◇SNS ムンクな叫び?

サキ:あーあ。行きたかったな焼き芋大会


ラン:結城くん家のボランティアか。毎年やってるみたいなのに、募集したのは今回が初めてだよね?


ミカ:うん。王子がいいボランティア先がないかって聞いて、そのおかげで引き出せた情報みたい


ラン:つまり、誰も聞かなかったら、今年も募集はなかったってこと?


ミカ:たぶんね。自分からは言い出さないのが結城くんだから


チカ:で、どうだったの? その焼き芋大会の様子は


サキ:それがさぁ。早苗は、よりによって結城くんと同じ班になって、ずっと一緒にお掃除してたっていうんだから悔しすぎる


ミカ:早苗ちゃんのせいじゃないけど、その状況は羨ましいね。結城くんは年下のが話しやすいとかあるのかな? そこがちょっと気になる


サキ:いや。その辺りはいつも通りらしいよ。必要なことしか喋らなかったって。でも近くで見ているだけでも楽しいからいいやって、誘ったクラスメイトからは苦情が出なかったらしい


チカ:早苗ちゃんのクラスメイトって、王子狙いってわけじゃないの? 王子のオープンスクールにも一緒に行ってたよね


サキ:狙っている子は当然多いらしいよ。でも今回は、王子は同じ班の双子のお姉さんたちと仲良さそうにしてたらしくて早苗はガッカリしてた


ひな:双子の姉妹が王子へアプローチ?


サキ:まだそこは分からない。一緒にお掃除しただけだから


ラン:結城くんのお姉さんたちって美人ばっかりだって聞いたことがある


サキ:それは本当みたい。一番上のお姉さんが清楚な大和撫子系で、次のお姉さんはちょっとボーイッシュな結城くん似の美人。そして双子の姉妹はティーンズ雑誌のモデルみたいな華がある可愛い系だと実際に見てきた早苗が言ってた


ひな:王子組が聞いたら心配になっちゃいそうな話だけど、今はそれどころじゃないか


ミカ:それどころじゃないって、あれか。カトリーヌで何かあったという噂の


ひな:うん。カトリーヌ生の従姉妹に聞いてみたら、、王子がカトリーヌに現れたのは本当らしいよ。他から聞くよりはいいかと思って、一応三人には知らせてある


チカ:そのせいでここのところ静かなのか


ミカ:まあこればっかりは仕方ないというか。想い人にアプローチしてくる女性を全員排除するわけにもいかないしね


チカ:本音を言えばライバルは増えて欲しくない。だけど、私自身があとから増えた組だから、先行者特権を主張されるのも困るし複雑な気持ち


ラン:あとから組は焼きもちの焼き方にも気を使うよね


チカ:うん。『自分以外のパートナーとの上手な付き合い方』なんて本を思わず買っちゃったくらいには悩ましいよ


ひな:私も読んだそれ。何気にベストセラーだよね


チカ:読んだら、物事は前向きに考えましょうって、かなりポジティブな内容だった。ちょっと気持ちが軽くなるような。その辺りが人気の理由かも


キョーコ:昔だったら既に別の女性がいるからと諦めていた、あるいは不貞行為として社会的にアウトだったのに、今は素敵な男性は共有できる世の中になりました! みたいなノリのやつでしょ? 結構みんな読んでるのね


ひな:キョーちゃん、いらっしゃい! 元気出た?


キョーコ:最初の衝撃はもう過ぎた。今はもう穏便な方法でアドバンテージを取るにはどうすればいいか思案中


ラン:穏便にってところがキョーコらしい


キョーコ:だって女同士で男性を取り合うのに夢中になってたら、肝心の男性に逃げられちゃいそうだもの。それじゃあ本末転倒でしょ? ライバルは目の前にいる子だけじゃない


ラン:まあ、王子クラスなら全方向選り取り見取りだろうね


キョーコ:せっかくこの学園で幸運を拾えたんだから、そのご縁を大切にしなきゃ。私だけでなく、ユー子やシズも引っくるめて幸せになりたい


ユー子:キョーちゃん、好き!


シズ:私も好き!


ミカ:おっと。王子組が一気に来た。うんうん、みんな復活してきてよかった


キョーコ:私も二人が好きだよ! ずっと一緒にいようね


ラン:百合かって! 仲良しなのはいいことだ


ひな:まあ実際のところ、カトリーヌの件は強敵登場かもしれない。でも王子もハッキリとした交際宣言を出したわけじゃないらしいから、まずは受験を無事に終わらせるのが先決だね


ミカ:交際宣言ではないんだ?


ユー子:でも「待ってる」みたいなセリフを言ったって聞いてるよ


ひな:そこは言葉の解釈による? 手紙で告白されたけど、君のことは全然知らないから即OKは出せないよって意味にも取れる


シズ:じゃあよく知り合っちゃったら?


ひな:それを決めるのは王子だけど、わざわざ返事をしに行くくらいだから可能性は否定できないかなぁ?


ユー子:すっごく綺麗な子だっていうし不安


ひな:あれ? ユー子まだ気付いてないの? たぶん同一人物だよ。あっ! そうか。ごめん、相手の名前を教えてなかったか


ユー子:聞いてない。なんて人?


ひな:王子に手紙で告白したのは、聖カトリーヌ学院3年、元生徒会副会長を務めた山県麻耶さんだって


ユー子:えっ、ええっ! マジですか? うっきゃーっ! 


ひな:マジもんのマジ。この中じゃあユー子が一番よく知っている人だよね


シズ:それってもしかして、以前話題に出ていた途中入塾の美人な聖カトリーヌ生?


キョーコ:美人なのに性格もよくて、女性にも人気って人か。それはかなり強敵になりそう


ユー子:途中入塾の理由は外部受験のため。入塾時期が遅いのが不思議だったけど、そんなエリートが外部受験をするのは……結星くんのためだったんだ


ひな:うわぁ、なんか納得。高校から入学した元生徒会長とは違って、その元副会長は生え抜きの聖カトリーヌ生らしいから、かなり思い切ったよね


ラン:王子のためなら豊胸手術を受けるのも辞さないユー子なら、案外意気投合するんじゃない?


キョーコ:だったら、下手に対立するよりも仲良くなった方が良さげかな。話せるタイプなんでしょ?


ユー子:うん。全然お高くないしフレンドリー。でも、でもでもハイスペック過ぎる。あんな子が来たら私なんて霞んじゃうかも


ひな:こらこら。ユー子は可愛いから大丈夫だって言ったでしょ! それに王子ならみんなを大事にしてくれるよ


キョーコ:そうそう。三人から四人に増えるだけ。受験が終わるまでは、その子とはユー子しか接点がないけど、春になったら紹介してよ。早めにこっち側に引き込んじゃおう


シズ:引き込むの? まだ交際確定じゃなくても?


キョーコ:王子がすっかり今回の件を忘れているようなら話は別だけど、そうはならないんじゃないかなって気がする。だから先手を打っておこうかなって


ひな:女の勘は当たるって言うけど、どうかな?


キョーコ:ま、そこの距離感は上手くやるから、ユー子はあまり意識しないでとにかく受験を頑張れ!


ユー子:でもモチベーションが保てないかも! どうしよう?


キョーコ:それなら、モチベが上がりそうなことを結星くんにおねだりしてみよっか


シズ:どんな?


キョーコ:詳しくはは個チャで


シズ:了解!


ユー子:了解です!


ひな:なんとか元気出たみたいね、よかった。でもおねだりか。いいな。私もしてみようかな?

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