界の住民になる直前、光球を眺めていたときと同じ空間にいるということを。
どうしてここに?
疑問符を浮かべた俺は辺りを見渡したが、何一つ見当たらない。満天の空に放り投げられたようなその空間で、ただ一人、目的もなしに漂っていた。
『暗殺者よ。貴方にしかできないのです』
女性の声がした。
何処からともなく聞こえてきた声は頭上から聞こえてきたような気がするし、見下ろしても広がる漆黒の空から聞こえてきた気もする。
かといって左右を見ても同じ感覚がして、俺の理解が及ばぬナニカに感じてしまう。
「貴女は……?」
問いかけるも、返答はない。
代わりに俺の身体が暖かい風に包み込まれた。
『――――お願いです。彼の命を奪ってください』
最後にその言葉が世界中に響き渡り、強烈な頭痛が頭を駆け巡る。
俺はその痛みにこらえきれず頭を抱えた。
この空間を漂いながら身体を丸め、痛みが去るまで必死に耐えたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「ッ――――い、命を奪うって……!?」
次に声を発したとき、いつの間にか俺はベッドの上に居た。身体を勢いよく起こしたせいか、身体に掛けられていた毛布が床に落ちてしまう。
ここは……どうやら泊まっていた宿のようだ。
窓の外を見ると茜色の空が広がっていた。
あれから丸一日近く眠っていたのだろうか? というか、白獅子はどうなったんだ。俺はリリィを助けることが出来たのだろうか?
疑問なんていくつも浮かんでくる。
早く状況を確認したい。
そう思っていると、寝室の扉が開かれた。
「やぁ、グレン君」
顔覗かせ、寝室にやってきたのはラドラムだった。
「ラドラム様――――ッ!」
「分かってるとも。グレン君が何を聞きたくて、どういう状況なのか僕が詳しく説明する。だから落ち着いて、まだ傷が……あ、あれ? おかしいな……お医者さんの話では、完治まで二月は掛かるって話だったのに……。どうして自分で起きられたんだい?」
「完治まで二か月……? いえ、別に痛みは特にありませんが……」
「…………まぁ、グレン君だしね。何があっても不思議じゃないか」
すると、ラドラムはベッドの横に来た。
彼は壁に背を預け、俺の様子を見下ろして頷く。
「およそ三日経つよ。グレン君が意識を失ってからね」
「ッ――――」
「その間、色々なことがあった。勿論、会談なんてしてる場合じゃないからそれ以外でね」
ラドラムはそのままの体勢で俺に語り聞かせた。
中でも大きなことは白獅子の遺体が発見されたことである。
彼の遺体は街道近くの森で発見され、周囲にはシシアルタの身体が散乱していたそうだ。白獅子はその中心に大の字に斃れていて、急行した街道警備兵たちが発見したのだとか。
死因は不明ながら、周囲の様子と街道付近の惨状から察するに、白獅子はシシアルタと戦い刺し違えた。
現状、こう結論付けられているそうだ。
「レギルタス同盟はリバーヴェルに文句を付けなかったんだ。なにせシシアルタは獣人の神様で、リバーヴェルが暗殺を企てるのに使える存在じゃないからね」
「それって…………」
「ああ。むしろレギルタス同盟が各国に疑念の目を向けられてるところさ。大使館にシシアルタを隠していて、各国の要人をまとめて殺すために用意してたんじゃないか? ってね。それが失敗に終わり、シシアルタが暴走したから白獅子が死んだんじゃないか、って話さ」
筋が通っている。むしろそれ以外の予想をする方が難しいくらいだ。
