第15話 宵町の笛

ここ最近、宵に町を歩くと何処からかお囃子の音が聴こえてくる。

誰かが練習でもしているのだろうか。

どこで、だれが?

音を辿る。

ぴゅーひょろろ、ぴゅーひょろろ。

近づいたかと思えば遠ざかる。

明かりのついている建物を探してもなにもない。

一番音が聞こえるのはなにもない空き地。

いくら探そうとしても姿は見えず、

ただ音だけがぴゅーひょろろ、ぴゅーひょろろと聴こえてくるのだ。


ここはかつて漁師町で栄えていた下町。

過去の賑やかな音色を町が覚えているのかもしれない。


◇◇◇◇


「何かを呼んでたんじゃないですか?」

「え?」

「だって、ぴゅーひょろろってお囃子じゃないですよね?ただ笛を吹いてるだけのように感じたんですけど。」

「そう、一定のリズムでぴゅーひょろろ、ぴゅーひょろろって。」

「ほらやっぱり!それ、お囃子の練習ならおかしいですよ。同じようにしか吹かないのは、何かの合図じゃないかなと。」

「宵に吹く笛......蛇を呼ぶ......。」

「あるいは邪(じゃ)、鬼。」

「天の邪鬼。」

「うりこ姫なら殺されてたかもしれませんね。」


ふふふ、っと笑いあう。

面の皮の下にあるものを、私たちはお互いなにも知らない。

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