第2話 赤い傘
お気に入りの赤い傘があったの。
とても激しい雨の日、その赤い傘をさしながら歩いていると耳元で名前を呼ばれた気がした。
友達かなと思って振り向くけれど誰もいない。そもそも雨音が激しすぎて人の声など聴こえるはずがないのだ。
気の所為だ、そう思って前を向くと、赤い靴が見えた。驚いて傘をばっと持ち上げるが誰もいない。
通り過ぎたのだろうか。
もう一度後ろを振り返ったが、果たして誰もいないのだ。
それからだった。
赤い傘をさすと時折、その赤い靴を見るようになったのは。
他の傘ではなんともない。ただその赤い傘の時だけ、赤い靴が見えるのだ。
気味が悪いと思いつつ、お気に入りの赤い傘を時々使っていた。
◇◇◇◇
「あれ、でもやよい先輩が赤い傘を使ってるのなんて見たことありませんけど。」
あきちゃんは私の隣の椅子にかけてある青い傘を見ながら言った。
「お気に入りだったの、って言ったでしょ。前にね、盗まれちゃったのその傘。」
それ以来赤い靴を見たことはない。
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