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 まるで興味のない愁と、ウキウキしている翼を連れて電車で移動する。


 ショップにはオープン記念セールと書かれた垂れ幕と、華やかな花が入り口に沢山飾られていた。


 ショップの名前は【MILKY 麻布店】


 MI、MILKY……!?


 俺の足は止まり、前に進むことができない。


「パパ、早く早く!」


 翼にせかされ店内に入る。ショップはガラス張りになっていて、明るい陽射しとスポットライトの光が、白いクロスをさらに輝かせていた。


「いらっしゃいま……」


 ショップ店員が俺を見て、目を見開く。


「あー!西本さん!?」


 その声の主は清水洋子、俺がバイトしていた時に一緒に働いていた女性社員だ。


「し、清水さん、まだいたの」


「やだな、まだってそれ未婚女性にはセクハラだよ。しかし久しぶりだね。十五年?いや、もっとかな?西本さん貫禄でたね。大人の男って感じ」


「……だよね。あれから十五年だからな。歳も取るさ」


「やだ、娘さんと息子さんなの?すごい!こんなに大きな子供がいるんだ!知らなかったな」


 清水のテンションに俺は若干引いている。

 この性格、十五年前と全然変わっていない。


 容姿は俺同様年齢を感じさせるが、以前よりも凛としていて貫禄もある。

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