「正直、僕とリジェル殿も図り損ねてた。どうしてあんな事態になったのか――――何が起こってああなってしまったのか、状況がまったくわからなかった。だからグレン君とオヴェリア嬢に直接聞こうと思ったんだけど――――」
「ラドラム様ッ! リリィはどうなったんですか!?」
「無事だよ。ただ、彼女も目を覚ましてないって聞いてる。彼女はグレン君を連れてリベリナに帰って来たんだけど、それからすぐに気を失ってしまったからね」
リリィも限界だったのだ。あれほどの戦いに巻き込まれ、命を賭して戦ったのだから倒れてしまっても無理はない。
(…………落ち着け、リリィは大きなけがをしてなかった)
どうにかして平静を装おうとする俺を見て、ラドラムは仕方なそうに笑っていた。
「あとで様子を見てくるといい。リジェル殿には僕から頼んでみるから」
「今はその代わりに説明を、ってことですか」
「ああ。どうしてグレン君が街道に居て――――白獅子と戦ったんだい?」
「もう分かっていたんですね」
「当然だろ? 状況を見るに怪しい点ばかりだった。元帥イグ・カーナイトが宿に来たっていうのに、どうしてかグレン君は街道に居た。そのグレン君をオヴェリア嬢が連れてきたとか、僕からしてみればまた何かに首を突っ込んだのかと思っちゃうよ」
「自分から突っ込んだわけじゃありませんよ」
「ふむ……本当かい? それならそれで、議事堂に忍び込む必要はなかったんじゃないかな?」
あっさりと言われ、俺は溜息を漏らす。
「バレてたんですね」
相手がラドラムと思えばバレていても不思議じゃない。
しかし、そうなるとわからない点がある。
この男は俺を遠ざけておきながら、どうして忍び込んだことを知りながら放置しておいたのか。これがまった九わからなかった。
「また趣味の悪い遊びですか?」
「ひどいなぁ……。別に、何も言わなかっただけだよ。僕は確かにグレン君に仕事をしなくていいといったが、自発的な振る舞いを制止するほど小さくない。たとえ僕に知らせず、僕を出し抜こうと動いていたからって結果は変わらないさ」
「――――はぁ。逆に俺が出し抜かれたってわけですか」
「と言いたいところなんだけど……白獅子が暴走したのを考えたら、グレン君の行動の方が正しかったのかなって思うわけだ。つまり結果的には、グレン君が僕を出し抜いたともいえるだろうね」
俺は白獅子が暴走したなんて言ってない。
加えて、状況証拠からそれを理解できるはずもない。
なのにどうしてこの男は?
「俺が戦うことになったのは、白獅子が予定が変わったとか言い出して、いきなり襲い掛かってきたからです。獣人の元帥も知らなかったみたいで、いきなり殴られてましたし。それでラドラム様は、どこで情報を?」
「ふふっ――――答えはここにあるよ」
懐に手を差し入れたラドラムが一つの封筒を取り出した。
それを俺に手渡すと、見ていいよと口にする。俺が封筒を開けて中に収まった紙を取り出してみると、そこには妙に達筆な文字で多くのことが書かれていた。
「その手紙は宿に届けられたんだよ。僕たち宛でね」
――――聖地の目的を教えてやる。喜べ。
こんな尊大な言葉からはじまったことに眉をひそめた俺だったが、読み進めるとその尊大さに劣らぬ大きすぎる話が綴られていた。
聖地が、そして白獅子が。
彼らが聖石を用いて何をしようとしているのか、その最終的な目的は不明ながら、女神という存在を呼び出そうとしているのだ、と詳しく記載されている。
「その中身はアルバート殿やリジェル殿にも見てもらってる。そしたらアルバート殿が驚いてたよ」
「父上が?」
「ああ。文字を見て間違いないと呟かれてね。どうやら、カールハイツが書く字とよく似ているらしい」
まさかあの男が生きていた?
アンガルダでの戦いの後、あれほど死に瀕していた男が生きていたとは想像できないが……。
「手紙に書かれたことが本当かどうかはわからない。だけど無視はできない。ただ内容が内容だから、他国には知らせられないんだ」
「シエスタが第二のガルディアになるから、ですか?」
「そうさ。他国の安全もまぁ……幾分か気になるっちゃ気になるけど、僕は自分たちを守るので精一杯だからね」
つまり公にすることは控え、情報を知る者を厳選する必要があるということだ。
協力者のリジェルには伝えたところを鑑みると、ラドラムは意外にも自分だけでは手が足りないと考えているのかもしれない。
……狸男のことだからどこまでそうかはわからないが。
「ところで、レギルタス同盟の元帥が生きてたとのことですが」
「実はもう尋問してあるよ。でも頭に強い衝撃を受けたらしく、ここ最近の記憶を失っていたんだ。これは僕たちの、そしてリバーヴェルの医者や魔法使いにも確認させたから間違いないかな」
ではイグが知るのはあまり多くない。
彼は俺とリリィの下に足を運び、彼自身も知らぬうちに白獅子が来て剛腕を見舞われた。白獅子とのやり取りを思い返すに、イグは単なる被害者に過ぎない。
日頃の振る舞いは目に余る点があったのかもしれないが、これに限ってはそういうことなのだろう。
「いずれにせよ、色々なことが起こり過ぎた。詳しくはまた、祖国に帰ってからにしよう」
ラドラムはそう言い残して俺に背を向けた。
◇ ◇ ◇ ◇
グレンがいる寝室を出たラドラムはリビングに出た。
さっきはいなかったアルバートの姿をそこで見かけ、軽い会釈をしてすれ違う。
その際、彼は――――。
「ガルディア戦争が仕組まれたものだった、って、手紙を見る前から知ってたんじゃないですか?」
いつもの調子で声を発したのだ。
「僕は知ってるんですよ。アルバート殿は何か隠してるんだって。……それには皇帝陛下もかかわっていて、それが原因でアルバート殿はシエスタに失望したんだってこともです」
「…………そなたが何を知りたかろうと、何を思おうと構わん」
背に届いた声を聞き、ラドラムの足が止まる。いや、止まるというよりは、覇気に満ちた声により止められたというのが正しかった。
普段は不敵で、誰を相手にしても気圧されることのないラドラムの首筋を汗を伝う。
「だが、努々忘れぬことだ。その疑問の先に待つのは、悪魔でなければ死神でもない」
振り向かぬまま、二人は背中越しに言葉を交わす。
ラドラムは久方ぶりに息を呑んだ。
「何が待つのですか?」
「ははっ……決まっておろうが」
おびただしい量の汗が首筋を伝うや否や、背中に覚えた絶対零度。
こんな経験をしたことはない。
他国のどんな騎士を前にしても、名のある将軍を前にしても、ラドラムはこのような感覚を覚えたことは一度たりともなかった。
「その先に待つは剣鬼・アルバート。――――ガルディア戦争にて数え切れぬ兵を屠った
◇ ◇ ◇ ◇
やがて父上が来た。
父上は俺の無事を確認して目じりを下げると、優し気な表情を浮かべて俺のことを抱きしめた。相も変わらず甲冑姿のせいで温もりも何もあったもんじゃなかったけど、「良かった」という声が僅かに震えていたような気がする。
『不思議だな。グレンの身体は回復しきっているように見える』
『全治二か月ってのは誤診だったんじゃないですか?』
『いやそのはずは……私も傷の具合は確認したのだが……』
合点がいかない様子の父上だったが、俺の無事を再度確認し、『そうと決まれば』と言って立ち上がる。
なんでも、アリスとミスティにも俺が目を覚ましたことを伝えに行くそうだ。
しかし宿には居ないとのこと。白獅子の騒動があって、二人はすべての騎士を連れて一足先にハミルトンへ帰還させられたのだとか。
『拒否する二人を宥めるのは大変だったぞ』
父上曰くラドラムに言われても二人は応じず、俺が目を覚ますまで傍に居ると言い張った。でも二人は応じず、最後は婆やが力づくで連れ帰ったそうだ。
