コスメティック・ダウン
桜琴(さこと)
第1話
最近怖いもの、手の甲のシワ。
次に怖いもの、鏡の中の口元のほうれい線。
3番目に怖いもの、ピンクの可愛い服が好きだったのに、似合わなくなった現実…。
なぜなら私は「アラサー」。
30代女性だからだ。
20代の頃は考えたこともなかった。
自分の姿がこんなに恐ろしい存在になるなんて…。
変わらなきゃ…。
スッピンも怖い。
そして今日も20代の倍、
時間をかけてメイクして、
出勤する…。
「お早うございます…。」
「光(ひかる)先輩、お早うございます!
今日もけばくないっすか?!」
「石田!失礼ね!もう若くないんだから、メイク濃くしないと見せられない顔なんだよ…。」
「…そんなことないっすよ。」
「えっ?!」
「光先輩は、化粧なんて濃くしなくても可愛いです。」
「…何言ってんのよ!」
「高校の頃の顔を俺は知ってるんで。」
「お互いバスケやってた頃とは顔が違うんだよ!」
「…でも、光先輩は綺麗です。」
「…なーに言ってんのよ!石田!
そんなに褒めても奢らないよ?!」
「違います。俺は、そのままで十分綺麗な光先輩にに昔みたいに自信を取り戻してほしいんです。
バスケやってた頃は、先輩は化粧なんてしなくても、汗だくで頑張ってました。
そりゃ、女性なんで、少しはしなきゃなんでしょうけど…。
つまり、化粧することで、先輩の魅力まで無くしてほしくないんです!」
照れる。
というか、嬉しい。
耳の裏がむず痒い。
そう伝えたいのに、やっと絞り出したのが
一言だった。
「…ありがとう。」
「…今日、仕事終わったら、ご飯でも行きませんか?」
「…わかった。」
「お待たせ!待った?」
「待った。今日は休みだからって気合い入れてきた?でも、やっぱりあんまり化粧しない方が可愛いよ。」
「やっぱり、彼氏が褒めてくれるおかげかな。」
「ま、そうだね。」
「どこ行こうか。」
そう話ながら、腕組んで、人が賑わう歩道を二人で歩く。
もう、長時間メイクは必要ない。
好きなようにメイクして、好きな服着てやる。
だって、好きな人がいればいつでも、
アラサーでも輝けるから。
コスメティック・ダウン 桜琴(さこと) @whitedevil0122
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます