第6部 番外編
誘惑♡
(*注意:露骨な性描写はありませんが、♡な展開あり)
『合格祝賀会へのお誘い』
今日届いた真っ白な封筒の表には、丁寧な字でそう書いてあった。くるりと裏返すと、そこには見慣れた三人の恋人たちの名前が連名で書いてある。
封筒の中には、一枚のメッセージカードが入っていた。
『ホームパーティー形式で合格祝賀会を開きます。結星くんの好きなものを沢山用意するつもり。だから、絶対にきてね! ユウ・ココ・シズ』
場所は、ココの住まいがあるタワーマンションだ。
今回は俺たち4人だけでお祝いをするらしい。
人数が少ないので、顔合わせで使用した広いパーティールームではなく、短期滞在用のゲストルームを借りたとある。
食べ物は要らないそうなので、三人に色違いの花束を用意することにした。
店頭に洒落たアレンジメントが飾られている花屋で注文して、カラー不織布やリボンで華やかにラッピングしてもらった。
さて、行きますか。
「全員の第一志望への合格を祝して、乾杯!!」
俺が音頭をとって、炭酸飲料で乾杯だ。
4人がけのテーブルと、持ち込みの折り畳み式キャンプ用テーブルの上に、飲み物と食べ物が沢山並んでいる。
どれも美味しい。
あらかた食事が終わったら、ソファに移動して、ポテチ系のお菓子を食べながらのトークに突入。二人掛けのソファに三人が詰め詰めで座る。真ん中が俺、右にシズ、左にユウ。あぶれてしまったココは、俺の足元、絨毯の上に直接座っている。
「新入生ガイダンスっていつ?」
「入学式の少し前」
「やっぱりそうだよね。結構ギリギリにあるんだなって思った」
「爽馨大は、かなり一学年の人数が多いと思うけど全学部同じ日にあるの?」
「ううん。二日に分かれている。でも、法学部と教育学部は同じ日なの」
「じゃあ、一緒に行けるね」
近々ある新入生ガイダンスには、ユウと待ち合わせて行くことにしている。
ひとつの街かっていうくらいに広いキャンパス内に、学部ごとに校舎が独立して建っている。だから、キャンパス内では離れ離れだ。
「そうなんだけど、法学部は正門を入って直ぐで、教育学部は一番奥にあるのよね。普段でも徒歩15分くらいかかるって。当日は凄い人だろうから、歩いて移動するのが大変かも」
「ユー子一人じゃ護衛は厳しそう?」
「うん。ちょっと自信ないな」
「護衛って? なんの護衛?」
女の子同士の会話をふんふん聞いていたけど、気になるワードが出てきたので、聞いてみることにした。
「もちろん、結星くんの。ガイダンスの日はサークル勧誘も沢山出ていて、キャンパス内が芋洗い状態らしいから、できれば両サイドを固めておきたいよね」
「じゃあ、やっぱり……もう一人いるかな?」
もう一人? 同じ大学の田原さんや秋月さんに頼むってこと? でもそれって迷惑だよね。それに、彼女たちと付き合っている結城や上杉が、どう思うか分からない。
「関係ない人を巻き込むのは、賛成できないよ」
「あっ、もちろん、サキやランには頼まないよ。そもそも、二人の学部は別日程だから」
そっか。それなら……って、他に誰かいたっけ?