やはり婆やは強いのだろう。
あのミスティの師をしていたというから、間違いない。
――――というのが、夜になる前の出来事である。
窓の外に広がる夜景は先日に比べて控えめで、どこか消沈しているようだった。
(仕方ないか)
白獅子の騒動からそう時間が経っていない。
いくらリベリナやリバーヴェルの責任ではないにしろ、レギルタス同盟に厳しい目が向けられている今はそんなもんだろう。
「……あれは」
俺は広い廊下のその先に立つ美丈夫を視界に収める。
その者の名はリジェル・ロータス。
彼がいて当然だ。
何故ならこの廊下は、俺が泊まる部屋がある建物ではなく、リリィが泊まる建物であるからだ。
リジェルは近づいてきた俺を視界に収めると、それまで立っていた扉の前を離れて俺の近くに足を進めてくる。
「私はそなたのことを待っていた」
「俺を?」
「ああ。しかし、ラドラム殿から話を聞いたからではないぞ。――――あくまでも、私が個人的にそなたと話をしたかったからだ」
するとリジェルはその場を離れて歩き出してしまう。
俺はリリィの見舞いに来たのだから、それでは都合が悪い。
「俺は――――ッ!」
「まだ目を覚ましていないオヴェリアの下に行く必要はない」
「……でも」
「いずれ会える。だからこの時間を有意義に使うべきだ」
結局、俺は仕方なくリジェルの後を追った。
彼が向かった先はこの階層の片隅にある、談話をするような開けた場所だ。彼はそこに置かれたソファに腰を下ろすと、俺にも座るよう促した。
「驚きました」
「ん? 何がだ?」
「貴方は俺と話したくないものだと思っていたので」
「なぜだ? 我々はほぼ初対面ではないか」
「聞いてますよ。オヴェリア――――リリィから」
意図することは一つ。
俺とリリィの外見的特徴だ。
「勘違いするのも無理はない。しかし私はガルディア人を忌み嫌ってなどいないぞ」
「――――え?」
「実際、リバーヴェルではガルディア生まれの部下も何人か居る。私は彼らとその他の民族を差別したことはない」
意味が分からない。
リリィが口にした言葉とまるで逆じゃないか。
だって、リジェルは――――。
(リリィを穢れって言ったんじゃ……)
彼女の血を蔑み、彼女の母を蔑んだと聞いている。
「…………オヴェリアの母は病により亡くなったが、それ以前は処刑される可能性もあったのだ」
「ッ……もしかして、それって」
「ああ。ガルディア戦争後、彼女の血筋を問題視する者がリバーヴェルにも多々存在したのだ。ロータス家ごとという話もあったが、今は亡き父上のおかげで事なきを得た」
しかし、代償があったのだろう。
リジェルの表情が冴えない。
「これから話すことはリバーヴェルでも主要貴族の当主に加え、元老院しか知らぬ話だ」
「それを俺に話してもいいんですか?」
俺の返事を聞いたリジェルが涼し気な笑みを浮かべて頷いた。
「オヴェリアの母は第一夫人ではなく、当主の使用人として扱うこと。生まれた子は男女いずれの場合であっても即座に廃嫡とし、元老院が指定する責務を果たすこと。――――これらを受け入れなければ、やはり処刑だったのだ」
(――――元老院たちは随分と性格が悪いんだな)
しかし解せない。
そのことと、リリィがリジェルから蔑まれることは別の話ではなかろうか。
俺がその疑問を抱くと同時に……。
「そなたが思う通り、元老院は性格が悪いのだ。父上がご存命の頃はどうにかなったのだが、奴らは私に代替わりしてからというもの、当家の屋敷に自分たちの粋が掛かった使用人を送り込んできた」
「つまり、見張りですか」
「ああ。奴らは私がオヴェリアと話すときに限って必ず顔を出し、私がオヴェリアに家族として接しようものならすぐさま元老院に報告した。ロータス家の当主はガルディア王家の血を引く者に罪を教えず、第二の大戦争を引き起等としているのか、と言われたことは何度もある」
「でもリジェル様は」
「そうだ。私は気にすることなくオヴェリアに接した。しかしそうしていると、私が与り知らぬところで元老院がオヴェリアに接触したのだ」
