第39話 おっさんの陰謀全国版
一万人のアイドル。
脱いだらすごいジャギーさんです。
日本でのラーメンとチューハイでフォアグラになった肝臓が……ってどうでもいいか。
とりあえず俺をくっころしに一万人の汁○優がやってくるらしい。
たぶん白ブリーフ。
自分で言ってて気持ち悪くなったので、今ここで吐いていいですか?
……おえええええええええええッ!
くっころ、くっころ!
さあ、大変なことになりました。
死亡フラグがビンビン立ってます。
一度死んでるから俺が死ぬのはいいんだけどさ、家族とか部下が死ぬの嫌じゃん。
かといって一万人殺すとヴァレンティーノコース確定じゃん。
しばらくは調子に乗って暴れられるけど、いつかは滅びるからね。
一万人の誰かの家族や親戚である復讐者を殺すと三倍に増える。
この世界だと一族総出で復讐しにくるからね!
恨みを買うのってそれはそれは恐ろしいことなのよ。
だから大義名分が必要。
例えばヴァレンティーノを殺すとか。
魔王って時点で手に入らない大義名分が。
と、なると……だ。誤魔化す方向で行くか。
一万人を巻き込む大イベント。
なるべく被害者は少なく。
終わったら来た連中が目的を忘れるような強烈なやつ。
それには明るいイメージ。善のイメージが必要だ。
ヴァレンティーノみたいなやり方だと暗くて邪悪なイメージになる。
イメージ戦略が高度に発達した世界からやって来た俺ならできるはずだ。
イメージ戦略、宣伝、ステマ。
なんでもアリの恐ろしさってやつを見せつけてくれる!
よっし、やるか。
まずは人間の王様に頼んで切り崩し工作っと。
「ぽく知らないもん」って言ってもらうだけでも充分。
殺しにいけるアイドルが俺を敵に回すほど愚かじゃないはずだ。
それに結構な数の出稼ぎ労働者受け入れてるから、向こうだって儲けている。
薬だって入ってきてるし。
最初に入ったサラ金が法改正で潰れてさ。
その後にやった置き薬の営業が役に立ったのよ。
置き薬の安い漢方薬は鉄板で効くやつだし、製法もこの世界でも作れるんだよね。
当然、扱ってた商品は全部記憶してるよ!
営業先で嫁姑戦争に巻き込まれて掃除機ぶつけられてやめたけど。
なお、転職回数は黙秘する。
話を戻すね。
要するに人間の王とは持ちつ持たれつってやつよ。
だから損さえさせなければ融通してくれる。
あとはシャイアにレミリアにっと。
「シャイアに手伝ってもらおうっと」
俺はそうつぶやくと酒場に向かう。
シャイアは現在、さいたまに住んでいる。
異世界人が持ち込みがちなオセロとか将棋、それにテーブルトークRPGにどハマリしたのだ。
特にクトゥルフのやつ。うろ覚えだけど。
他にも麻雀にポーカーにブラックジャックに。
道具を作るのが簡単でルール知ってるやつは容赦なくぶち込んでみた。
バカラとかの高額ギャンブルは試験運用で死人が出そうになったので封印。
競馬とかもやろうかと思ったんだけど、ルールがわからず断念。
おっさん、お馬さんは行ったことないのよ。
競艇とオートレースもつきあいで数回かなあ。
地元でやってるから。
要するに素人。
こちらはギャンブルの味をおぼえたドラゴンに考えてもらってる。
ドラゴンは頭がいいのでとんでもないシステムを考えてくれるだろう。
あと日本でギャンブルと言えばパチンコ。
だけどパチンコは再現が無理。
あれは組み込みシステムが必要。
なので、その前のスマートボール作った。
ゴルフボールくらいの玉を打ち出すやつ。
超原始的に玉が入ったら係が玉を置いていくシステムで試験運用中。
なのに、お菓子と交換の子供だましなのに入り浸るドラゴン多数。
スロットマシーン作ったら死人が出ると思う。……作れなくてよかった。
現代娯楽産業のヤバさを再確認。
異世界に持ち込んだら国が滅ぶやつだ。
金の魅力をいまいち理解してないドラゴンと獣人、それに元不死族だから笑い事ですんでるけど。
人間形態のシャイアは酒場で潰れていた。
どうやら暇を持て余したドラゴンたちと24時間耐久クトゥルフをやった後のようである。
最近シャイアはGMでシナリオ作るのにハマっているようだ。
消費に飽きて自分で作り出すようになったか……。
これは有望である。
シャイアのためにも印刷機を作って大同人時代を作り出したい。
なおルールブック(パクリ)とシャイア慣習のリプレイ集も異様な売れ行きである。
各種ダイスなどの小物も。
印刷なくて写本なのに。
人間の王国にまで輸出しまくり。
返してもらった奴隷やら、村を焼かれた人やら、人間世界の失業者の群れに仕事割り振ってるのに生産が全く追いつかない。
ホントやべえな。元の世界の娯楽……。
「シャイア、起きてます?」
「眠い」
「はいはい。
宿に連れていきますんで、その間話を聞いてくださいね」
そのままシャイアをおんぶする。
「それでなんじゃ?」
「人間との戦争が始まります」
「ふむ、我らドラゴンも共に戦うぞ」
「あら協力的。いいんですか?」
「せっかくプレイヤーが育ってきたのだ!
許さぬぞ! 戦争など絶対許さぬぞ!」
ドラゴンには死活問題のようである。
「ええ、だから有耶無耶にしようっかなと」
「また面白いことか!」
シャイアの声が弾む。
「まあ成功すれば最高に面白いかと」
どんな良質なギャグでもたまに外すからなあ。
これは運も絡んでくる。
「手伝う!」
「それじゃ手紙を運んでくれます?
人間の王への招待状」
「おう! 任された!」
シャイアは鼻息を荒くした。
さーって、次はレミリアっと。
シャイアを宿に届けると俺は食堂に向かう。
外務大臣のレミリアは「私、普通の女の子になります!」を実践中である。
これは冗談ではなく……戦闘マシーンとして育てられたせいか常識がないのだ。
さいたまに人間が食堂を開いたので、そこの女将さんに常識を教えてもらっている。
「おつかれーっす!
レミリア、ちょっといいかな」
「ジャギー様!」
なんだかニコニコしている。
殺人マシーンとして育てられた10代の女の子が自分を取り戻す。
なんだかハードボイルド。
あれ……俺格好よくね?
シティなハンターとか世紀末救世主っぽくね?
全裸の多さで気づかなかったぜ!
……嘘つきました。汚い中年です。
「悪いんだけどさ。
レミリアって光の教会の信徒って動員できる?」
「は、はい。
位階は司教なのである程度は可能です」
「じゃあ、お願い」
「あ、あのジャギー様。
なにをなされるのですか?」
「戦争を止める……というか有耶無耶にする。
完全勝利しつつ恨みも買わない。
かつ責任者は処断する。
くくくくく……連中の度肝を抜いてやる!」
「そんなことが可能なのですか!」
「うまく行けばね。
空振りでも試す価値はある」
そう、俺の作戦はすべてを有耶無耶にするのだ。
イメージ的には刃○で超人オリ○ピックでマッド○ックスで……コ○ンドーだ。
ジャングルで遭遇したらヤバイのはプ○デターではなくシュ○ちゃんだと奴らに思い知らせるのだ。
時間はまだあるから少し痩せとこうっと。
人間どもよ!
就職氷河期を生存したおっさんの薄汚さ、汚い生き様、寂しい背中を味わうがいい!
ぐあーはっはっは!
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