余談 消えた七不思議


「俺さ、小学生の頃七不思議の一つ作ったんだよね。」


友人がそんなことをぼんやり呟いた。ショッピングモールを暇だなとぶらついていたそんな時、ふと家具屋の前で足を止めたのだ。

そこにはたくさんの鏡が並んでいた。


「へー、どんな話?」

「俺の小学校にあった鏡の話なんだけど……。」

友人は鏡から目を離さずに語り出した。



小学校の玄関を入ると、左の教室へと続く廊下がある。その廊下は窓もなくなんとなくいつも薄暗い気がした。

廊下の突き当たりには大きな鏡が一つ置いてあった。廊下が鏡に映り込んでまるで何処までも続いているようであった。


だからこんな七不思議を作った。


廊下を前を向かずに歩いて鏡に気付かずに進んでしまうと鏡に飲み込まれてしまう。そのまま永遠に鏡の世界を彷徨い続けてしまう。出るためには他の誰かが鏡の中に来るのを待たなくちゃいけない。だから鏡の中に時折手招きする子供が映る。


「へー、でもさ、それ七不思議にしたらちょっと長すぎないか?子供相手なら削んないと覚えらんないから流行らないよ。」


そう言って隣を見ると友人の姿がなかった。


「え?」


驚いて鏡を見ると、自分の後ろに友人が手招きをして立っている。


「驚かすなよ!」


そう言って後ろを振り向いた。

けれどそこに友人の姿はなかった。

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