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「二人とも中学生なんだ。清水さんは?」


「私は今もシングルよ。でも麻布店の店長になったわ」


「店長ですか。出世しましたね」


「そうよ。すごいでしょう。この十五年、私も頑張ったんだよ。今日は娘さんの服を選びにきたの?私が特別価格にしてあげるから、任せて」


「さすが店長。頼むよ。MILKYの商品は生地やデザインは最高だけど、値段が高いからさ。この店で今日ワンピースを買ったら、明日から当分カップラーメンだよ」


「あはは、わかるわかる。MILKYの商品価格は安くて二万〜五万が相場だからね」


「はあ……」


 改めて現実を知り、深い溜息を吐く。


「しかし可愛い娘さんね。きっとママが美人なんだね」


「ママがって、どう言う意味だよ」


「あはは、でも西本君も変わらないね。こんな大きな子供がいるようには見えないよ。若いパパだ」


「そっか?」


 若いパパと言われて、思わずニヤケる。


「ねぇパパ、これがいい」


 翼は淡いブルーのワンピースを胸にあてて、俺に見せた。ワンピースのデザインよりも、すかさず値札を手に取って見る。


「四万五千円って、あり得ないだろう。二十パーセントOFFでもダメダメ。翼、違うのにしろよ」


「翼ちゃんって言うの?さすがだね。これは新商品なのよ。大人っぽいデザインだし、素敵でしょう。今月ファッション雑誌に掲載されたんだよ」

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