「大丈夫。身元が確かで、喜んで引き受けてくれそうな人に、アテがあるから」
アテ? 口では大丈夫だと言っているが、ユウの表情を見ると、あまり乗り気ではなさそうだ。たかがガイダンスで、無理な負担をかけるのは気が進まない。
「そうなんだ? でも、俺はユウがいればいいよ」
「ゲホッ、ゲホゲホゲホ!!」
「ユウ、大丈夫?」
「ケホッ、だ、大丈夫。むせちゃっただけ……だから。ありがとう、結星くん」
ちょっと涙目のユウの背中をさすって、よしよし介抱していたら、俺の膝に懐いていたココがなぜか立ち上がった。白い緩めのニットに、ハイウエストで少しタイトなミニのレザースカート。
そんな可愛い系セクシー姿のココが、正面から俺の膝の上に乗ってくる。
「ねぇ、今のセリフ。『俺はユウがいればいいよ』っていうの。名前を変えて言って欲しいな」
抱き込まれるように首に腕を回され、前髪に吐息が触れるような距離で囁かれた。そうなると、ボリューム的に必然的に不可避的に、ニットに越しに、顔がぷにゅっと柔らかいものに埋まるわけで。
「ズルい! 私も!」
右隣のシズが右腕を抱き込んで密着してくる。
「わた、私の場所は!? えっと、ここにする!」
今度はユウがタックルする様に腰にピッタリ絡みついてきた。
なにこの体勢……息がヤバい。他もいろいろヤバい。
呼吸する度に、女の子特有の甘い匂いを吸い込んでしまう。正面はもちろん、右にも左にも柔らかいものが絡みついていて。
天国。天国なんだけどさ。
クラクラして、一気に本能的な部分が限界突破した。それはもう、誤魔化すのが無理なレベルで。
この状況で変身を解くのは、到底無理というもので。密着し過ぎて、少なくともココには、俺の愚息の状態がモロバレなはず。
撤退不可避。
なのに、突入のタイミングをいまだ見極め切れない。
一対一なら、言わずもがな押せ押せだ。でも相手は三人もいて、身動きができない。ギュッと縋り付いてくる身体を振り切るわけにもいかないし、順番とか、セリフとか、持って行き方が大事だと思うのに、なすすべが思いつかない。
《主人公補正【絶倫プリンス】をインストールしますか?》
おいっ、今はそれどころじゃな……いや、今か。もしかして今なのか?
「結星くん、私たちのパーソナルカラーって知ってる?」
えっ、なにそれ。この切羽詰まった状況で必要な話題?
「結星くんが私たちにくれたペンダント。それぞれ、色違いで宝石が入ってるでしょ。その色が、ぴったりだったの」
ぴったり? 優劣を付けたくなくて、あえて同じデザインにして色石だけ変えた。
互いのイニシャル入りの星のモチーフ。星のデザインを選んだのは、三人に対する独占欲の表れだ。今もそのペンダントを付けてくれているみたいで、首にチェーンが見えている。
「だから、私たち三人で相談して、それぞれの色に合わせて作ることにしたの」
何を?
「ふふっ、こ・れ!」
ぷわぷわオッパイが、やっと顔から離れた。と思ったら、俺に跨ったままのココが、ゆっくりと、見せつけるように、ニットの肩の部分を大胆に引き下げていく。
「ねぇ、似合ってるかな?」
ココの健康的な肌の色に映える、柘榴のように赤いストラップが、目に飛び込んできた。豊かな曲線を覆う艶めいた布地や繊細なレースも、情熱的な赤一色だった。胸に揺れるペンダントと同じ色の。
「似合うよ。よく似合ってる」
ニットの白とランジェリー赤。はち切れそうな肌の色に浮かぶ強烈な対比が、目に、理性に訴えかけてくる。
ペンダントの宝石の色は、ユウが翡翠のような緑。ココが柘榴のような赤。そしてシズが、夕暮れの夜空のような青だ。
なぜその色にしたのかというと、似合うと思ったから。
ユウの象牙色の肌や真っ直ぐで絹のような黒髪に。
ココの琥珀色がかった肌や艶やかなキャラメルブラウンの髪に。
シズのミルキーな肌の色と優しい亜麻色の髪色に。
彼女たちの肌や髪の色に、ぴったりな色だと直感で選んだ。
「嬉しい。でもこれ、実は3点セットなの。結星くんに見て欲しくて、揃えたのよ。全部確認して欲しいけど、ここは少し寒いでしょ。だから、あっ・ち・の部屋に行かない?」
「結星くん、ベビードールが可愛いの」
「結星くん、お泊まりしてもいいよね?」
こんなの、逆らえるわけがない。
理性とか、余裕とか、そういった表面を取り繕っていたものに、一斉にヒビが入り、弾け飛んだ。
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