3-13 コラボ企画
潤さんから仕事の電話があった。
「結星くん、
「知ってます……っていうか今現在やっています。モニター登録からそのまま続けているので」
「あら、実際にプレイしてるんだ。じゃあ、ちょうどいいかも。ねえ、結星くん。バトフラ関連のお仕事、やってみない?」
*
その仕事についての詳しい話を聞くために、今日は学校帰りに、藍山通りにある陽春プロモーションの事務所に来ている。
「バトフラがゲーム内広告を始めるの。それで、現在その広告主を募集中なのよ」
そういえば〈お知らせ〉でそんな告知が来てたかも。バトフラはアプリのダウンロードは無料だし、月額利用料金も安いから、程度にもよるけど広告が入るのはまあ妥当かな。
「VRゲーム内の広告ってどんなのですか?」
「やり方はいろいろあるけど、今回は『商品コラボ』という企画になるわ。広告したい商品を、ゲーム内のアイテムとしてデザインするの。それを期間限定イベントで配布したり、販売したりかな」
「炭酸飲料ボトルの回復ポーションとか?」
だったら楽しいかも。
「そう、イメージとしてはそんな感じ。それでね、そこにエグザの自社開発商品の広告を入れようという話が出ているの」
エグザの自社開発商品。それで俺が呼ばれるってことは……。
「つまり『六角プリン』を?」
「そういうこと」
「でもそれって、プリンがあればいいんですよね? 俺は関係ないんじゃ……」
「もちろんそれだけじゃないわ。ゲーム内ではプリンをデザインしたアイテムを販売する。その一方で、コンビニでは、指定商品の購入個数や購入金額に応じて、バトフラ関連景品をプレゼント。そういう企画なの。いわゆる連動コラボってやつね」
「ああ。よくありますよね。お菓子をふたつ買ったらアニメキャラのファイルプレゼントとか」
「それそれ。それでね、今回の景品は、定番のファイルの他に、目玉商品としてスマホのストラップをプレゼントしようってことになりそうなの」
ストラップか。
「買うと案外高いから、おまけでもらえるなら嬉しいですね」
「でしょ? 六角プリンは単価が高めだし、初回企画だから景品も豪華に行こうってなったみたい」
「プリンのストラップなんて、結衣が凄く欲しがりそうです」
「あらそうなの? じゃあ企画が通ったら、結衣ちゃん用に見本を送るわね。そしてここからが肝心の話なんだけど、ストラップのデザインとして、プリンのほかに結星くんのミニチュアフィギュアを作ってはどうかという案が出ているの」
「俺のフィギュアも?」
「そう。フィギュアは、バトフラの衣装を着て、三頭身にモディファイした可愛いい感じになるらしいわ。そしてそれに合わせて、同じ衣装を着た結星くんの店頭ポスターも撮るみたい」
なるほど。そこで俺に仕事の話が来るわけね。
「バトフラのコスプレかぁ」
「そう、コラボ感が出るでしょ? といっても、ゲームを実際にやってるなら身バレは困るわよね。だからポスターには、CM用の特製アバターを使ってもらうようにするから、そこは心配しないで」
「それだと助かります」
「ちなみに結星くんは、バトフラではどんなアバターなの?」
「職業が侍なので、槍を持って鎧兜を着てますね。髪の色はロン毛で黒。虹彩色は濃い茶。日焼けした感じの肌の色で年齢は10歳上の設定です」
「精悍な武士って感じかしら? その鎧兜はどんなデザインなの?」
「今着てるのは、ショップで買える銀色の鎧で、ところどころに緑色のオプション加工が入っています」
装備に機能オプションを付けられるのがバトフラのいいところで、俺の場合【風華】の威力アップのために、緑色系の装身具をつけたり、緑色の糸で鎧兜を飾っている。
「了解、了解。コラボ企画では、なるべく違うイメージの職業や衣装になるようにしてもらいましょうか。じゃないとバトフラ側もモニター契約の条件に引っかかるだろうし」
*
仕事の話は、そんな感じにサクッと終わった。でもせっかく藍山通りまできたから、寄り道して帰ることにした。この辺りには女の子に人気のスポットが沢山あるからだ。
「そろそろデートの下見をしないとなぁ」
平日は学校で毎日会ってる。
でもせっかく恋人として付き合うことになったのに、互いに忙しくてデートらしいデートはまだしていない。
「こんなに忙しいなんて予想外だよ」
肝心の週末には、年度初めのせいか模試だ検定だと受験生の彼女たちにはそれぞれ予定が入っていた。
そういう俺も、ここのところCM絡みで忙しくて、あまり余裕がなかったしね。スケジュール的には、残念なことにすれ違い気味。
さすがに学校じゃあ、人前であまりベタベタするわけにもいかない。俺だって人並みにキャッキャウフフしたいのに。
そして気がついたら、もう大型連休は目の前だ。
彼女たちに聞いたら、初デートは四人でグループデートがいいんだって。だから、それに合わせたコースを考える必要がある。もう情報サイトでチェックは始めている。
みんな受験生だから遠出は無理っぽい。だから近場デート。近場で女の子の喜びそうなもの。それを探さなきゃ。
「じゃあ、ちょっとこの辺りから行ってみよっか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます