第10話 消えた七不思議

小学生の頃に掃除当番で音楽室を担当した時のことだった。

音楽室清掃は楽器もあるため、六年生がやることになっていた。


その日はお休みの子がおり、音楽室の掃除担当が極端に少なかった。私は一人で音楽準備室に掃除用具を片付けに行った。

すると突然奥の方でビーン!と音が鳴った。

誰かいるのかと恐る恐る見に行くと埃をかぶったアコーディオンと木琴を叩く棒が転がっていた。おそらく上から落ちてきた棒が当たって音が鳴ったのだろう。

こんなところにアコーディオンがあったのか。初めて見たな。

そう思いつつ棒を拾って片付けようとして気づいた。そもそも何故ここにアコーディオンが?普通楽器は鍵のついた棚にしまうのに。よく見ると何故かアコーディオンは鍵盤だけ埃をかぶっておらず白く光り輝いていた。アコーディオンが使われたことなんて六年間一度もなかった。

鼓笛隊のバトンガールに所属していたが、そこでも使っているのは一度も見たことがない。

不気味に思い急いで準備室を出て扉を閉めた瞬間ボーン……また音がした。

一緒に掃除をしていた友人が顔を上げると、

「勝手に楽器に触ったらダメだよ。」

と言ったので私は慌ててことの顛末を話したのだった。



十年後。

ふと同じ小学校に通う妹にその話をすると「あ、それ学校の七不思議のやつじゃん?」と言われた。


そうか、私は七不思議の一つになったのか。

そう苦笑して気づく。

では私が知っている七不思議の一つは?

私は一体どんな七不思議と取って代わってしまったのだろうか。

どう頑張っても消えた一つは思い出せなくなっていた。


◇◇◇◇


「トイレの花子さん、笑うベートーベン、勝手に鳴るピアノ、意外と七不思議全部覚えてるかって言われたら覚えてないもんですね。」

「そうだよね。七不思議全部を知ってしまったら異界に連れ去られる、みたいな七不思議の最後とかもあるしね。」

「じゃあ、七不思議の一つになってしまったらどうなるんですかね。」

「その七不思議が消えた時に、その人も消えてしまう、とかね。」

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