第4話 汗をかく石

私の出身地は東北の山奥の村でね。時々不思議なことに出会ったのよ。


実家のリンゴ畑の横に川が流れていて祖父母が農作業をしている途中、双子の弟と二人でよくその川で遊んでいた。

ある日、川底をさらって綺麗な石拾いをしていると、弟が両手ほどの大きくて艶々の黒い石を拾った。

石を持つと不思議と見た目以上の重さがあるように感じた。

乾かそうと河原の土手に置いていたのだが一向に石は乾かない。

よく見ると、石が汗をかくように内部から水が溢れてくる。弟と二人で面白がって葉っぱで石をふいたりあおいだりして乾かそうとしていた。

そのうち祖父がやってきて二人の話を聞くと、石を持ち上げ川にポーンと放り投げてしまった。

ざぶん、と音を立てて石は沈んでいった。


「狸だ。帰るぞ。」


祖父の言葉は本気だったのか、冗談だったのか、未だによくわからない。


◇◇◇◇


「狸だったら投げちゃダメですよね。」

「ね、溺れなかったか心配。」

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