第5話

 地面は割れ、足元がぐらつく。

 森の木々は朽ち果て、光となり空へ吸い込まれていく。


 なんだこれは、森が消えていく!?


 京一は振り返り角聖に問い詰める。

「どういうことだ、森が消えていくぞ!」

 辺りを見回すが動物達も身体は朽ち果て光となり空へ消えていく。


「京一、お前は神を信じるか?」

「お前が俺に与えた力を見れば分かる。確かに俺は神の存在を感じたぞ!」

「そうだ、それが神の力だ。そして、それはお前の力だ。」

「何を言ってるんだ?」

「人間は信仰を忘れ神を殺した。神がいなければこの森は消えるべきだった。だが、人間はこの森を生かした。人間は新たな神となったのだ。神の力、それは即ち人間の力。京一、お前の憎しみは神から与えられたものではない。自ら出る力だ。」

「神は死んでいないのか?」

「森には神が必要だ。お前たち人間はこの森を生かし神となったが人間には我ら遣いは不要だ。」


 角聖は憂いを帯びた声で話し続ける。


「遣いでなくなった我らはただの畜生だ。かつての力を失い、我らには絶望しかなかった。」


「我らが救われるためには神を殺し、森を消すしかなかったのだ。」


 町の炎は消え、人々は光となり空へ吸い込まれていく。


「京一、あれが見えるか?」

「なんだ、あれは?」

「あれは魂だ。自らが神であることを忘れ、救いを求めた魂が空へ還ったのだ。」

「俺が消した人達も神の元へ還ったのか?」

「彼らは神に祈ってなどいない。ただお前に魂を焼かれ消えた哀れな人間だ。」

「この森はどうなる?」

「今や人間彼らは神ではない。神のいない森は消えるだけだ。」


 森の生命の魂は続々と空へ還っていく。


「そして、我らは空へ還りこの身を脱するのだ。」

「待て!俺はどうすればいい!」

「京一、お前は何だ?」


 俺は、一体何だ?

 俺は人間だ。でもあの憎しみの炎は神の力だ。しかし、あれは……


「さらばだ京一。」


 角聖は光となり空へ昇る。すると一切の緑が消え失せ空へ還っていく。


 京一は荒野に1人佇んでいた。

 かつての町は消え、空に還らなかった光が京一の胸に灯る。


 そこにもう森はなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

激昂 カフェオレ @cafe443

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