STAND BY ME(4)

 しばらくの説教の後、僕は解放された。


「はぁ......」


 溜息をついて、家路を辿る。電車、バスを乗り継いで家から1番近い最寄りのコンビニに寄ると、そこには見慣れた銀髪が。


「あっ、お兄ちゃん、です」


 僕が見つけるタイミングと同時に魅夜みやも見つけてくれたようで、トテトテと擦り寄ってくる。


 右手にはスーパーの袋が握られている。買物の帰りらしい。僕が遠い学園に通ってることもあって買物は魅夜が買って出てくれている。


 スーパーの袋を魅夜の右手から受け取ってコンビニ内を見て回る。


「あっ、ありがと、です」


 そう言うとにへらっと笑う。嬉しいときの笑顔だ。魅夜ちゃんペロペロ。


 いいよ、と手で制してプリンを2つ購入してコンビニを出る。


「お兄ちゃん、また、何か、あった、です?」


 並んで歩くと夕陽が2人の影を伸ばして、影はぴったりくっついている。


 心配そうに上目遣いで覗き込んでくる。


「え?あぁ、プリン......」


 魅夜が僕の袖を持つ反対の手にはさっき買ったコンビニ袋。


 そういえば、僕は何かあると甘いものを買ってくる癖があるらしいことを指摘されたのだった。


 脳裏にはエルフさんのこと。基本表情筋が活動を見せないエルフさんが、あんなに怒ったり、苦しそうだったり、泣きそうだったりしていた場面のフラッシュバック。


「お兄ちゃん...?わたしじゃ頼り、ならない、です?」


 きゅーーーんっ


 困ったように眉が下がって、潤んだ瞳には夕陽が反射している。


 相談...したいけど、『僕の友達がどうやら人の心が読めるらしくて、それが原因で困ってるらしいんだよね〜』って荒唐無稽すぎるだろ。


「......もし、魅夜が人の心が読むことが出来るとしたら嬉しいか?」


 言葉を選んでこれだった。完全に何言ってんだコイツ状態なわけだが。


「......」


 魅夜は顎に手を当てて考えているようだった。髪で隠れて表情は見えないが、真剣に考えてくれている。


「お兄ちゃん、それは、どういう、意味、です?」


「えっ?ああ......」


 ジト目を向けられる。そりゃそうなるよな。意味も何もそのままだから、これ以上のことは何とも言えない。


 魅夜は動揺する僕の数歩先を歩き始める。


「あれ、魅夜?魅夜さーん?」


 そう呼びかけると再び隣に並んでくれる。


「少し、考えてた、です」


「ああ、そうだったのか」


 魅夜はピタ、と立ち止まって胸に手を当てる。


「もし、ミヤが、心を、読めたら」


「読めたら......?」


 顔をあげると意を決したように口を開いた。


「それは、きっと、寂しい......です」


 魅夜はきっと想像したのだろう。その証拠に魅夜自身が寂しそうな表情をしている。


 寂しい......か。もしかしてエルフさんも同じだったりするのだろうか。

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