リジェルの表情が怒気に染まっていく。
「元老院が指定する責務を果たすこと。その条件を用いた奴らは、私が知らぬ間にオヴェリアに汚れ仕事をさせたのだ。……まだ幼く、小さかったオヴェリアはその責務によりはじめて人を殺めた。無論、私は元老院に対し文句を言った。だが奴らは聞く耳を持たず、そうでなくてはオヴェリアが母の罪を背負うのかと言われた」
「…………」
「まだ若かった私が交渉で得られたのは、オヴェリアにさせる仕事を吟味する権利だけだった。断ろうものならば母に変わりオヴェリアを処刑すると言われた私は、無力にも応じざるを得なかったのだ」
「ではリジェル様。貴方はリリィを嫌っているわけではないのですか?」
「馬鹿を言うな。妹を嫌う兄が何処にいる。ただ、オヴェリアはもう覚えていないだろうな。幼かったころには共に街に出て、菓子を買ってやったことだって何度もあるのだが」
多くのことが分かってきた。
オヴェリアははじめての暗殺仕事は元老院に強いられて、つづく仕事は応じざるを得なかったリジェルが吟味していたのだ。
つまり、なるべく安全な仕事を任されたということになろう。
すべては兄による、せめてもの配慮として。
「もっとも、その元老院の手足がようやくもげてきたところなのだ」
「――――はい?」
「若輩者だった私は奴らに勝てなかったが、私も黙っていたわけではない。今では元老院を何人か失脚させ、奴らの手足として動いていた貴族も処理した。……いくらロータス家が大貴族といえ、若輩者の私では巨大なリバーヴェルで生きるために必死だったのだよ」
涼しい顔をして仰々しいことを口にするじゃないか、この男。
「我がロータス家はガルディア王家の件で格を下げた。そこで父も亡くなり若い私が次いだことでさらに格が下がったことで、不甲斐ない姿をさらしたのは事実だ。以前のようにリバーヴェルにロータス家在りと言われるようになったのはここ数年だ」
「すべてリリィのためだった、ってことですか?」
「当然だとも。最近も、この七国会談がはじまる直前にようやく使用人も追放できた。あと少し、もう少し私が力を得た暁には、昔のようにリリィと話せる日が来るかもしれん」
「……何というか、貴方は俺が思っていた人じゃなかったみたいですね」
「それは何よりだ。しかしそなたも学んだだろう? 兄という生物は、妹のためならばいくらでも努力ができるということをな」
きっと、彼はこれからもリリィのために努力を重ねるのだろう。
いつの日か、昔のような兄妹に戻れる日のために。
今はまだ元老院たちを警戒しているからか、リリィと昔のように話すことは避けているようだが、以前のように話せる日は、きっと遠くない未来にやってくるはずだ。
「――――というわけで、ここからが本題だ」
あれ、今の話が本題ではなかったのか。
てっきりこういう話がしたいのかと思っていたのだが。
「そなた、リバーヴェルに来るつもりはないか?」
「旅行ですか?」
「そうではない。ロータス家に来てくれと言っているのだ」
「……仕えるということでしょうか?」
「利口なそなたであれば、私がそれを意図してないことはわかると思うが」
だが彼は、それ以上俺に追撃を仕掛けようとしなかった。
むしろソファを立つと、あっさり立ち去ろうとしてしまう。
「まぁいいさ。さすがに早急だったな」
彼は去り際に俺の肩をぽん、と叩くと。
「覚えておいてくれ。オヴェリアが君を好ましく思っているの同時に、私もまた、君を強く気に入っているということをな」
そう言って、今度こそこの場を離れていったのである。
「ほ、本題が短すぎる」
俺はと言えばこのほかの言葉が頭に浮かばず、半ば呆然としたままリジェルを見送った。
◇ ◇ ◇ ◇
この話でエピローグの予定だったのですが、思いのほか文字数がかさんでしまったので、来週がそのエピローグとなります!
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