STAND BY ME(3)
オートロックマンションの一室。
白と緑を基調とした部屋。大きな部屋の割に質素で彼女の人と成りが見てとれない。
ゼロと言っていいほど私物がないのだ。必要最低限という言葉が似合う部屋。唯一窓際に申し訳なさそうに少しだけ背の高い観葉植物がちょこんと置かれている。
何故僕はここにいるんだろう。そう、ここはエルフさんの部屋である。
いやっふぉおおおおおおおおっ!!
なんか思ってた展開とだいぶ違う形ではあるものの、女子の部屋!女子の部屋!女子の部屋!
「ほんとにすいませんでした。心配だっただけなんです......」
そして僕は土下座している。小さな丸テーブルを挟んで向かい側にエルフさんも正座している。
初女子部屋&エルフさんの部屋ということで興奮してるのも事実だが、ストーカーしていたのも事実である。
日を改めたい。是非リベンジさせていただたい。
「......」
視線が痛い。
一応その場で事情は話したのだが、土下座を始めたところで他人の視線が突き刺さったことによりエルフさん家にお邪魔した次第である。
「この際なんでハッキリ言わせてもらいます」
「は、はい」
もう完全にゴミを見る目だ。
「私は貴方が、人間が嫌いです。貴方に心配される謂れはありません。
もう、放っておいてください。顔も見たくないし、声も聞きたくない。
貴方の、人のつく嘘はいつも私を不快にさせる」
「......」
怒っているのに、何故だか話すたびに苦しそうになっていくのはエルフさんのほうだった。
少しだけ悲しそうな寂しそうな。そんな感情を彼女から感じたのだ。
––––––人の心が読める
仮にそれがほんとだったとして、それは一体どんな気持ちなんだろうか。
「エルフさんは......嘘がわかるんです、か?」
噂とは一致しない疑問を告げながら顔をあげると、驚いた後に泣きそうな、苦しそうなそれぞれ半分ずつ足した表情をしていた。
「っ!貴方には......関係ないことです!!」
「は、はぃぃっ......」
制服の裾をきゅっと掴むエルフさん。長い睫毛が震えている。
もうそれは肯定なんだよなあ......
エルフさんが【エルフ】じゃなかったらそんなのありえないと否定するところだ。
結局僕はそこから先に踏み込むことは出来なかった。相変わらず頭を下げながらその片隅で思考する。
僕なんてスケベな妄想しながらなんてことないように答えるときもあるし、彼女の言うように心で拒否しながら言葉では同意することもある。
例えば善意の裏に悪意が、好意の裏に敵意があったとして僕はそれを平然と受け入れて生きていけるのだろうか?
彼女の罵倒を受け入れながら頭の隅で生まれた問いに答えが出せないままいるのだった。
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