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「翼、本宮さんに謝りなさい」


「あたしが謝るの?何もしてないのに?誕生日に説教は勘弁してよ」


 俺は頭を掻きながら、空に視線を向けた。


「ごめん。空、迷惑じゃなければ少し頼めるかな」


「真ちゃんも大変ね」


「真ちゃん?おばさん、パパを知ってるの?まさか、元カノ!?それとも今カノ!?ええー!?」


 何を勘違いしたのか、翼は疑いの眼差しで空を見つめた。


「ええ、パパのことをよく知ってるわよ。でも残念ながら、元カノにはなれなかったわ。あなたのパパは私を救ってくれた恩人なのよ。だからパパのことをバカにしたら、私が許さないから」


「は?恩人?なんだ、元カノじゃないんだ」


「本当に生意気な子ね。将来が楽しみだわ。もしかしたら、私達姉妹になるかもだし」


「姉妹?おばさんとあたしが?冗談やめてよ。意味わかんない」


 穴があったら入りたいとは、このことだな。

 ここが家なら、翼の口を封じてるところだ。


「清水さん、彼女達をお願い。洋服を選んだら、休憩室に案内して」


「はい」


 空は店の外に出て、俺を見送ってくれた。


「真ちゃん。礼は慶星大学附属病院だから。礼に逢ったら、ちゃんと捕まえてね。礼はきっと自分から気持ちを伝えたりはしない。真ちゃんのことを今でも愛しているくせに、素直じゃないんだから」


「……空。礼さんは俺のことなんか……」


「真ちゃん、そんな考えだから大切な人を見失うのよ。礼には時間がないの……。だからお願い」


「……時間がない?」


「いいから、早く行って。生意気な娘の子守りには、限界があるんだからね」


 空は俺の背中をバンッと叩いた。


「ありがとう。子供達を宜しく」


 空に背中を押され、俺はタクシーに乗り込んだ。

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