◇SNS 告白の余波

 キョーコ:今朝の見た人いる?


 ミカ:今朝のって例の噂のアレ?


 キョーコ:そう。聖カトリーヌの美少女の件


 ラン:王子に直接話を聞かなかったの?


 シズ:結星くんは、今日は午前授業ですれ違いだったから聞きそびれた


 キョーコ:もう帰っちゃったんだよね。それになんて聞いていいかも分からない。こういう時ってどうするのが正解?


 ラン:そう言われて見ると難しいかも。女の子からの手紙読んだ? なんて聞けないしね


 シズ:無理。結星くんの反応が怖くて絶対に無理


 チカ:相手は知らない女の子なの?


 ミカ:さあ? その辺りは噂じゃ分からなかった。どうも聖カトリーヌの生徒らしいよ


 ラン:王子は有名人だものね。今まで他所からのアプローチがなかったのは、男性保護法のおかげなんだろうけど、とうとうブレイクする勇者が現れたってことか


 ミカ:その場で告白も受けてるんでしょ? 内容は間違いなくラブレターってことだよね?


 ひな:面識のない女性がライバルなのって、かなりプレッシャーになるよ。私も三好さんと直接会うまでは戦々恐々だった


 チカ:三好さんはエルダー的には当たりな部類の気がする。ひなにも配慮してくれてるんでしょ?


 ひな:うん。独占欲はしっかりあるみたいだけど分別もある大人の女性って感じかな


 ユー子:気になる気になる気になる。このままだと勉強が手につかない


 ラン:同年代の幼馴染三人がライバルの私からすれば理解のあるエルダーは羨ましい


 チカ:だよね。エルダーの方がよかった


 ミカ:それは同年代だと折り合いがつけにくいってこと?


 ラン:うん。譲歩し合うことが出来なくて、どうしても取り合いになっちゃう


 キョーコ:折り合いかぁ。そうなると、告白の相手がどんな人かって大事だね


 ユー子:美少女なの? それもカトリーヌ? そんな人に比べたら私なんて雑草かもーーーっ!


 ひな:ユー子落ち着いて! まだ告白を受け入れると決まったわけじゃないよ。それにもっと自分に自信を持ちなさいって! ユー子は残念だけど可愛いから大丈夫!


 ユー子:ひなぁぁぁぁ。大好き♡


 サキ:お待たせ! 早苗が現場にいたっていうから事情聴取してきた


 ミカ:早苗ちゃん現場にいたんだ。その情報なら確かそう。で、どんな?


 サキ:駅前で結衣ちゃんたちと合流したら、カトリーヌの制服を着た綺麗なお姉さんがいきなり走り寄ってきたらしい


 キョーコ:カトリーヌと美少女はこれで確定か


 サキ:そのお姉さんは、あなたが好きです的な告白をして王子に手紙を直に手渡したら、また走って改札へ。振り返りざまに王子と視線を交わすシーンは、まるで恋愛ドラマみたいでドキドキしちゃった……だってさ


 シズ:恋愛……ドラマ? 


 ユー子:あの日あの時あの場所的な? 二人が感じるシンパシー、can‘t stop falling loveぅぅぅ……それはダメーーーっ!


 ひな:だから妄想禁止だって! まだ手紙を渡しただけだよ


 キョーコ:でも話を聞いたら余計に心配になっちゃった。強力なライバルの登場かなぁ。結星くんの反応待ちではあるけど


 ミカ:自分が上手くいっているからって安心できないのが辛いね。次は待ち受ける立場になるんだもの。この世の恋愛は厳しいわ


 ひな:私もいずれそんな日が来るのか。なんか悩ましいね


 ◇


《恋の見守り隊 グループチャット》


 報告! お☆様の進学先が掴めました!


 それは大金星!


 よく分かったねえ。偉い! で、どこだったの?


 まず間違いなく爽馨大学です!


 学部は?


 残念ながらそこまでは


 状況証拠とも一致するし、友紀隊長の予想が大当たりですね


 状況証拠ってなんですか?


 ①お☆様の彼女のひとりの第一志望

 ②オープンキャンパスに参加し長時間滞在


 なるほど。それで今回の情報の元はどちら?


 お☆様の妹様のクラスからです。クラス単位でお☆様と一緒にオープンキャンパスに参加しています。漏れ出た情報を合わせて絞り込むと、ほぼ確定でよいかと思います


 じゃあ麻耶先輩は、このまま今の予備校で、お☆様の嫁一号と仲良くなっていけばOKですか?


 嫁一号? 彼女たちに呼び名をつけたのね


 そう。便宜的にですがこんな感じです

 爽馨大学法学部志望の嫁一号

 八ッ橋大学経営学部志望の嫁二号

 国立先進医科学研究所附属雷霆医科大学志望の嫁三号


 じゃあ、麻耶先輩は嫁四号になるの? それとも五号? お☆様のハイスペックぶりからすると、他にライバルがいても不思議ではないですよね


 あのクラスのイケメンなら、早々に嫁枠オールコンプでもおかしくはない


 日本最難関の三号様の志望校は別格としても、他も聖カトリーヌ学院大学に引けを取らない大学名が並んでいますね


 栄華秀英は有名な進学校だから進学先も難関校が多いらしいです


 そんなビシバシ鍛え上げたお嫁様たち相手に、麻耶先輩が上手く立ち回れるのか心配です


 そこは私たちが見守って差し上げるのよ!


 そうね! 私たちは恋の見守り隊ですもの。二人の恋を応援しましょう!



 ◇



「お嬢様。織田勘十郎の件で織田家の当主から返事が来ております」


 執事が差し出した一通の手紙。皇極斉子は、やっときたかといった様子でそれに目を通した。。


「やはりあんな騒ぎを起こした以上、息子をどう処遇するか扱いかねているようね。ことを大きくしないでくれと嘆願してきたわ」


「左様でございますか」


「それと、津々木くららが近々日本からいなくなることを学院側から聞いて、彼女の身柄をどうするのか知りたいらしいわ」


「その意図は、可能であれば織田家が保護をしたいということでしょうか?」


「さあ? まだそこまでは考えていないんじゃない? ……そうね。どうしようかしら? 織田家の不始末は織田家に責任を取ってもらうのが筋ではあるけど、引き渡した後に野放しにされるようでは困るのよ」


「左様で」


「まあいいわ。あの件はもう処理済だもの。あとは本人が行くだけ。織田家が今更何を言ってきても、もう遅いわ。これでやっと学院が静かになる」




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