第34話 全裸マン行っきまーす!
ドラゴンのシャイアは、コブ○に出てきそうな美女の姿で首を傾げている。
ケツがエロい。
ケツがエロい。
ケツがエロい。
コ●ラ世界大好き。
洋ゲーのこういうとこ大好き。
あとサイ○ガンほしい。
じゃなくて、どうやら断られることを予想していなかったらしい。
だからもう一度言う。
「お断りだ。
罪のない人間と戦う気はない。
俺が戦うのは命を奪おうとするやつ。
財産を奪おうとするやつ。
土地を奪おうとするやつ。
それだけだ」
なお不備が見つかり次第、項目は順次拡張される。
一貫性の不在?
その場限りの思いつき?
おっさんは瞬間の連続で生きているのです。
……幸せな老後が見えない。
俺の言葉にコ○ラに出てきそうな姉ちゃん型ドラゴンのシャイアは態度を変えた。ケツがエロい。
たいへん徳の高いものを見せていただきました。
「失礼した。
問答無用でヴァレンティーノを殺害した狂戦士と聞いていたが……どうやら違うらしい」
「いいえ。違いませんよ。
王国が言葉の通じない相手なら滅ぼすだけです」
王国の場合はヴァレンティーノより簡単。
内戦起こして最初の街の領主やってたアレックスさんを国王にしちゃえばいいだけよ。
内部から崩すのって難しそうに思えるじゃん。
内戦起こす原因なんて簡単なんだなこれが。
手段は俺による侵略。
外圧は常に正義。
国を守る義務のある騎士が蹴散らされたら、あっという間に末期の江戸幕府状態。
あとは話し合いができる人たちを集めて革命政府樹立。
俺は征服も支配もしないからそこで終了。
言うのは簡単で、やるのは難しい。
でもおじさんにはその力がある。
それにゴールの目標は限りなく低い。
話し合いしたいだけ。
ポンコツ種族の国と言えども滅ぼした実績もある。
できないことはない。
「大した自信だ……」
シャイアは感心した様子だ。
だが甘い。
汚いおっさんに自信と自尊心と頭頂部の毛が残っていると思うなよ。
わかるか!
リアル社会の奴隷の姿を!
ATMとしての価値しか認められない生き物を!
プラモの自由すら許されない悲しい生活を!
俺はたまたま嫁に頭の皮を頭蓋骨ごと剥がされたから、毛根が復活しただけなんだぞ!
髪の毛がこびりついたブラシを見たときは……。げふッ!
ほら今だって思い出すたびに心にダメージが!
間違えて部長がプライベートカレンダーを共有しちゃったとき、そっと入っていたカツラ屋の予約。
女子は指を指して笑い、男は優しい顔でそれを見なかったことにする。
それが愛の戦士社畜。
俺がハードボイルド顔をしていると空気を読まないシャイアが笑う。
「ふ、ふははははは!
だが憶えておくのだ不死の魔王よ!
人間は我らの敵だと!」
まー奴隷制がある世界だしね。
敵対勢力になるよね。そりゃ。
「うーん、だったらこれから一緒に交渉に行きます?」
「は?」
「だから王国に和平交渉に行きましょう。今すぐ。
あ、私は空を飛べませんので運んでくださいね」
「は?」
「だからぁ、空飛んで王国の宮殿に乗り込みましょう。
あとは交渉っと」
「こ、殺すのか!
人間の王を殺したら統率者がいなくなってあちこちで暴れ始めると記録にあるのだぞ!」
なんでこいつら、こう戦闘部族なのかねえ。
いや待てよ。
人間って魔族から見たらエロゲーのオークそのものなのか……。
さらうじゃん。奴隷として売るじゃん。
街を焼くじゃん。くっころするじゃん。
人間の王はオークキング相当。
なにこのくっころ大魔王。
うっわ、人間も嫌われるわけだ。
害虫レベル。
くっころのおじさーん!
なんとなくこの世界に平和が訪れない理由がわかったような気がする。
もしかしてヴァレンティーノって穏健派なのかも。
とりあえずシャイアを安心させよう。
「ただ交渉するだけですよ」
「たしかに……今まで試したことのない手だ。
やってみる価値はある……ような気がする。
わかった乗れ」
シャイアはドラゴンの姿に変わった。大変徳の高いケツを眺められないのが残念である。
俺はレミリアに言付けする。
「というわけで出かけます。
カサンドラと嫁たちには軍を編成しないようによーく言い聞かせてください。
あと女性と出かけますので、ティアのナイフと砥石はすべて隠してください!
これ一番重要ね!
不死身でも刺されたら痛いんですからね!」
「は、はい! ですが……」
俺は有無も言わさずシャイアに乗って逃亡する。
さあ嫁たちも娘もいない。
俺は自由だ!自由なのだー!
「お主……ずいぶんモテるようだの」
「まさか。汚いおっさんですよ」
ヘルメットが昭和アニメ風ですしねー。
嫁たちに引き裂かれすぎて痩せたからちょっと腹筋割れてきたけど、元が汚いおっさんだもんね。
自重しよう。うん。
「面白いやつだ。さあ、飛ばすぞ!」
ぎゅんッ!
といきなり加速。
若い頃にヤンキー同級生の運転する車に乗ってしまったとき以来の加速である。
肉が! 肉が! ベロベロベロって鳴る! 顔面も空気でベロロベロベロって!
落ちたら痛いので必死にしがみつく。
指の力を信じて。ベロベロベロベロ!
耳がキーンって! キーンって音がしてるー!
おじさん挫けそう。
ヴァレンティーノより無理。むーりー! むーりー!
しばらくすると、いや時間はわからない。
ただ必死にしがみついていた。
そのせいで完全に時間の感覚は失われた。
おっさん、全裸。
服裂けた。風圧で。
兜無事。あとマントも。
オレ、生きてる。
生きてるってすばらしい。
はい、ということでやってきました王都上空!
高い壁に囲まれてて、なんというか巨人が襲ってきそうな街だ。
よく見ると松明を持った人たちが走り回っている。
俺たちを指さしてるな。
戦闘機と違うからバレないかなあと思ったけど、甘かった。
がっつり目撃されている。
なんか下が大騒ぎになってるけど、もう知らね。
俺はただつぶやく。
「はーっはっはっはっは! まるで人が(自主規制)」
一度言ってみたかっただけ。うふふ。
「なんだそれは?」
「気にしないでください。
さあ突撃しますよ!」
全裸マンレッド行っきまーす!
俺は飛び降りた。
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