秘密のエルフさん(3)
なんだか悪いことをしてしまった気分だ。
緑の光の玉?は彼女の周りをくるくると回っている。踊っているかのようだ。そして彼女はそれに踊らされている。
ワタワタ可愛いです。ほんとありがとうございます。
しばらくすると彼女は深呼吸を始めて緑の光は空気に溶けるようにゆっくり消えていった。
「あの......」
「......はい」
何か言いたげにじっとこちらを見つめてくる。
やばい睫毛長い。可愛い綺麗。風の流れに乗ってなんかいい匂いがする。
でも不思議だ窓は閉めきっているのに風が吹いているなんて。
「これはマジ......ックです」
「......」
苦しい。苦しいよ。森野エルフ。いや、合ってるのか?ある意味では。
耳ピクさせながら耳の先が赤くなっている。どう考えても血液通ってます。お疲れ様でした。
しかし、少しだけしか言葉を交わしていないものの、自然に喋れている。
最初に彼女の秘密らしきものを見てしまったというのもあるんだろうけど、彼女を一人の人間として接してみようとしたことが功を奏したのだろう、多分。いや、前者が大半を占めているお陰は否めないか。
「あの、森野...先輩は一体何者なんですか?」
そう問いかけた瞬間、この世の終わりとでも言わんばかりの絶望的な表情。
意外に色んな表情見せてくれる森野エルフに胸がキュンキュンする。
「あー...うー...あぁぁあ...」
ジッと見つめる。主に耳。ピクピク。見ないで、と言わんばかりにピクピク。
「お察しの通り、私の種族名は【エルフ】です......」
そう言うと崩れ落ちる森野エルフ。こんな姿見た人いないのではないのではなかろうか。
別にお察しはしていたわけではない。勝手にゲロった感あるけど、言わぬが花だろう。
エルフ。エルフかあ......
コバヤシ。どうやら彼女は普通の人ではなかったようだ。
その後、彼女は懺悔するかのようにポツポツと語り出した。
彼女は名前もエルフだが種族名も【エルフ】らしい。過去に人とエルフが交わり、何度か先祖返りという形でエルフの性質を受け継いだ子供が生まれる。
そして彼女は現在エルフの一族の中で唯一の先祖返りらしい。
一族の掟で先祖返りのことは門外不出。バレればひどい罰が待ち受けているとのことだ。
通常は魔法で。念のために髪で保険をかけてエルフを表す耳を隠している。魔法を行使する際には精霊の助力を得て行使する為、解くときもかけるときも精霊光(さっきの緑の光の玉)が発生してしまう。
そして、常に魔法を使っていると体がだるくなるし、彼女は本来ロングヘアはあまり好きではない為、今日は部活も休みで誰も来ないだろうと高を括って魔法を解いたところを僕に見つかったというわけだ。
「なるほど。散々言っておいてアレなんですけど、実在するんですねエルフって」
正直、緑の光の玉を見たとき今までに感じたことのない感覚があって、その感覚をもってしても、いやいやまさかと頭の中で肯定と否定を繰り返したけれど、人生の中でエルフに出会えるとは思っていなかった。2重の意味で。
「ええ......私はあったことありませんが、エルフ以外にも悪魔や吸血鬼や妖の類の先祖返り。他にも絵本の中でしか見ないファンタジーな生き物は実在するんですよ」
目を伏せて声は尻すぼみに小さくなっていく。
なんか僕凄い悪いやつみたいになってるんだけどどうかしたのだろうか......
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